ロードバイクのリアディレイラーの近くの「沼」に落ちたので、元気に泳ぐ

 

※注:この物語は、ヒノデダッズムによく出てくる父親としての自分(「僕」)と職業人としての自分(「フジヤマジロウ」)が、一人のお父さんの心の中で延々と雑談を続ける小説の体で書いています。あくまで個人的な考察なので間違っているかもしれませんがご容赦ください。

 


 

ヤマジロウ: そうか、そうだったのか...やっと理解できたような気がする。

 

僕: なにが理解できたのさ?

 

ヤマジロウ: 最近、ヒノデダッズムでロードバイク関連のエントリーを増やしたら、少しずつコアなリピーターが増えてきた。「ロードバイク ブログ」で検索したら、少しずつランキングの順位が上がってきて、今は3ページ目くらいだろうか。

 

僕: へぇ。ロードバイク乗りのブログって、すごく立派なサイトがたくさんあるでしょ? うちのマニアックなロードバイクの話なんて、読む必要があるんだろうか? どう考えても普通のサイクリストと比べて視点が痛いんだから。

 

ヤマジロウ: 分からない。ただ、ヒノデダッズムのサイクル関連のエントリーにアクセスしてくださる方々の多くは、お父さんたちなのだろうな。しかも、共働きで子育て中の。忙しくて厳しい毎日の中で、ふらっと立ち寄ることができるようなブログがあったということで、たまに気が向いた時にやってきてくださるのだろう。

 

僕: それだったら、子育てネタの方がいいんじゃないの? 奥さんがキレた時の対処法とか、育児が辛い時の気分転換の方法とか。

 

ヤマジロウ: そういった話は、自分の方が知りたいくらいだ。男には日常と切り離した空間の中にひたってリラックスしたい時があるだろ? おそらく、そういった場所としてヒノデダッズムにやってきている可能性がなくもない。だとすれば、ロードバイクネタを増やすというのは、父親の子育てを考える上で重要かもしれないぞ。それと、もう一つ、理解できたような気がしていることがある。

 

僕: へぇ、何か理解できたのかい?

 

ヤマジロウ: 「自分が、どのようなタイプのロードバイク乗りなのか?」ということだ。10年近くロードバイクに乗り続けて、ようやく分かってきた感がある。とにかく色々なことを試してきたからな。ポタリングをやったり、カメラを持って写真を撮りまくったり、レースで競い合ったり、自転車通勤を続けたり、行く先々でラーメンを食べまくったり。そして、ある程度のスタイルが出来上がったような気がするのさ。同じサークルのメンバーに打ち明けたら、「ああ、そうかもね」と苦笑いしておられたよ。

 

僕:どんなタイプのロードバイク乗りなんだい?

 

ヤマジロウ: 「防御系」だ。サークルの人たちも認めてくださっているので、たぶんリアルでそうなんだろう。

 

僕: あはは、「防御系ロードバイク乗り」だって? すごく笑える。そんなに防御が大切なら、最初からロードバイクに乗らなきゃいいじゃないか。あはは。

 

ヤマジロウ: しかも、「良い子は真似しないように」というレベルの防御系だ。ほら、昔だとドラクエとか、今だとオンラインのロールプレイングゲームとかでパーティを組んだりするだろ? すると、移動スピードが速いとか、強烈な攻撃力があるとか、魔法が使えるとか、様々なキャラクターがいる。

 

僕: うんうん。

 

ヤマジロウ: その中で、モッサリとしか動けないのに、やたらと防御力が高くて、メンバーのHPが減ってきたら補充するようなキャラクターがいたりするだろ? 厳しい敵が出現したらバリアーを張って守るとか。

 

僕: ああ、いるね、そういうキャラクター。でもさ、オンラインゲームだと、そういったキャラクターって人気がないよね。

 

ヤマジロウ: まあ、自分から好んで選択するユーザーは少ないだろうな。誰だって、俊敏で攻撃力のあるアタッカーやファイターになりたいだろうし。その傾向がロードバイクという趣味の世界でもありうるんじゃないだろうかなと。

 

僕: あはは、すごい考え方だよね。でもさ、軽くて剛性のあるフレームやホイールのロードバイクに乗って、速く走ろうとするロードバイク乗りって多いよね。サドルバッグとかもすごく小さくて、ほんと、必要最小限のものしか持って走らなくて...それに比べて、君の愛車のクロモリロードバイクって、クロスバイクなみに重いよね。

 

ヤマジロウ: いや、アルミ製のクロスバイクよりも重いかもしれない。そもそも、うちの愛車のクロモリロードバイクは、「陸上自衛隊が偵察用にロードバイクを配備したら、こういった感じになるんじゃないか?」という体でカスタムをやっているからな。まだ完成していないので公開していないが。

 

僕: 怪我をした時のための応急キットとかも取り付けているでしょ?

 

ヤマジロウ: 当然だな。大型の絆創膏や三角巾まで携行している。これが、使わないようで、結構使うんだよ。グループライドの時には仲間を手当てしたりするが、ソロで走っている時もたまに使う。ほら、サイクリングロードとかで落車した人は、膝とか肩をガリっとすりむいていたりするだろ? 普段は大きな絆創膏なんて持って走らないから、傷の上にジャージを着たり、そのまま走って帰ることになる。汗の塩が入ってそれはそれは痛い。なので、助けることにしている。

 

僕: 輪行袋とか、簡易工具とか、チェーンが切れた時のためのミッシングリンクとか、補給食、水に流せるティッシュペーパー...ああこれはライドの途中でお腹が痛くなった時のためだね...毛抜き...ああ、これはガラスがタイヤに刺さった時のためだね...あと、これはなんだい?

 

ヤマジロウ: ああ、携帯用のタイヤペンチ。パンクしてチューブを交換した後、タイヤがホイールにはまらなくて困っている人がいたりすると貸してあげたりする。チューブレスの場合には石鹸の方がいいかもしれないが。

 

僕: それとさ、脊椎を保護するためのバックパックを自分で作っちゃうロードバイク乗りって、珍しいかもね。

 

ヤマジロウ: それはまだ試作品で、今、ライドでテストと評価を繰り返している。オリジナルのアイデアではなくて、整形外科のドクターにロードバイク乗りがいてアドバイスをもらった。サイクルジャージのバックポケットにたくさんの物を入れて、そのまま背中から落車したら、脊椎とか腎臓に大きな損傷を受ける危険性があると。最近では脊椎を保護する機能があるバックパックが販売され始めて、彼も愛用しているそうだ。しかし、そういったバッグは高価なので、今度はポリマーとか緩衝材に詳しい人にEVAシートについてアドバイスをもらって、普通のバックパックに取り付けてみた。これはいいぞ。安心感がある。

 

僕: でもさ、重くて暑いでしょ。

 

ヤマジロウ: 防御系ローディにおいて、重量や快適性は二の次だ。

 

僕: でもさ、そんなことって、ほとんどないわけでしょ? 落車する確率を計算したら、ほとんど運だよね。

 

ヤマジロウ: 確率を考えるか、リスクを考えるか、それは人それぞれだな。たとえば、長い人生ではお父さんたちが怪我や病気になって倒れることがある。それでも、ロードバイクという趣味があったことで気持ちや身体の回復のきっかけになったということはよくある。趣味なんて人生の暇つぶし程度に考えている人が多いかもしれないが、個人のレベルで考えたら大切な存在で、広い意味で考えたら人生の防御なんじゃないかなと感じたりもする。

 

僕: そうかもしれないね。

 

ヤマジロウ: それと、たくさんの人たちが毎日の生活を送っていて、時に嬉しいことがあったり、時に辛いことがあったりしながら、いつもの朝を迎え、いつもの夜がやってきたりする。そういった毎日の生活を守るための砦として、身を粉にして働いているお父さんたちだってたくさんいる。社会における防御だ。しかし、たくさんの人たちは、自分のことばかり考えて生きていて、自分たちの生活が誰かに守られていることさえ気づかない。とにかく、自分、自分、自分。それなのに、いざ困った時には「誰か!」と他者に助けを求める。

 

僕: それは仕方ないでしょ。ほら、人って、自分のことを大切にするんだから。

 

ヤマジロウ: 誰かを守るために働いているお父さんたちは、自分が苦しんでいる時にその人たちが助けてくれるわけでもないのに、砦で社会を守っている。それが仕事だからな。自分たちが活躍しないことを願いながら。自分たちが活躍する時というのは、幸せではないことが起きているということだからな。そういったお父さんたちだって、奥さんがいて、子供たちがいる。このゴールデンウィークの連休中だって、家族に申し訳ないと感じながら、いつも通りに働いていると思う。

 

僕: 大変だよね。

 

ヤマジロウ: ということで、久しぶりの休みがやってきたので、ロードバイクのことを考えよう。あまり真面目に物事を考えると生きていることに疲れるので、ロードバイクをツマミにして長々とバカ話でもやろう。

 

僕: いや、君の場合、意識しなくても長々とバカっぽく話すでしょ?

 

ヤマジロウ: 実は、今、ロードバイクの防御について考えていて「沼」にはまっている。こりゃ深い。抜け出せるのかどうか分からない。

 

僕: 「沼」だって!? 「〇〇〇沼」って、ステム沼とか、ハンドル沼とか、サドル沼とか、サングラス沼とか、シューズ沼とか。そういったパーツや用品を色々と試してもなかなか気に入ったものが見つからなくて、「うーん、どうなんだ?」って、頭の中で堂々巡りして悩んじゃうことのことだよね?

 

ヤマジロウ: そうだ。ペダル沼とかバーテープ沼もある。ロードバイクを趣味にしていると、色々なところに沼があって、「これだ!」という状態になるまで苦しんだりする。

 

僕: どんな沼なのさ?

 

ヤマジロウ: それが、不思議な沼なのだよ。

 

僕: リアの駆動系? ああ、コンポ沼だね。うちのセカンドバイクとして使っているカーボン製のロードバイクは、古い世代のアルテグラだから、リアが10段変速だよね。新しいコンポーネントに交換して、11速にしたいってことなのかい?

 

ヤマジロウ: いや、コンポ沼ではない。セカンドバイクのチネリのストラトファスターは、STIやクランクは7900系のデュラ、ブレーキはR8000系のアルテ、そして、リアディレイラーは6700系のアルテというミックスだ。ノーマルクランクなので坂道は苦手だけれど、平地では何も問題ない。

 

僕: それって、コンポ沼の結果だよね。でもさ、君がフレームやコンポをバラで買って一人で組んだ愛車のクロモリロードバイクには、R8000系の最新型のアルテグラがフル装備されているじゃないか。アルテグラのロゴをペンキで塗り潰したり、やすりで削り取ってしまってるけど。君って、変な人だね。どうしてロゴを消しちゃったのさ?

 

ヤマジロウ: クロモリロードバイクを組もうと思って、海外のネット通販のサイトにアクセスしたら、たまたまR8000系のグループセットの安売りが行われていたのでポチって買っておいただけの話さ。何だか知らないが、最近の海外通販ではシマノ製品が売られていない気がするが、日本国内の自転車屋からのクレームが入ったのだろうか。別に通販で買って自分で使ってもいいじゃないか。そんなことをしたら、逆にロードバイク人口が減るような気がするけれどな。現在のロードバイクブームがずっと続くとは思えないし、近い将来、経営が成り立たなくなって潰れるか、ママチャリを売り始めるプロショップが出てくるかもしれないな。

 

僕: シマノの製品って性能が良くてコスパが良いけれどシェアが大きすぎるから、シマノの方針でユーザーがモロに影響を受けるよね。

 

ヤマジロウ: まあ、ウィグルやCRCといった海外通販がシマノ製品を売らなくなっても、これをチャンスとばかりにAmazonが本格的に参入してくるかもしれないがな。

 

僕: でもさ、普通に考えたら、アルテグラのロゴを消したくないでしょ?

 

ヤマジロウ: 男には、自らに貼られたレッテルをはぎ取って無印になりたい時だってあるのさ。

 

僕:分からない...

 

ヤマジロウ: しかし、ロードバイクを眺めていて、どうしても腑に落ちないことがある。何とかしようとして沼にはまっている。この沼にはまった感が実に興味深い。

 

僕: じゃあ、スプロケット沼? ヒルクライム用に大きめのギアを付けたいとか?

 

ヤマジロウ: 千葉県北西部のド平地で、乙女ギアは必要ない。

 

僕: じゃあ、なんなのさ?

 

ヤマジロウ: お前は、この姿を見て何も感じないのか? リアディレイラーの保護パーツ、つまりディレイラーガードを探しているのさ。リアディレイラーはとても大切で繊細なパーツなのに、丸出し状態じゃないか。

 

僕: ああ、そういえばそうだね。

 

ヤマジロウ: 野球でたとえたら、股間を守るプロテクターを付けずにバッターボックスに立って、股間に向かって思いっきりデッドボールが飛んでくるような状態だぞ。

 

僕: いつも思うんだけどさ、プロ野球の選手の皆さんって、すっごく小さなカップを股間に付けてプレーするでしょ? あれって、意味があるのかな? 股間にデッドボールが飛んで来たら、バットで打ち返せばいいと思わない?

 

ヤマジロウ: いくらプロといっても、バットは普通だろ? デッドボールを跳ね返すような強靭なバットを持っているのか?

 

僕: いや、メタファーではなくて、バットを一瞬で持ち替えてさ。

 

ヤマジロウ: なるほど、そういう意味か。だったら、練習が必要だろ? バッティングセンターに行って、股間にボールが飛んでくるように設定して、バットを持って跳ね返す練習をするわけだ。失敗したらどうするんだ?

 

僕: ああそうか、だったらさ...自動車みたいに衝撃を受けたらエアバッグが膨らむようなプロテクターを股間につければいいんだよ!

 

ヤマジロウ: きわどいタイミングで一塁に向かってヘッドスライディングしたり、きわどいコスチュームのグラビアアイドルが始球式に登場したら誤作動して大変なことになるぞ?

 

僕: それはさ...そうだ! エアバッグ式のプロテクターにAIを組み込めばいいんだよ! それなら、デッドボールかどうかを識別できるよ!

 

ヤマジロウ: 試合に出場する全ての選手が、股間に人工知能を取り付けて走り回るのか? 常に論理的な人工知能を。全く相反する組み合わせだな。

 

僕: だったらさ...そうだ! 股間に装着したエアバッグを、最初から膨らませた状態にしておけばいいんだよ!

 

ヤマジロウ: 最初から膨らませていたら邪魔だということくらい、男なら分かるだろ。

 

僕: ま、まあ、股間のデッドボールなんて、確率論から考えたら少ないだろうし、まあ、プロだからね。

 

ヤマジロウ: なるほど、そう考えると、プロ野球選手の契約金というのは、股間へのデッドボールへの対価も含まれているというわけだな。正しいかどうかは分からないが、現代の科学技術をもってしても、プロ野球選手の股間を完全に防御することは不可能だということか。

 

僕: 勝手に落胆するなよ。

 

ヤマジロウ: もとい、落車したり、立てかけておいたロードバイクが倒れたりすると、ディレイラーハンガーが曲がってしまったり、ディレイラーそのものが壊れる可能性がある。リアディレイラーがダメージを受けるのは落車や転倒だけではないだろ。河川敷沿いの道路にはたくさんの車止めがある。そこにリアディレイラーをガリっとぶつけたりしたら、すぐにダメージを受けてしまうかもしれない。リアディレイラーというのは大切なパーツなのに、全くの無防備だと思ってな。

 

僕: さすが防御系ローディだね...というか、神経質だね。リアディレイラーガードって、たくさん売られていなかったっけ?

 

ヤマジロウ: それが、沼なのだよ。気に入ったパーツが見つからない。

 

僕: まあ、有名どころと言えば、こういったタイプだよね。

 

ヤマジロウ: クイックリリースのナットの部分に取り付けるライトホルダーだな。

 

僕: 作りはしっかりしているよね。

 

ヤマジロウ: ディレイラーガードとして設計されているわけではないが、右側に倒れてしまったら、このパーツで支えるということだろう。

 

僕: このタイプのランプホルダーを取り付けて、真横から見たら、全く気にならないね。

 

ヤマジロウ: そうだな、真横から見たら、全く気にならない。

 

僕: でもさ、横から見たらスゲー目立つよね。

 

ヤマジロウ: 全くだな。それと、最大のネックは保管や整備なんだ。高価なメンテナンススタンドがあれば別だが、リアハブを両側から挟むタイプのサイクルスタンドが使えない。

 

僕: あのさ、僕たちって、団塊ジュニア世代でしょ? 中学生時代にはツッパリとかヤンキーがいたよね。あの人たちの自転車ってさ...

 

ヤマジロウ: そうだな。ママチャリにこういったステップが取り付けられていて、短ランとかボンタンとか、そういった変形学生服を着た生徒たちが二人乗りで自転車通学をしていたな。

 

僕: 変形学生服! 懐かしいね! マックスラガーとか、ジョニーケイとか?

 

ヤマジロウ: 学生服の裏ボタンがガラスでコーティングされていたり、今から考えると理解が難しいが、要は画一化された義務教育の中で、個の存在を主張したかったのかもしれないな。

 

僕: 君ってさ、公立中学の出身だよね? 結構、荒れた感じの。ボンタンを履いて喧嘩とかしてたっけ?

 

ヤマジロウ: 「学生ズボンは、ワンタックまで」という校則があったので、学内とはいえ規則に従って、ものすごく深いワンタックのズボンを履いていた記憶がある。

 

僕: スリータックとかが入ったボンタンを履いている人がいたよね。

 

ヤマジロウ: オッサンのロードバイク乗りが、フラッグシップのカーボンフレームとか、ボーラのウルトラとかで見栄を張っている姿によく似ているな。それと、当時の女子生徒の不良といわれた人たちはすごかった。腹が見えるくらいに短いセーラー服に、足首まで届くくらいのスカートを履いていたり。

 

僕: そうそう、女子生徒で一番偉い人は「スケバン」とかって言われてね。でも、すっごく綺麗な人がいたりしてね。体育の授業中とかにブルマ姿で運動していたりすると、窓からドキドキしながら見ていたよ。

 

ヤマジロウ: ほう。お前も、たまには面白いことを言うのだな。中学生特有の思春期のペイズリー調の煩悩に惑わされたお前がブルマを履いて体育の授業に出てしまい、派手な格好で突っ張っていながらも実は同人誌を趣味としていたスケバンが窓からドキドキしながら見ていたということか。そこから二人の間でプラトニックながらもエキセントリックな恋愛が始まったということだな? 実に面白い。結婚式の披露宴では絶対に紹介できないなれそめだな。

 

僕: そんなはずないだろ? どんな設定だよ!?

 

ヤマジロウ: 誤解を受けるような発言はPTAにおいて命取りになるから気を付けろ。紳士淑女が集まるPTAにおいても、街中で顔を合わせる度にメンチビームを飛ばしてくるお母さんがいたりする。学生時代にスケバンだったという人がいないとも限らない。

 

僕: ほんと、困ったもんだよね。それと、どうしてか分からないけれど、男子生徒が額に剃り込みを入れたり、まゆ毛を半分くらいに剃ったりすることが流行ったよね。

 

ヤマジロウ: 自分も剃り込みを入れていたが、四十路になれば剃らなくても禿げ上がってくるので、あわてる必要もなかったと思ったりする。まあ、おかしかったのは生徒だけではない。当時の中学校の教師たちは、拳骨で生徒を殴っていたり、髪の毛をバリカンで刈ってしまったり、勤務時間中に組合活動で頑張っていたりしたからな。PTAも知らんぷりだ。今から振り返ると、すごい時代だったな。自分が通っていた公立中学が荒れていたからかもしれないが、他の中学校の生徒が殴り込みに来たことがあって、この故郷は長くはもたないと子供ながらに思った。

 

僕: でもさ、第二次ベビーブームがやってきて、日本の景気も良くて、社会が浮足立っていたのかもしれないね。

 

ヤマジロウ: まあ、世の中の流れなんてブームばかりだがな。団塊ジュニアは競争の中で育ったので、とにかく自己主張と競争心が強いな。ということで、ランプホルダーはルックス的に違うと思ったので、うちのロードバイクたちには不採用だな。

 

僕: これはどうなんだい?

 

ヤマジロウ: リアディレイラーを保護するために設計されたパーツだな。

 

僕: 左端にネジ穴があるけど、これってなんだい?

 

ヤマジロウ: ここにネジが付いていて、ディレイラーの取付ボルトの穴に差し込んで固定するそうだが、面倒なので外しているうちにネジが旅に出てしまったらしく見つからない。

 

僕: でもさ、このディレイラーガードって、ルックス的には素敵だよね。

 

ヤマジロウ: そうだな。横から見ても違和感がない。

 

僕: 後ろから見ても、ガンダム的でカッコいいよね。

 

ヤマジロウ: おそらく、エンデューロとか、トライアスロンとか、ブルべとか、そういったレースでリアディレイラーを守りたい時には重宝するかもしれないと思ったが...

 

僕: なんだよ、自信なさげな感じだね。

 

ヤマジロウ: ロードバイクが倒れた時に、銀色の部分に当たれば大丈夫なのだろうけれど、もしも黒色のボディに地面や障害物が直撃したら、フレームのリアエンドが丸ごと折れて持っていかれるような不安がある。

 

僕: うーん、試してみないと分からないけれど、リアエンドと一体化する形だからね。

 

ヤマジロウ: 試したくない。それと、銀色の部分にサイクルスタンドを取り付けられそうだと思ったけれど、ギリギリではまらなかった。リアホイールを浮かせてディレイラーの調整をしたい時には、毎回、ディレイラーガードを外さないといけない。ということで、うちのロードバイクたちには不採用だな。

 

僕: あー、沼って、大変だよね。

 

ヤマジロウ: ということで、汎用品を用意してみた。安いスポーツバイクに取り付けられている、これだ。

 

僕: ああ、よく見るよね。今、思ったんだけれど、ほら、シクロなんとかとか、サイクルなんとかみたいな、メディア風に製品を紹介してよ。

 

ヤマジロウ: ああ...自分はああいう書き方がすごく苦手なんだ。そもそも、そういったサイクル関連の雑誌や商用サイトというのは、ロードバイクやパーツ、ホイールを自社の予算で購入して記事を書くほどの馬力がないようだ。

 

僕: それってさ、本当に中立な立場から記事を書くことができるのだろうか。

 

ヤマジロウ: まあ、それが現状だし、ユーザーによるレビューサイトが盛り上がったり、信頼される理由かもしれないな。つまり、そういったメディアは、メーカーや代理店からサンプルとして機材を借りて、それらを使ってインプレなり宣伝をやっているそうだ。利益相反とまでは言わないが、メーカーや代理店の機嫌を損ねるとサンプルを借りられないというリスクがあるので、本当に中立な立場からレビューを書くのは難しいだろうな。だからだろうか、自分から見ると、何だか不自然な文章のように感じる。

 

僕: まあ、あまり悪いことは書けないよね。

 

ヤマジロウ: 例えば、メーカーからデモとして貸し出されたロードバイクについて、サイクルメディアが記事を書くとする。「うわっ、これ、駄目だ。レースじゃ、全然使えねぇ...」と思っても、「これは、駄目なので、レースでは使えません」とは書けないだろ。メーカーの機嫌を損ねるのは大変だからな。すると、レースに向いていないということで、「これは、ロングライドに向いている!」と書いてしまったりもするのではないだろうか。

 

僕: ああ、確かに、ロードバイクの紹介記事とかで、「ロングライドにぴったり!」という感じが多いよね。

 

ヤマジロウ: 「これは、コンフォート系です」とかな。そんなにたくさんの人たちがロングライドをやるとは思えないのだけれど。それと、書き方自体が分かりやすい。ここで使う必要があるのかという感じでカタカナの横文字を並べたり、インパクトを狙った表現が多かったり、根拠があるのかどうか分からないセールスのような意見を入れてみたり、頻繁に文章が名詞形で終わったり。

 

僕: でもさ、仕事だから大変だよね...じゃあさ、その体で、さっきのディレイラーガードについて書いてみてよ。

 

ヤマジロウ: 無茶ぶりだな。あくまで例え話という体で書いてみるか。

 

僕: うん。

 

ヤマジロウ: 「各メーカーから高剛性なフレームが次々に投入され、コンポーネントも高精度化と軽量化が施されている中、必ずしも保護されているとは言えないゾーンがある。それが、リアディレイラー周りのプロテクションだ」

 

僕: ああ、サイクルメディアっぽくなってきたよ。

 

ヤマジロウ: 「そのニーズに呼応する形でリアディレイラーガードが開発され、実戦投入されることになった。それが、このRDG-Z1だ。ロングライドがスタンダードの一つになりつつある風潮の中で、このディレイラーガードはサイクリストのベストチョイスになるはずだ」

 

僕: 続けて、続けて。

 

ヤマジロウ: 「RDG-Z1のビハインドサイド。万が一の側面からの衝撃に備えて、アルミではなく、あえてスチールが採用され、高強度化。また、従来の鉄パーツといえばクロムモリブデン鋼だが、RDG-Z1では、ただの鉄がアッセンブルされ、コストダウンが追及されている。その価格は500円程度と、驚異的なコストパフォーマンスを実現している」

 

僕: ジワジワくる。

 

ヤマジロウ: 「溶接部分はそれぞれのロットにおいて多様性が図られるようにファジーな加工が施されており、ユーザーにとって満足感の高い仕上がりになっている。加えて、RDG-Z1に過度な衝撃が加わって変形した場合には、自分の手で引っ張って形状を戻すという「クラッシュ・アンド・プルバックシステム」が実装されている」

 

僕: そうそう、サイクルメディアって、そういった横文字のフレーズを使ったりするよね。

 

ヤマジロウ: 「ここまでのポテンシャルに加えて、RDG-Z1にはデザイン面でも改良が加えられている。スチールパイプによるスケルトンなデザインが、高速巡行時の空気抵抗によるオブスタクルを極限まで排除してくれることは間違いない」

 

僕: もう、アピールするためには何だって行くぜ的な気合いがサイクルメディアだよね。

 

ヤマジロウ: ...という感じだな。さらに、こういった紹介の後には、プロだか実業団だかのレーサーの長いインプレがあったりする。

 

僕: ああ、よくあるよね。

 

ヤマジロウ: 「RDG-Z1は、プロトタイプのRDG-Zeroの後継だと思いますが、手に取ってズッシリくるくらいの抜群の存在感がありますね。特に、クリテリウムレースでは右コーナーにインから入って、インを保ち、インから抜けようとしてハスっても、リアディレイラーのことを気にせずに安心して落車することができそうです」

 

僕: 安心して落車するなよ。

 

ヤマジロウ: 「それと、重量面では若干のデメリットがありますが、斜度がきついヒルクライムであっても、その影響を気にしなければ問題は皆無だと思います」

 

僕: 気にしなければ、何だって問題ないよ。

 

ヤマジロウ: 「なにより、このパーツは、子供用のマウンテンバイクルック車や安いクロスバイク、さらには変速機付きのママチャリに装着されているリアディレイラーガードとの間で汎用性がありますから、万が一、レース中にリアディレイラーガードを忘れて走っていても、通りがかりの人からお借りすることも可能という精神的なゆとりもあります。ですので、RDG-Z1はロングライドに欠かせないベストアイテムになるかもしれません」

 

僕: その角度から、ロングライドに着地!?

 

ヤマジロウ: 若干の欠点に触れるところが味噌だな。それによって中立的なインプレをやっているぞと。そして、レビューを書いたライダーのプロフィールが長々と書かれたりする。

 

僕: このタイプの商品紹介ってさ、昔のラジコンカーの紹介とよく似てるよね。

 

ヤマジロウ: 懐かしいな。タミヤのホットショットとか、京商のオプティマ、ヨコモのドッグファイター。遠い昔、コロコロコミックとかでラジコンカーが紹介される時の文章がこういった体だ。よくよく考えてみると、ラジコンカーブームの時に盛り上がった少年たちが中年世代になって、ロードバイクブームで高いバイクを買って盛り上がっている。結局のところ、自分を含めて同じ世代なのではないかな。

 

僕: でもさ、このディレイラーガードって、いわゆるパパチャリとか、キッズ向けのマウンテンバイクっぽい自転車でよく見るよね。

 

ヤマジロウ: ディレイラーにこれが付いていても、何の違和感も感じられない。それくらいに、このディレイラーガードが大衆化されているということなのだろうな。

 

僕: 全くだね。そう考えると、ものすごくコスパが良いよね。

 

ヤマジロウ: 500円くらいだからな。街中を走っている自転車を眺めてみて、これが取り付けられた自転車のディレイラーが曲がっていることがほとんどない。駐輪場とかで横倒しになることさえあるのに、しっかりとディレイラーを守っている。そう考えると、このタイプのディレイラーガードというのは、すでに完成形なのかもしれないな。

 

僕: でもさ、これって、カーボンフレームのロードバイクに取り付けた場合、どうなんだい?

 

ヤマジロウ: うーん、大衆車の場合、フレームはスチール、よくてアルミだから、ディレイラーガードに衝撃が加わっても問題ないのだろうけれど...このタイプのディレイラーガードをカーボンフレームのリアエンドに取り付けると、強力な衝撃がやってきた場合に、リアエンドごと壊れるかもしれないな。

 

僕: それって困るよね。これは...沼だね。答えが見つからない。

 

ヤマジロウ: ただし、カーボンフレームのセカンドバイクはともかく、愛車のクロモリロードバイクにぴったりのパーツを見つけた。

 

僕: え? 形は同じでしょ?

 

ヤマジロウ: その通り。これをクロモリロードバイクに取り付けて、河川敷を走っていたり、キッチンとれたてのサイクルハンガーに駐輪したら、「なんだ、あいつ、ルック車で走っているのかよ? だせえな。笑)」と思われることだろう。

 

僕: だよね。

 

ヤマジロウ: しかし、このパーツは...

  

僕: え?

 

ヤマジロウ: チタニウム合金で作られていたりする。

 

僕: チタン製!? マジで!?

 

ヤマジロウ: 入手するのが結構大変だった。たぶん、日本で20個くらいしか売られていないかもしれない。自分が2つ買ったので、残り18個くらいかな。

  

僕: どこで買えるのさ?

 

ヤマジロウ: 海外のサイトではよく似たディレイラーガードが売られているけれど、それが本物かどうか分からない。自分は、日本国内のきちんとしたショップで購入した。ディレイラーガードとは思えないくらいに高かったぞ。 

 

僕: へぇ、チタン製って、やっぱり綺麗だね。

 

ヤマジロウ: とても丁寧に作っていることが分かって、大満足だな。しかし...

 

僕: しかし?

 

ヤマジロウ: このリアディレイラーガードは、リアエンドとクイックリリースのナットの間に挟み込む形なので、ロードバイク用のシャフトだと3mmくらい長さが足りなくなる。

 

僕: え? どうすんのさ?

 

ヤマジロウ: 自分の場合には、マウンテンバイク用の135mmのクイックリリースを買ってきて、余った部分を金属用の糸ノコギリでカットして使っている。

 

僕: 金属加工まで必要なの? ディレイラーガード沼って、本当に大変だよね。

 

ヤマジロウ: しかし、実際に装着してみると、ほら、この質感がたまらない。「なんだよ、あいつ、ルック車かよ?」という嘲笑を浴びながら、彼らの無知を逆に笑い、そして気づいた時に感心してもらう。なんとサイコソーシャルなアイテムなんだ。

 

僕: チタン製のディレイラーガードって、見方によってはお洒落かもしれないね。

 

ヤマジロウ: しかし、このディレイラーガードには、さらなる特徴がある。

 

僕: なんだよ? 

 

ヤマジロウ:  自分としては、あまりのインパクトでのけぞったくらいの話だ。

 

僕: ディレイラーに接触してるよ!

 

ヤマジロウ: そう、このチタン製ディレイラーガードは、なんと、R8000系やR7000系といったシマノの新型コンポーネントの「シャドウディレイラー」に対応した製品だったりする。

 

僕: マジかよ!? 需要って、あるのかい?

 

ヤマジロウ: そう、そこがポイントだな。シャドウディレイラーを取り付けたカーボンフレームのレーシング仕様のロードバイクに、このディレイラーガードを取り付けるというシチュエーションが想像できなかったりする。

 

僕: そうだよね。

 

ヤマジロウ: シャドウディレイラーの場合には、リアホイール側にディレイラーの位置が入り込んでいるので、そのまま横倒しになってもディレイラーのダメージが少ないという話だな。しかし、ディレイラーハンガーに加えて、もう一枚の薄い金属プレートが可動部に追加されているわけで、何かが直撃したら大変だろうな。ということで、リアディレイラーガードの必要性は分かるんだ。ただ、このタイプはカーボンフレームに向いているのかどうか。自分は不安なので使わない。

 

僕: うーん、残念だね。

 

ヤマジロウ: しかし、愛車のクロモリロードバイクにこのチタン製のリアディレイラーガードを取り付けたところ、サークルの皆さんからも高評価だった。フレームの素材であるクロムモリブデン鋼とディレイラーガードのチタンとを比べたら、この組み合わせだと衝撃が来てもディレイラーガードの方が先に折れてくれるだろうし。

 

僕: 良かったじゃないか。沼から脱出したね!

 

ヤマジロウ: いや、まだ、沼の中だ。カーボンフレームのリアエンドに取り付け可能なディレイラーガードがほしい。リアエンドに直接的に取り付けるタイプのディレイラーガードでは、この役目を果たすことが難しいかもしれない。しかしながら、ようやく希望するリアディレイラーガードが手に入ったかもしれない。これだ。

 

僕: おお!

 

ヤマジロウ: クワハラ製のディレイラーガードだ。思ったよりも高かった。

 

僕: すごい重厚感だね。

 

ヤマジロウ: そうだろ?

 

僕: これって、クイックリリースのナットの部分にリアディレイラーガードがくっついてるんだね。

 

ヤマジロウ: その通り、この時点で、よく使われているリアエンドを挟む形のサイクルスタンドが使えなくなる。

 

僕: うーん、まあ、仕方ないかな。

 

ヤマジロウ: このタイプのリアディレイラーガードに強い衝撃が加わっても、クイックリリースのナットの部分に負荷がかかるわけだから、リアエンドを丸ごと持っていかれる心配は少ないかもしれないな。

  

僕: でもさ、このディレイラーガード、すごく目立つよね?

 

ヤマジロウ: 確かに、これから何と戦うんだ的な雰囲気が半端ない。

 

僕: そうだよね。どうしてガードのパイプがこんなに太いのかな。

 

ヤマジロウ:良いところまで来ているのだがな。このボルトの部分に、先ほどのチタン製のディレイラーガードくらいのパイプがあれば... 

 

僕: これって、マウンテンバイク用なのかな?

 

ヤマジロウ: そうかもしれないな。トレイルとかダウンヒルで、岩にぶつかってもディレイラーを守ってくれそうなくらいに強靭だな。

 

僕: そうだね。

 

ヤマジロウ: しかし、ロードバイクに取り付けるには大きすぎる感がある。

 

僕: 目立つね...

 

ヤマジロウ: ということで、サイクルパーツ沼でよくある、この光景。

 

僕: 沼だね...

 

ヤマジロウ: サイズ的には、これくらいなんだが...

 

僕: もうさ、これでいいんじゃないかな。

 

ヤマジロウ: ハンガーノックの時に、取り外してカロリーを補給できるし、もう、これで構わない気がしてきた。

 

僕: たぶんさ、君って、カロリーメイトをリアディレイラーガードとして使った日本初のサイクリストになれるかもしれないよ。

 

ヤマジロウ: 世界初かもしれないな。仕方がない、アイツを呼ぶか...

 

僕: え、アイツを!?

 

ヤマジロウ: そうだ、我がスタンド「サンダーストラック」。高速で思考して、解を見出す際に発動させている。

 

僕: おお、君は、やっぱりスタンド使いだったんだね。ジョジョみたいでカッコいいよ!

 

ヤマジロウ: まったく、ヤレヤレだぜ。

 

僕: サンダーストラックって有名な洋楽なのに、ジョジョのキャラクターとか、スタンドの名前に出てこないね。

 

ヤマジロウ: この曲をリリースしたロックバンドのオマージュが初っ端から登場したからな。

 

僕: え、いたっけ?

 

ヤマジロウ: 「エシディシ」

  

僕: あのキャラクターって、「AC/DC」をもじったの?

 

ヤマジロウ: アンガス・ヤングにそっくりだろ?

 

僕: マルコム・ヤングにも似ているよね。

 

ヤマジロウ: さて、サンダーストラックを発動させて、リアディレイラー沼をスキャンし、状況を分析した後で、解決策を提示させよう。

 

僕: 君、何を考えているか分からないってよく言われるけど、このスタンドを使っていたんだね。お父さんたちどころか、子供たちが見ても、「バカじゃないの?」って思うだろうけれど。

 

ヤマジロウ: おい、お前が余計なことを言ったから、サンダーストラックがヘソを曲げたぞ。

 

僕: え?

 

ヤマジロウ: サンダーストラックは、プライドが高くて、キレやすい。ああ、この表情は、間違いなくキレているぞ。

 

僕: ああ!!

 

ヤマジロウ: 「バカだと? この銀杏の紋章に向かって言ってみろ」とキレている。

 

僕: もしかして、君が頑張ったんじゃなくて、サンダーストラックを使ったのか!?

 

ヤマジロウ: ああ、このスタンドのIQは140くらいあるので試験は無双だが、多動力が半端なくて落ち着きがない。使いこなすまでは大変だった。

 

僕: このスタンドがいるって、いつ頃に気づいたのさ?

 

ヤマジロウ: 中学二年生の夏頃だな。

 

僕: いつ頃から使いこなせるようになったのさ?

 

ヤマジロウ: 厄年を越えてからかな。

 

僕: サンダーストラックが何かを見つけたようだね。

 

ヤマジロウ: そうみたいだな。

 

僕: タイヤ?

 

ヤマジロウ: どのようなアイデアなんだ?

 

僕: タイヤをリアディレイラーに貼るってことなのかい?

 

ヤマジロウ: 違うな。箱を調べてみよう。

 

僕:あ!! 

 

ヤマジロウ: も、もしかして、サンダーストラックが見つけてきたのは、こういうことか...

 

僕: すごいドヤ顔だね。

 

ヤマジロウ: つまり、「細かなことに悩まずに、自分を信じて、リスクを受け入れ、気合で乗り越えろ」ということだな。

 

僕: それにしてもすごいね。手前のおじさんは少しだけ恥じらいがある気がするけれど。

 

ヤマジロウ: 後ろのマダムは、マジで気合が入っている。コンチネンタルのタイヤがパンクしない理由の一つだな。

 

僕: でもさ、気合で乗り越えるって言っても...

 

ヤマジロウ: 何か見えた気がする。

 

僕: あ!

 

ヤマジロウ: 中級者や上級者のロードバイク乗りなら、このディレイラーガードが見えるかもしれない。

 

僕: 初心者には見えないの!?

 

ヤマジロウ: 初心者には見えない心のガードだ。

  

僕: あ、見えなくなったよ!

 

ヤマジロウ: 10年間もロードバイクに乗ってきたのに、未だ初心者...なのか...

 

僕: 中級者になるには、あとどれくらいかかるの?

 

ヤマジロウ: そうだな、さらに10年くらいかかりそうだな。90歳くらいで、ようやくロードバイクの上級者になることができる。

 

僕: あれ? サンダーストラックが、何かを見つけたみたいだよ!?

 

ヤマジロウ: どうやら、そのようだな。次こそ実現可能なアイデアを頼む。

 

僕: こっちに近づいてきたよ!

 

ヤマジロウ: 近い!

 

僕: 近いよ!

 

ヤマジロウ: サンダーストラック、お前はどこに向かっているんだ!?

 

僕: だから、近いって!

 

ヤマジロウ: 自分を通り過ぎて、海外に向かって飛んで行ったようだ。たぶん、ヨーロッパかアメリカだろうな。

 

僕: あ、戻ってきた。これ、なんだろ?

 

ヤマジロウ: なるほど、その手があったか。さすがサンダーストラックだな。だとすれば、米国で調達してきたわけだな。

 

僕: もしかして、これ、ディレイラーハンガー? リアディレイラーに何かがぶつかったら、曲がったり、折れたりするパーツだよね。

 

ヤマジロウ: そうだ。リアエンドに直接、リアディレイラーを取り付けて、リアディレイラーが衝撃を受けると、フレームがダメージを受ける。そこで、リアエンドとリアディレイラーの間に取り付けて、衝撃を受けた時にあえて壊れて両者を守るわけだ。 

 

僕: ディレイラーハンガーって、メーカーの在庫がなかったり、販売が終わっていたりするよね。ロードバイクの種類によって、ディレイラーハンガーの形が違うから、使いまわしができないし。

 

ヤマジロウ: 米国には、ディレイラーハンガーをアルミニウムの塊から削り出して作ってくれる工房があったりする。

 

僕: さすが、サンダーストラック!

 

ヤマジロウ: ディレイラーを完璧に守ろうとしてフレームまで痛めるよりも、ディレイラーハンガーを壊して修理すればいいやというくらいの気持ちの余裕があった方がいいかもしれないな。 

 

僕: ああ、赤ちょうちんのお店で日本酒を飲みながら干物をつついている中年みたいなセリフだよね。

 

ヤマジロウ: いや、たとえではなくて本当だ。あの組み合わせの旨さが今になって分かってきたし、ストレス解消にも適している。クロモリロードバイクにはチタン製のディレイラーガードを取り付ける。カーボンロードバイクにはあえて何もつけずに、ディレイラーハンガーのスペアを携行しよう。これで沼から出られるぞ。サンダーストラック、もういいぞ、戻ってこい。

 

僕: サンダーストラックって、いつもどこに収納されているのさ?

 

ヤマジロウ: 頭の中に決まっているだろ。股間だったらデッドボールになるだろ。

 

僕: マジで? だから、君、変わってるんだよ!

 

ヤマジロウ: 生まれつきなんだから、仕方がないだろ。両親からもらった贈り物...ギフトだよ。コイツがいてくれるから、今の自分がいる。ああ、お前が余計なことを言ったから、サンダーストラックがキレた。

 

僕: マジで?

 

ヤマジロウ: この表情は間違いなくキレているな。

 

僕: 近いって!!