ロードバイク乗りの鎖骨や大腿骨を保護するためのプロテクターになりそうなものを探す

 

短いけれど書きとめておく。

 

新しい年が明けて、年始から年度末の慌ただしい日々をこなしていた時、心を痛める知らせが聞こえてきた。

 

アマチュアのロードバイクサークルの中で関東最速だと個人的に思っているチームのリーダーが、埼玉県の彩湖での練習中に落車して重傷を負った。

 

ご本人のブログを拝見すると、鎖骨や大腿骨など10箇所近く骨折し、頭蓋骨も骨折。脳内出血によって片方の目がうまく見えなくなってしまったそうだ。

 

仲間たちから関係機関への救助要請が遅れていたら、命を失っていたかもしれない。

 

趣味として楽しんでいたロードバイクで、片目の視力を失うというのは、あまりに辛いことだ。

 

彼にはご家族がおられて、お子さんもおられる。とにかく命が助かったことに安堵するとともに、可能な限り症状が回復することを祈念している。

 

また、自分はたくさんのロードバイク乗りに出会ってきたけれど、片方の目が見えなくても立派に生きて、今でもロードバイクに乗っている50代のお父さんを知っている。

 

自分の方がひとまわり年上のオッサンなので説教臭くなるけれど、気を落とさずに、これまで以上にご自身とご家族を大切にして生きていこう。

 

事故に遭い、たくさんの人たちが命を助けるために頑張ってくださった。毎日のようにたくさんの人たちが命を落としている中で、これからも生きるチャンスが残された。だから、生きよう。

 

しかし、多くのレースで優勝した類まれな才能とテクニックを持ったロードレーサーが練習中に負傷したことは、自分にとってショックだった。自分のような平凡なロードバイク乗りはさらに気を付けねばならない。

 

首都圏のロードバイク乗りならば「彩湖連」と聞けばすぐに分かると思う。

 

埼玉県には荒川洪水時の被害に備えた調節池である「荒川第一調節池」が整備されていて、彩湖はその貯水池として機能している。

 

彩湖の周囲を取り巻くように道路が整備されていて、ロードバイクのエンデューロレースが開催されている。

 

彩湖の周囲はアマチュアのロードバイクレーサーにとって練習の場になっていて、脚力自慢のレーサーたちが練習していたりする。

 

自分としては、そういったレーシング志向のロードバイク乗りのことを心配していた。荒川沿いの道路などは、サイクリング専用道ではないからだ。

 

散歩やジョギングを楽しんでいるような場所を、ロードバイク乗りがスピードを上げて走るというのは、とても危険だと思っていた。

 

一方、ロードバイクで走る側としても、必ずしも走りやすいとは言えない大きな突起が連続していたり、急カーブがあって、いつか大きな事故が発生するのではないかと思っていた。

 

では、どうしてそのような状況になっているのだろうか。

 

批判を覚悟で自分は言いたいことがある。

 

ロードバイク乗り本人たちもそうだが、今のサイクル業界の方針というのは、これでいいのだろうか?

 

国内には、ロードバイクレースを主催して盛り上げようとしている人たちがたくさんいる。その取り組み自体は間違っていないと思うが...

 

色々な場所で順位を競うサイクルレースを開催すれば、それらを目標としてロードバイクに乗って突っ走ってしまう人たちが増えてしまうことくらい、容易に想像ができるだろ?

 

ロードバイクレースを盛り上げようとしている流れにおいて、その背景にあるのはサイクルスポーツ業界だと思う。

 

特に、スポーツ自転車の専門誌などのメディア。それらの背後にある自転車販売会社やサイクル用品の販売会社。彼らだって商売だから仕方がないとは思う。

 

自分もそういったレースに参加していた時があって、とても楽しかった記憶が残っているのだけれど、安全面での対策については不十分だと思った。

 

レースで誰かが落車すると、競技者という理性としては気の毒に感じる。しかし、同時に何か動物的というか、脳の奥底に眠っているような不思議な感覚が湧いてくる。

 

同じ集団の中で誰かがトラブルに巻き込まれて傷を負ったのに、自分が助かったという安堵感。どのような状態になったのだろうかという好奇心。そういったリスク、いやスリルを感じながら駆け抜ける高揚感。なんだろう、この感覚。

 

他方、レースというのは、もちろんだが競争なので、できるだけ上の順位になると嬉しいわけだし、たくさんのレーサーと競うことで興奮したり、達成感を得ることができる。

 

ところが、危険をおかしてまでより上の順位を目指したところで、素になって考えるとそういった順位にあまり大きな意味はないのに、なぜか気合が入ってしまう。

 

では、その練習をどこで行うのだろうか?

 

レースイベントを主催する人たちに問いたい。そのイベントに参加する人たちが河川敷の道路で練習していて、歩行者やランナーを危険に晒したり、迷惑をかけていることを認識しているか?

 

それでは、そういったレース志向の人たちが、トラックや乗用車が走る一般道で練習するのだろうか? 日本国内の車道というのは、自転車が走るようにデザインされているとは言い難い。なので、信号や車がない河川敷の道路にやってくるのだろう。

 

十分に安全性を確保する場所がないにも関わらず、サイクル業界を背景とした人たちがレースを開催し、たくさんのサイクリストたちがその価値観に乗ってしまっている。

 

速く走ることが優れたロードバイク乗りだという価値観。速く走って自分の力を見せたいという自己顕示。

 

さらに踏み込めば、金を出せば買えるフラッグシップのフレーム、コンポ、ホイール。

 

そういったものを持っていれば、脚力に関係なく優越感を覚え、持っていなければ引け目を感じるという雰囲気。

 

アマチュアの場合、ロードバイクというのは人生の中で趣味に過ぎず、趣味をもって人生の何たるかを唱える必要もない。

 

気に入ったバイクに乗って、自分の好きなペースで走り、楽しめればそれで構わないじゃないか。

 

最近、世間一般のロードバイクという世界の風潮について、それらが本当に正しいのかと疑問に思うようになった。

 

ロードバイクという趣味を楽しんでいる人たちのほとんどは社会人だ。職場もあり、家族もある。

 

ライドで落車して怪我をすれば仕事にも家庭にも大きな損失が生じる。

 

仕事を休職すれば、誰かがその穴埋めをすることになるし、家庭へのインパクトは大きい。

 

夫婦共働き世帯に限ったことではないと思うけれど、もしも自分が事故って入院したら、その間は妻がワンオペで仕事と家事と育児をこなすことになる。

 

現状でもレッドゾーンを突っ切っているくらいに厳しい状況だ。

 

たぶん、妻は怒り狂って看病どころか見舞いにも来てくれないことだろう。そして、何十年経ってもずっと指摘され続けることだろう。

 

別に仕事でもないロードバイクという乗り物で、あえて自ら危険をおかす必要もない。ライドだけで十分に危険なのだから。

 

その延長線上で考えると、ヘルメットを付けて、他はジャージやグローブという「布」だけで走るというロードバイク乗りのスタイルというのは、安全面で本当に正しいのかという疑問にまで広がる。

 

スポーツ関連のメディアは、この格好が当然かのように色々な記事を発信し、サイクリストたちはそれらが当然かのように受け取る。しかし、本当にそれらが安全を確保した姿なのだろうか。

 

では、多くのロードバイク乗りたちは、そのスタイルが一般的だと感じて走っているわけだが、その原型はどこにあるのだろう?

 

突き詰めて考えると、ツールドなんとかとか、ジロデなんとかとか、そういったヨーロッパのサイクルレースに行きつくのではないかと思う。

 

少し前まで、ヘルメットさえ付けずにロードバイクで疾走してレースをやっていたわけだ。

 

ヨーロッパのサイクルレースの実況や、映像商品として発信されている内容を視聴すると、妙な違和感を感じる。

 

落車が起きたシーンや選手が負傷して戦線離脱するシーンを、まるで心躍るハプニングかのように扱っている気がする。

 

選手が負傷して戦線離脱するとか、そういったハプニングで盛り上がる必要がないにも拘らず。

 

ファンライドとしてロードバイクを楽しんでいる日本全国のサイクリストたちに問いたい。何か、おかしいと思わないか?

 

優れた脚力や持久力を持ったライダーたちがレースで勝利を競う。それは分かる。ただ、落車すれば怪我を負うことが分かり切っているはずなのに、どうしてヘルメット以外のプロテクターを用意しないのだろう。

  

「プロテクターを付けたら、その分のパフォーマンスが落ちる」という指摘があるかもしれないが、レース全体で選手に着用を義務付ければよいだけの話だ。

 

しかし、ヨーロッパの大きなレースでは、そういった義務がないし、義務を用意する気配もない。実際のレースでも、「ヘルメット以外の防御がない...」と嘆いているレーサーの映像を見たことがある。

 

それなのに、レーサーへのプロテクターの着用が義務付けられないのだろうか。

 

自分なりに考えると、「プロテクターを付けずに危険を承知で競技に向かう」という感じのマッチョな精神論があるかもしれないし、ヨーロッパ的な文化や考え方かもしれないが、「サイクルレースの主催者側の意向ではないか?」と思う時さえある。

 

あくまで私感だけれど、「プロテクターを用意した方が選手の安全を確保できるけれど、エンターテイメントとして考えた場合にはプロテクターを用意しない方が盛り上がる」という思惑が見え隠れする。

 

たくさんの選手たちが一本道で自転車を漕いでレースを続けていたら、どうしてもストーリーが単調になる。

 

途中で派手な落車が発生して、選手がうずくまったり血を流したり、順位が入れ替わったら、観客や視聴者の心は上下に動く。

 

弱虫なんとかの漫画も同じテンションだ。勝負どころで重要なレーサーが落車したりすると、そこで新たな局面が展開されて、読んでいる側がハラハラドキドキするわけだ。

 

しかし、自らの意思でプロテクターを装着することが認められない選手たちの中には、大怪我して入院し、時に選手生命を失い、後遺症を残して生活に影響することさえある。

 

全力を出し尽くして落車して怪我を負うのは、長い人生を考えるとリスクでしかないが、それが仕事だと言われると職業人としての悲哀を感じる。

 

一方、その姿を眺める圧倒的多数の集団としては、どうなのか? 自らのことに直接的に関与しない痛みについては、残酷とも思えるくらいの無関心さを持つのではないだろうか。

 

国内外を問わず、サイクルロードレースに出場するレーサーの姿を見て、それが格好良いことだと思い込んでいるたくさんのロードバイク乗りがいて、その姿、つまり頭にヘルメットをかぶり、他は布だけでロードバイクに乗って疾走することが普通だと思い込む。

 

自分はそういった風潮の中で同じ格好をしてロードバイクに乗り、それが普通だと思って走っている。

 

ロードバイクに乗るたびに、「ヘルメット以外のプロテクターを着用しないというのは、本当に正しいのだろうか」と思うことがある。

 

以前から、ロードバイクに乗って通勤しているが、首都圏の道路はとても混み合っていて、自動車から幅寄せを受けたり、脇道からタクシーや一般車が突っ込んでくる。

 

一歩間違えば落車が待っているのに、ヘルメット以外はほとんど無防備だ。通勤どころか、休日のライドでさえ、落車して大怪我する人たちがいて、レースになるとさらに危険度が高まる。

 

では、ロードバイク乗りが落車して骨折するのはどの部位なのか?

 

実際にネットで検索すれば分かるし、身近にも同じような大怪我を負った人たちがいるので分かるが、一つは鎖骨。

 

ロードバイクに乗っていて転倒して肩を打って、鎖骨を骨折し、手術で肩を切開して、折れた骨を金属プレートやボルトで固定し、骨が繋がったら再び手術で切開して金属プレートやボルトを外す。

 

浦安市内でも、自分が出会っただけで数人のロードバイク乗りが鎖骨を骨折して手術を受けている。確率論からすると非常に多い。

 

次に、鎖骨の骨折ほどの頻度ではないけれど、より深刻なダメージを引き起こす大腿骨の骨折。

 

大腿骨といっても、太ももの骨というよりも、「大腿骨頸部」や「大腿骨大転子」といった足の付け根。実際には股関節の部分の大腿骨を骨折することが多い。

 

それはどうしてなのかというと、直立して、肩の次に身体のどこが横に張り出しているのかを、手で触って確かめてみれば分かる。

 

普通に考えるとベルトを引っかける腰の骨、つまり腸骨の外側の「腸骨稜」だと思うかもしれない。

 

しかし、腸骨稜は真横というよりも斜め前に向かって広がっていて、実際に腰まわりで最も真横に張り出しているのは、脚の骨の中でも、「大転子」という大腿骨の付け根の骨だと思う。

 

ロードバイクで落車して、大腿骨が股関節につながっている大腿骨頸部もしくは大腿骨の転子を骨折すると、一般的には固定ではなくて手術が行われる。

 

股関節の仕組みはとても複雑で、骨折した部位がずれていたりすると関節として機能できなくなったり、痛みや合併症を引き起こすこともあるので、時に30センチ近い長さの金属を大腿骨に打ち込んで固定することが珍しくない。

 

さらに、大腿骨の骨頭は血管が少ないので、外傷等によって血行障害が酷くなった場合には、骨頭が壊死を起こすことがある。

 

そうなればボルトどころではなくて、大腿骨の一部を切除して、人工関節に置き換える手術が行われることがある。滅多にないことだと言っても、全てのサイクリストにそのリスクが伴う。

 

楽しくて乗っていたロードバイクのライドで転んだだけで、親からもらった身体の一部がなくなって、人工の股関節になってしまうなんてあんまりだ。

 

日本人として世界と戦っているライダーの新城選手も大腿骨を骨折したことがあるし、ネットで検索した限りでも数百人近いアマチュアのロードバイク乗りが大腿骨を骨折している。

 

ロードバイクという趣味を始めてから2年くらい経った頃、自分も落車して、危うく大腿骨を骨折しかねない事態になったことがある。

 

落車というのは不思議なもので、絶対に転びそうだという状況ではなくて、「大丈夫だろ」と思った時や、ふと気が抜けた時に突然バランスを崩したりする。

 

10年近く走っていると何度も落車しているわけだが、あの痛みは忘れない。葛西臨海公園を抜けて荒川に向かっている時だった。

 

ふと、ハンドルの角度が気になって、路肩にロードバイクを停めようとゆっくりと白線から左に寄ったら、一気にフロントホイールを持っていかれて、元に戻そうとしたら戻らない。そのまま横倒しになって落車。

 

葛西臨海公園内の道路の白線の外側は、雨水が流れるように1センチくらい段差があって、そこにフロントタイヤがはまってしまい、コントロール不能になった。

 

そして、大腿骨の付け根を路面に打ち付けて、あまりの痛みに道路の上でのたうち回っていた。

 

尋常ではない痛みが襲ってきて、目に涙が浮かぶくらいだった。

 

その後、これ以上の走行は無理だと思って、そのまま自宅に帰って腰を見たら、真っ黒に内出血していて、電車通勤が非常に厳しかった。

 

当時は...いや、今でも雨の日は...片道1時間30分以上かけて電車を乗り継いで出勤しているわけで、もしも大腿骨を骨折していたら、松葉杖もしくは車椅子で出勤しなくてはいけないところだった。

 

しかしながら、サイクル関連のメディアや製造業といった業界の人たち、そして実業団レーサーから自分たちのようなユーザーのサイクリストに至るまで、鎖骨や大腿骨といった部位の骨折について、どうすれば防御できるのかを考えているようには思えない。

 

自分もそうだった。

 

「ロードバイクというのは、ヘルメットをかぶって、上下ともにピチピチのサイクルウェアを着て走るものだ」という考えが、頭の中で刷り込まれていただけなんじゃないかと。

 

ヨーロッパのサイクルレースの選手のような姿で走ることがルールではないのに、そういった姿が当然だと思っている大多数の考えに強く影響を受けていたのではないかと。

 

よくよく考えると、公道や河川敷をロードバイクで走る時なんて、別にサイクルウェアなんかに気遣う必要はなかったわけだ。

 

他者から何か言われても気にしなければいいわけだ。他者から何か言われるんじゃないかと気にして、他者と同じ格好をしているだけじゃないかと思った。

 

いや、そういったことに疑問を持っている自分の考えは正しいのか?

 

もしかして、共働き育児のストレスで、思考が変になってしまったのだろうか? いや、思考が特殊なのは今に始まったことではない。

 

しかし、大型バイクを乗り回している実父いわく、「お前たちの姿は、メロンパンを頭にかぶった宇宙人だ」と言われたことがあり、なるほどそうかもしれないと我に返った自分がここにいる。

 

そういった考え方の変化が正しいのかどうか分からないけれど。周りの一般的なロードバイク乗りと同じ格好をすることに飽きてきたこともあって、あえて違った格好をしてみたい自分がここにいる。

 

ということで、ロードバイクに乗る上で、鎖骨や大腿骨を保護するプロテクターが市販されているのかどうかを、海外や国内のサイトで細かく調べてみた。

 

うーん、困った。

 

ロードバイク専用のプロテクターがほとんど見当たらない。肘あてと膝あてが1種類くらい。ヘルメット以外のプロテクターがないなんて、素になって考えると何かがおかしい。

 

例えば、その昔、日本の剣道では竹刀と防具ではなくて、胴着だけを身に着けて木刀の寸止めで練習したり、試合をしていたようだ。当然ながら、寸止めできずに頭を叩き割られた人たちがたくさんいたことだろう。

 

米国を中心としたアメリカンフットボールだって、昔はヘルメットを付けずに戦っていて、死者が出ていたそうだ。今から考えたらゾッとする話だ。

 

では、ロードバイクのライドの場合にはどうなのか? その源流となるロードバイクレース自体が、自分が生まれた頃にノーヘルで走っていたようなスポーツだ。

 

つまり、このスポーツはまだ発展途上、もしくは自転車業界の思惑や、それを普通だと考える多数の人たちの雰囲気に引っ張られているのではないかと思ってしまったりする。

 

ヨーロッパと日本で、ロードバイクに乗る環境は全く違う。なので、海外から日本に持ち込まれたロードバイクというスポーツにおいて、必ずしも海外の真似をし続ける必要はないし、危険だと分かっていて我慢する必要もない。

  

マウンテンバイク、とりわけダウンヒルでは怪我を避けるためにプロテクターが用いられることがあるが、ロードバイクのライドでそのまま使用できるとは思えない。

 

転んだ先に土や岩があるマウンテンバイクのダウンヒル走行と比べた場合、ロードバイクの場合には転んだ先にアスファルトの路面や自動車のバンパーなどが待っている。

 

どちらも過酷だけれど、ロードバイクで走っている場合にはリスクとなるものが自分に向かってやってくるわけで、やはり防御が必要だと思う。

 

ロードバイク乗りのためのプロテクターが流通しているとは思えない状況で、どのようなプロテクターがあればいいのか。

 

ロードバイク専用の製品を最初からデザインして、衝撃試験などを実施して安全性を確かめることはとても難しいわけで、他のスポーツで使われている用品を手に入れて、それらをプロトタイプとしてカスタマイズした方がよさそうだ。

 

うーん、これは困った。

 

まずは大腿骨の頸部や大転子を保護できそうなプロテクターを買ってみた。

 

アメリカンフットボール用のヒッププロテクター。

 

まさか、アメフト用品にたどりつくとは...自分でも苦笑いしてしまうが。

 

親しい人が、アメリカンフットボールの選手だったので、地面に吹っ飛んでいく彼らの腰回りがどうして無事なのかを尋ねたら、これを紹介された。

 

価格は2000円から800円程度。ロードバイク用品としては安い部類だと思う。

 

アメリカンフットボールの選手たちは、全力疾走しながら相手にぶつかったり、真横から地面にダイブしたりもするが、ヒッププロテクターの着用が義務付けられているそうだ。

 

両側の2つが腰を守るパーツ。二つの穴が開いている部分にベルトを通して腰に固定する。

 

人間の身体は、腰骨ではなくて大腿骨の方が真横に張り出しているけれど、腰骨の上に厚めのパッドを取り付ければ、真横からの衝撃を丈夫な腰骨が受け止めることができるのだろうか。

 

しかし、それだけでは不安なので、下方にある丸い部分が大腿骨の大転子をサポートする形になっているのだろうか。ロードバイクで落車をすると直撃して大腿骨を骨折する部位で、ここにプロテクターがほしかったので好都合だ。

 

中央が尾てい骨を守るためのパーツ。

 

これらのヒップパッドはインナーパンツとアウターパンツの間に挟み込むタイプのプロテクターなのだそうだ。

 

最近ではインナーのスパッツにプロテクターが最初から縫い込まれている製品もあるとのこと。

 

実際のフットボーラーから見れば、「そんなことも知らんのか?」と言われそうだ。

 

けれど、フットボーラーの多くだってSPDとSPD-SLの違いを知らないだろうし、つまりはそういうことだと思う。

 

QB CLUBというお店の人のお勧め通りに、「Schutt」という銘柄の「Y3PP」という型番のヒッププロテクターを手に入れてみた。

 

ランニングバックやコーナーバックが身に着けることが多い小型のタイプで、壊れやすい部位を樹脂で補強しているから、初心者が使っても安心だと言われたが、それを付けてペダルを漕ぐと言い出せなかったロードバイク乗りの自分がここにいる。

 

アメリカンフットボールの場合には、タックルやブロックを受けて真後ろに尻もちをつくことがあって、いわゆる「尾てい骨」を守るためのプロテクターが付属している。

 

マウンテンバイクやBMXで派手に空中を飛んで、バランスを崩して自転車が前に行ってしまって尻もちをつくということは想像できる。

 

しかし、ロードバイクに乗って空中を飛ぶというシチュエーションは考えたくもないし、たぶん必要ないと思うので使わない。

 

バラバラのヒップパッドのパーツをまとめるためのベルト。300円くらい。コットン製だろうか。110cmと130cmの2種類があったが、20cmくらいを余らせても腰回りが1メートルを超える人というのは、ラインマンとかそういった巨漢なのだろうなと思いながら110cmを選択した。

 

たぶんなのだけれど、アメリカンフットボールの選手たちのヒップパッドのベルトというのは、毎日洗っているわけではないと思うので、この素材を使っているということは、泥と汗にまみれてベルトが臭っているのではないかと無用な心配をしてしまったりする。

 

腰用のパッドにベルトを通す。

 

パッドを裏側からみた。フットボーラーたちは、海パンのようなブリーフ型のスポーツパンツ、もしくはスパッツを履いて、その上にヒップパッドを装着して、その上にフットボール用のパンツを履くそうだ。

 

なので、このパッドは素肌に触れることを想定しているようで、裏側はフラットで滑らかだ。

 

尾てい骨を保護するためのプロテクターを外して、腰骨と大腿骨を守るためのパーツだけをベルトに通してみた。

 

そして、このヒップパッドを身体に取り付けた後、パールイズミのレーサーパンツを履いてみた。

 

ヤバい。この感覚。

 

ロードバイク乗りなのに、ヒップパッドとはいえアメリカンフットボール選手のプロテクターを装着しているという背徳感がやってきた。

 

ヤバい、何だか興奮する。

 

たぶん、この辺りが越えてはいけない一線なのだろう。自分は、今、そのラインの上に片足立ちをしているに違いない。

 

しかし、このまま行こう。このラインの先に新しい扉が待っている気がする。

 

そういえば、自分は選手ではないけれど、NFLや日本のフットボールの動画をよく見たりする。もしかして、自分は、深層心理の中でフットボーラーのような格好をしてみたいと思っていたのかもしれない。

 

その対象が、着ぐるみとかセーラー服じゃなくて、本当に良かったと思う。

 

Amazonのビデオで視聴したミシガン大学のアメリカンフットボールチームの映画を思い出した。

 

少し中腰になって、前に手を伸ばし、「レッドエイティ! レッドエイティ! ハット!」とつぶやいてみる。

 

確か、ミシガン大学のクォーターバックがこうやってスナップでボールを受け取って、スクリメージライン上でディフェンスエンドからのサックをかわして、ロングパスを投げていたはずだ。

 

うーん、アメフト選手でもないのに、ヘルメットまで全て大人買いしてコスプレをしてみたい衝動がやってきた。

 

そして、レーサーパンツの下にヒップパッドを挟み込んだ自分の姿を鏡の前で眺めてみる。

 

なんだか、コレジャナイ感が半端ない。

 

自分は、一体、何をやっているんだ?

 

共働き育児のストレスで、思考が変になってしまったのだろうか? いや、思考が特殊なのは今に始まったことではない。

 

それにしても...かなりシルエットが崩れた。いくらなんでも、この格好で荒川沿いを走るだけの気力がない。

 

しかし、サイクルパンツの上に、このヒップパッドを取り付けて、その上にサイクル用のニッカーパンツを履いたら、シルエットが全く気にならない...いや、かなりラピュタ風だな...けれど、まあなんとか我慢できる範囲だ。

 

つまり、ポタリングや通勤ライドの際に、アウターとしてニッカーパンツを履く場合には、このプロテクターはとても便利だと思う。

 

試しに、ヒップパッドを付けて、床の上に真横に倒れてみた。

 

全く痛くない。

 

ただ、背中を下方向にして倒れると、尾てい骨の辺りに衝撃が来る。先ほどの尾てい骨用のパッドも取り外さずに使用した方がよいと思った。

 

直立した姿勢から、床に向かって真横に倒れてみた。

 

腰は大丈夫だったけれど、肩と頭を床に打ち付けて悶絶した。アメフト選手のショルダーやヘルメットが大切なことを身をもって知った。

 

そして、その姿を見ていた妻は笑いもせず、「馬鹿なことをしている人がいるね...」とつぶやいてくれて、夫婦の会話が少しだけ増えた。

 

早速、通勤で使ってみよう。

 

すると、写真に映っているけれど、トレーニング用に床の上に敷いているヨガマットの素材が気になった。

 

少しだけ切り取ってみた。この素材を地面に敷いて、そこにパンチをしてもあまり痛くない。素手だとかなり痛い。

 

このEVA素材...ロードバイク用のウェアに縫い込まれていたら便利なのに...

 

普段、ロードバイクに乗る際のサイクルパンツにアドオンする形...たとえばベルトみたいにして、腰骨や大腿骨の外側のパッドをつくってもらえたら、落車の際に大腿骨を保護できるような気がする。

 

肘や膝では、アームカバーやレッグカバーにパッドを取り付けた製品があるようだけれど、サイクルパンツの場合には、パッドと股間との深い相性もあるわけで、やはりサイクルパンツにパッドを縫い込むよりもアドオンで取り付けたいような気がする。

 

ロードバイク用の腰のプロテクターを、シマノとかパールイズミとか...あと、パールイズミとか...その他にはパールイズミやパールイズミが製品化してくれないかなと思う。

 

次に、ロードバイクで落車をすると、かなりの割合で骨折する鎖骨を守るプロテクターを探す。

 

これが...状況はかなり深刻だ。国内外を調べてみても、ロードバイクのライダーの肩を守るためのプロテクターが見当たらない。

 

日本の企業、とくにサイクル用品の会社とプロテクターの会社がコラボレートして、鎖骨を守るロードバイク用のプロテクターを考案して、先に特許を取って売り出したら、世界レベルでかなりのシェアがあるのに。

 

かなりの予算を投入して、新しいコンポを開発したりウェアを開発するよりも、プロテクターを開発した方が低コストで大きな利益になる気がするけれど。

 

とはいえ、文句を言っていても仕方がないので、他のスポーツで使われている肩用のプロテクターを探してみた。

 

しかしながら、ロードバイクのライドで使えそうなプロテクターが見当たらない。

 

他のスポーツと比較して、かなりの高速で前方に移動しながら、真横に倒れるという動作がないからだろうか。

 

これだけたくさんのロードバイク乗りが鎖骨を折って手術を受けているのに、新しいコンポーネントやウェアを追い求めたり、全国でサイクルレースを開催するサイクル業界に対して疑問を感じる。

 

また、自分を含めて、どうして疑問に感じなかったのかと素になって考えた。

 

それで、オートバイ用のインナー用の肩パッドをいくつか買ってみた。

 

よく分からずにポチポチと買ってみたが、コミネというプロテクターを作っている日本のメーカーの製品なのだそうだ。

 

それぞれのセットが1000円程度。

 

先ほどのアメフト用品でも気づいたが、ロードバイク用品の価格というのは、本当に実際の価値と釣り合っているのだろうか。

 

ロードバイク本体を含めて、輸入品には代理店のマージンが乗って高価になっている気がする。おたふく手袋のインナーやコミネのプロテクターのように、日本の会社が独自に製品を作って販売したら、もっと安い気がするのだけれど。

 

スポーツ人口が少ないからだろうか、サイクル用品がやけに高額なのではないかと感じる。安いサイクル用品は使い物にならないことがあって、それなりの価格のものを買うという癖がついてしまっている。

 

なお、オートバイのインナー用の肩パッドというのは、上着に取り付けられたポケットに入れて使うという意味のインナーなのだそうだ。

 

アメリカンフットボールやラクロス、アイスホッケーの肩プロテクターは、腹部や背部のプロテクターと一体化している。さすがに鎧をつけたような状態でロードバイクに乗るのは...

 

他方、マウンテンバイクのダウンヒル用の肩パッドは、インナーウェアと一体化していて、ロードバイクに乗る場合には、その上にジャージを着ることになるので暑いと思う。何より、高価なので普及するとは思えない。

 

ラグビー用の肩プロテクターは鎖骨の真上を守るようになっているし、ロードバイクの落車のように真横に衝撃を受けるスポーツがなかなか見当たらない。

 

オートバイ用のウェアの肩部の裏面に入れる肩パッドだけを買って、サイクルジャージの裏に貼り付けるというアイデアは自分のオリジナルではない。

 

ブルべで1000kmを走破したベテランロードバイク乗りのクロスさんという方のブログにて拝見した。

 

100kmをロングライドだと言っている人が多い中で、1回のレースで1000kmというのは凄まじい。

 

クロスさんも数年前に落車して大腿骨頸部を骨折されて、大変な苦痛に耐えられたとのこと。

 

鎖骨の骨折も痛いということで、オートバイ用のインナーパッドをマジックテープでジャージの下に貼り付けて、ロードバイク用のプロテクターとして使っておられた。

 

ご本人は「気休めかも」とおっしゃっていたが、ロードバイク歴が10年を軽く超えていて、一度のライドで1000kmを走破するようなライダーのお言葉はとても重要だ。

 

とても勉強になる大切なアイデアをご教示くださったことに感謝申し上げたい。

 

そして、色々な肩パッドを試してみた。

 

これは、かなり近未来感のある肩パッド。とても格好いいのだけれど、サイクルジャージの下に入れると肌が痛い。

 

ジャージが盛り上がって、シルエットも崩れてしまう。サイクリング用のバックパックの肩口に取りつけられたら便利なのに...

 

そういったバッグを開発しうる会社といえば...ドイターとか、シマノとか...それとシマノとか...その他にはシマノやシマノが作れるかもしれない。その他にもシマノがあったはずだ。肩プロテクター付きのバックパックを売り出したら、結構売れると思うけれど...

 

ということで、お蔵入りしたパッドは、オートバイが趣味の人に差し上げようと思う。

 

コミネの「SK-812」という肩パッド。

 

Amazonのレビューでは、このパッドをサイクルジャージの裏に貼り付けて使っているライダーがおられるようだ。

 

かなり硬めの樹脂でつくられていて、国際基準でのプロテクションのレベルも高いようだ。

 

ジョジョの奇妙な冒険で、ディオが人間をやめる時に使った石仮面のようなフィーリングを感じる。

 

裏側を見てみた。これを顔に装着すると、ディオのようにトランスフォームするのではないかと不安になるが、顔ではなくて肩に装着するものなので、たぶん大丈夫だと思う。

 

ということで、サイクルジャージと素肌の上に挟んでみた。

 

現時点ではジャージに固定していないので安定しないし、端の部分が肌に当たることがあるので削るような加工が必要だと思ったけれど、予想以上に肩にフィットする。

 

試しに、このインナーパッドをサイクルジャージの下に入れて、部屋の柱に何度も肩を打ち付けてみた。さすがレベル2。衝撃を感じるけれど、痛みは感じられない。

 

試しに、何も付けていない側の肩を柱に打ち付けてみた。

 

激しい痛みが肩にやってきて、しばらく悶絶した。そりゃ、この状態で落車したら鎖骨だって折れるだろうと思った。

 

同時に面白かったのは、インナーパッドを入れた状態の肩のシルエット。パッドを入れていると言われなければ、肩が張り出していて、かなりマッチョに見える。とてもカッコいい。

 

ヨーロッパのロードバイク乗りと比べて、日本のロードバイク乗りのシルエットが冴えない感じがするのは、脚の長さだけではなくて、肩幅なんじゃないかと、鏡の前で自分の姿を眺めながら思った。

 

自分なりには、これが当たりだと思って予想を外した肩パッド。

 

ジョジョ的にはスタンドの顔のように見えるが、自分のスタンドではない。

 

想像以上に柔らかくて、落車した時に肩を守ることができるかどうか分からない気がしたので却下。

 

裏側もスリットがなくて、肩の汗が逃げる場所がない。というか、このパッドはインナーポケットに入れるためのプロテクターなので、そういった設計もないのだろう。

 

それ以上に、このプロテクターをサイクルジャージの下に入れると、明らかにパッドが入っているぞ的なシルエットになるので気に入らなかった。

 

ということで、買ってみた中では、コミネの「SK-812」という肩パッドが最も良かった。

 

峠の下りを走る時とか、落車の多いクリテリウムや雨天のエンデューロレースで使うと、安心かもしれない。

 

この肩パッドをマジックテープでサイクルジャージに貼り付けるか、メッシュ地のポケットをジャージに縫い合わせることで、サイクルジャージに取り付けてみようかと思う。

 

地味ではあるけれど、こういった試行錯誤を続けている中で、ロードバイク乗りが怪我を負うリスクを少しでも減らすことができればいいなと思う。

 

ミシン教室に通うか...

 


2019年7月追記:

 

コミネのSK-812のプロテクターは、樹脂に特殊なコーティングが施されているようで、粘着式のマジックテープが貼りつかない。

 

プロテクターにマジックテープを貼り付けてジャージに固定したい場合は、貼り付けたい部分に消毒用のエタノールを塗ってコーティングを浮かせた後、マイクロファイバー雑巾でこするとコーティングを剥がすことができる。

 

そこにマジックテープのオス側(トゲトゲした側)を貼り付けて、マジックテープのメス側をジャージに貼り付けると、ライドの最中にずれることはないようだ。

 

レベル2の強度が保たれるかどうかは分からないが、何も着けずに落車して鎖骨を骨折するよりは安全だと思う。

 

その予算は両肩で1000円、片肩で500円程度。考えようによっては、デュラやアルテのコンポーネントを揃えるよりもずっとコスパが良いかもしれない。

 

このプロテクターを装着して実際に何度か走ってみた。

 

汗が流れることはあるが、特に蒸れることもなく、むしろ肩口に空気が入って涼しいような気がした。

 

ただ、ユーザーがプロテクターを自作しているようでは、サイクル業界の努力が足りない。サイクリストの鎖骨や大腿骨を守るような製品の提供に注力を願いたい。

 

世界に先駆けてSTIレバーを開発して欧米の度肝を抜いたような日本のサイクル産業が、この程度の製品を実用化できないはずがない。