「地域デザインラボ@ちば」で千葉県内の公務員さんたちが取り組んでいる「デザイン思考」って、なんだろう? (中編)

 

※注:この物語は、ヒノデダッズムによく出てくる「僕」と「フジヤマジロウ」が延々と会話を続ける小説の体で書いています。あくまで個人的な考察なので間違っているかもしれませんがご容赦ください。

 


ヤマジロウ: 予想通りの展開だが、浦安市の「街づくり」とか「行政」について話し合うと、途端にアクセスが減るのはどうしてなのだろうか。

  

「地域デザインラボ@ちば」で千葉県内の公務員さんたちが取り組んでいる「デザイン思考」って、なんだろう? (前編)

 

僕: ま、まあ、落ち込まずに話を続けようよ。

 

ヤマジロウ: いや、この関心のなさには驚いた。駅前に素敵な施設が出来上がってしまった背景が分かった気がする。

 

僕: でもさ、あんまり浦安のことについてブログで考えていたら、「あいつは、市議会議員に立候補したいのか!?」って陰口を言われたりするでしょ? そんなつもりなんて全くないのに。ほら、元町エリアの小学校のPTAの人とか。

 

ヤマジロウ: あのママさんは悪人ではない。リアルでは明るくて愉快な人柄だが、内面はとても繊細な人だと思う。そして、我が街、浦安のことを大切にしていると思う。小学生もしくは中学生の頃にイジメを受けて辛い気持ちになったかもしれないが、ここは浦安だ。個性ある人たちを受け入れてくれるだけの懐の深さがある。私もそうだけれど、彼女もこの街でたくさんの理解者に出会い、ご自身の居場所を見つけていると思う。

 

僕: お、おう。ワシエエコトイウタ感が半端なくて、気持ち悪いお父さんだと言われるよ。

 

ヤマジロウ: それと、私は彼女のことをよく知っているが、彼女はたぶん私のことをあまり知らない。新町エリアのお父さんというと、ほら、メタボリックで、理屈っぽくて、プライドが高い感じの中年男性をイメージしているのではないだろうか?

 

僕: 細マッチョだけど、理屈っぽくて、プライドが高いでしょ。

 

ヤマジロウ: ポルシェとかベンツに乗ってるとか?

 

僕: ロードバイクでしょ。

 

ヤマジロウ: 毎日、高いワインとかブランデーを飲んでるとか?

 

僕: ストロングゼロでしょ。

 

ヤマジロウ: お爺ちゃんがイタリア系のクォーターだとか?

 

僕: 飲み会でよく使うネタだよね。

 

ヤマジロウ: 言っておくが、浦安市の元町エリアと新町エリアというのは、互いに理解し合って、距離を保って、干渉しない方がいいと思う。もちろん、イベント等で仲良くするのは歓迎だが、互いにどんな生活なのかも十分に分かっていない状況で、陸橋を隔てた南北において主張を交わすと収拾がつかなくなる。それでこの街が良くなるとでも思うか?

 

僕: おいおい。中町エリアはどうなんだよ。

 

ヤマジロウ: もちろん考えているさ。浦安がバランスを保っていられるのは中町エリアの存在が大きい。中町の人たちがおられなかったら、浦安は南北で水と油になっていたかもしれない。それにしても不思議なんだ。元町エリアの人たちの多くは浦安市を気に入っている。新町エリアの人たちの多くも浦安市を気に入っている。不思議だと思わないか? 陸橋を隔ててガラッと町並みや人の雰囲気が違うのに、それぞれのエリアの市民が、この浦安市という街のことを気に入っている。環境や見方は違ったとしても、それぞれのエリアが素晴らしい町で、そういった複数の町が、一つの良き街を構成している。それでいいじゃないか。ゴチャゴチャとツイッターで突っ込まなくても。

 

僕: それは思うね。無理に一つになろうとするから軋轢が生まれるのかなって。

 

ヤマジロウ: 次に、もう一つ、言っておきたいことがある。ヒノデダッズムは政治的マターに関わらないことを明言している。これから立候補を予定している人たちや現役の人たちと比べて、私のようにマニアックに浦安の行政について細かく考えて、コツコツとブログで発信している人がいるだろうか...いや、いない。

 

僕: ああ、それ、高校の国語科で出てきたよね。反語表現だったっけ?

 

ヤマジロウ: 「いいか~、先生、一回しか言わないぞ~。反語の表現、今度の中間テストに出るかもしれないぞ~」

 

僕: ああ、いたよね、そういう教師...

 

ヤマジロウ: 先のPTAのお母さんも同じ意見だと思うが、本来ならば、この街に住む一人ひとりが、この街のことについて考えた方がいいと思う。市の行政において権限を持った人たちが「大いなる力には、大いなる責任が伴う」ということを自覚する上でも、市民が諸手を挙げて迎合せずに見守ることは大切だ。一方、感情的な対立からは建設的な展開が期待できない。心を通わせるためには穏やかな人間関係も大切だ。

 

僕: あのさ、君、すごいドヤ顔だね。鼻息で飛ばされそうだよ。

 

ヤマジロウ: ということで、なかなか意義のあるトークだった。そろそろ寝る。

 

僕: おい、まだ本題に触れてもいないだろ。

 

ヤマジロウ:前回からの話を整理しよう。まず、浦安市には、市役所の職員たちが立ち上げた自主研究グループのチームウラシマという集まりがある。ローマ字表記が面倒なのでカタカナで行く。そして、そのチームウラシマのリーダーが、千葉県内の公務員と一緒に新しい自主研究グループを立ち上げたことを知った。

 

地域デザインラボ@ちば 

https://designlabchiba.jimdofree.com/

 

ヤマジロウ: 略して、「デラちば」だな。

 

僕: 勝手に略すなよ。僕たちの世代で「デラ〇〇」って言ったら...

 

ヤマジロウ: うん、中高生の頃、大変お世話になった。現在のようにインターネットが普及していなかった夢淡き青春時代。あの緊張感と高揚感が懐かしい。ともかく、どのような分野でもそうかもしれないが、何かのチームを立ち上げて人の記憶に刻むためには、その名前は、できるだけ短いフレーズがいい。正式名は長くても、略称がグッと来るという方法もアリだ。そこからネット検索を介してサイトで活動を紹介するためには、一発でヒットするような個性的な文字の組み合わせがいい。たぶん、このネーミングは狙って付けている。つまりはそういうことさ。

 

僕: 「デラちば」で検索したら、うちのサイトが上位でヒットするよ。それで...デラちばでは、千葉県内の公務員さんたちが集まって、「デザイン思考」を使って地域設計とかを研究しているんだよね。

 

ヤマジロウ: そうみたいだな。

 

僕: 前回は、「デザイン思考って、なんだろう?」ってところから始まったけれど、今ひとつ、デザイン思考がなんなのか、分かりづらかったんだよね。

 

「地域デザインラボ@ちば」で千葉県内の公務員さんたちが取り組んでいる「デザイン思考」って、なんだろう? (前編)

 

ヤマジロウ: それでは、チームウラシマのリーダーを含めて、千葉県内の県庁や市役所に勤める公務員たちが、どうして「デザイン思考」に関心を持つようになったのか? その背景を調べてみよう。カタカタカタカタ

 

僕: チームウラシマのリーダーに尋ねれば済む話じゃないの?

 

ヤマジロウ: 彼とは友達でもないし、やり取りもない。彼らが発信した「謎」を解き明かしてみたい。まずは、自治体とデザイン思考について調べてみる。カタカタカタカタ

 

 ( ゚д゚) ・・・ 

 

 (つд⊂)ゴシゴシ 

 

僕: ど、どうしたんだい!? 動揺して、すっごく有名なアスキーアートが飛び出してるよ!

  

ヤマジロウ: いや、そんなはずは...もっとスケールを国全体に広げてみよう。カタカタカタカタ

 

 (;゚д゚) ・・・ 

  

 (つд⊂)ゴシゴシゴシ 

 

僕: お、おい、どうしたのさ?

 

ヤマジロウ: まさか、今度はスケールを小さくして浦安市について調べてみよう。カタカタカタカタ

 

(;゚ Д゚) …!?

 

僕: どうしたのさ!? 

 

ヤマジロウ: そうか..始まるのか...

 

僕: な、なにが始まるのさ!?

 

ヤマジロウ: 私の予想が外れていなければ、デラちばのターゲット...いや、現時点ではチームウラシマのリーダーが考えているターゲットかもしれないが...まさか、この方向は...デジタル・ガバナンス...

 

僕: デジタル・ガバナンス!?

 

ヤマジロウ: つまり、「電子行政」ってことさ。

 

僕: 電子行政!? 千葉県って、そんなにハイテクだったのかい!?

 

ヤマジロウ: 違う。最近、日本政府が「デジタル・ガバメント」の推進を打ち出した。この場合は政府だけではなくて、自治体を含めた行政の電子化だな。そこでのキーワードが、デザイン思考に基づく「サービスデザイン」という考えだ。しかしながら、県庁や市役所にはそれぞれの情報担当課があるわけで、そのセクションの枠を越えて自治体の職員が活動するのは色々と当たり障りがある。だから、「千葉県の少し変わった公務員」という体でカモフラージュして、サービスデザインについて自主研究を始めたということだろう。

 

僕: すごいじゃないか!

 

ヤマジロウ: いや、あくまで私の推測の範囲でしかないが、チームウラシマのリーダーは、志が高くて優秀で真面目な人たちを、良い意味でダマして巻き込むという性質がある。デラちばに参加している公務員たちは、自分たちが行政の最前線のテーマを研究していることに気づいていないかもしれない。

 

僕: 「少し変わった」どころか、立派な取り組みじゃないか。

 

ヤマジロウ: しかも、驚いたことに、浦安市という街のスケールで眺めてみると、浦安市役所どころか浦安市議会の人たちまで行政業務のIT化やロボット化に理解を示しているようだ。統合型GISの整備については予算を増やしているようだし、議会からの指摘が追い風になるかもしれない。これは良い意味でヤバい。かつて、行政分野の電子化において先進的な自治体だった浦安市が、再び勢いを取り戻すかもしれない。

 

僕: マジで!? 過去形から現在進行形になるのかい!?

 

ヤマジロウ: 「いいか~、先生、一回しか言わないぞ~。デジタルガバメントとデザイン思考、今度のテストに出るかもしれないぞ~質問が飛んできて凍るなよ~」

 

僕: 誰に向かって言ってるんだよ?

 

ヤマジロウ: しかも、浦安市の場合、そういったIT化への取り組みは絵に描いた餅ではなくて、すでに教育分野が先行する形でアクションが始まろうとしている。最近、浦安市教育委員会がパブリックコメントを集めているが、浦安市は、公立の小中学校において、情報分野、特にIT系の教育に力を入れる方針だ。私は新町エリアのことしかあまり知らないが、10人くらいのお父さんが集まると、必ずと言っていいくらいに1人か2人、時には半分くらいがIT系の職業だったりする。この状態は浦安市の特色のひとつなんだ。それを上手くとらえて、教育分野に活かしていると感心する。

 

僕: ほんと、浦安って、IT系のお父さんが多いよね。

 

ヤマジロウ: 情報分野の考え方やスキルを子供の頃から学んでおくことは、これからの社会を生き抜く上で大切だと思う。勤労世代の減少に伴ってAIの活用が期待される一方、多くの仕事がAIに置き換わってしまうのではないかと危惧されている。浦安の子供たちが大きくなった時、AIに使われるのではなくて、AIを使いこなすような大人に育ってほしい。また、親たちから情報系の能力を受け継いだ子供たちが才能を開花させるだけでなく、そういった友達と共に能力を高める子供たちが増えることだろう。また、情報系の職業では、精神的なストレスによって体調を崩してしまうことがよくあって、スポーツを楽しむことでストレスに打ち勝つというスタイルはよく知られているそうだ。頭を使って、身体も使って、成長する。さすが、私が敬服する鈴木教育長が率いる浦安市教育委員会だな。

 

僕: 君さ、鈴木教育長の大ファンだよね。この前、浦安駅前で仕事帰りの鈴木教育長を見かけて喜んでたよね。

 

ヤマジロウ: いや、もうね、大ファンだよ。彼を偶然見かけて一緒に記念写真を撮りたかったが、深夜なのに教育長がシラフで歩いておられたので躊躇した。すごくないか? 我が街の教育長は、平日の深夜まで働いてくださっている。土日は市内の様々なイベントに引っ張り出されて年中無休の活躍だ。もうね、政治的な意味合いを除いて言うが、兼任でも構わないので鈴木教育長に副市長をやってくれないかなと思う。彼が副市長だったら、この街は抜群に安定すると思うよ。

 

僕: ともかく、「デジタル・ガバメント」と「デザイン思考」って、どこでつながるのさ? 浦安市の行政をIT化すると何が変わるのさ? 具体的には浦安市がどのように対応すればいいのさ?

 

ヤマジロウ: 話せば長くなるので、私が思いついた結論から話す。浦安市の人事に口を挟むわけではなくて、「こうだったら素敵だな」というイメージに過ぎない。私が市長だったなら、チームウラシマのリーダーを、市民税課から情報政策課の課長補佐にコンバートする。同時に、情報政策課の中に、ICT推進係とか、そういった名前の庁内コンサルタントチームを編成する。色々な課をまわってインタビューして、電子化が可能な部分を見つけて対処するわけだ。

 

僕: ああ、それは分かるね。ICT推進係の係長を、チームウラシマのリーダーが課長補佐として兼任するわけだね?

 

ヤマジロウ: そうだ。そして、彼を浦安市の「CIO補佐官」に任命した上で、電子行政の整備に集中してもらう。

 

僕: CIO? 補佐官? 地方公務員なのに、どうして「官」なのさ?

 

ヤマジロウ: あとで説明する。そして、彼が大好きな市役所の外の活動、つまりオフサイトはお預けだ。そもそも浦安市のことで手一杯になり、オフサイトで活動している余裕はなくなる。しかし、毎日が楽しくて仕方がないことだろう。

 

僕: 部下はどうするのさ?

 

ヤマジロウ: そうだな...市役所の中でも優秀な若手もしくは中堅の職員が必要だな...情報政策課のK島君は絶対に必要だな...広聴広報課にいたノジーさん...彼には輝る能力がある...チームウラシマに参加していた若者たち...こども課にいたスーさん...あと、教育総務部の指導課だと...バカボンのママ...忘れてはいけないのが復旧液状化対策プロジェクトのイケメンコンビ...うーん、浦安市役所には優秀な若手や中堅の職員が多すぎて、人選に困る。まあとにかく、彼ら彼女らのような優秀な職員を、チームウラシマのリーダーの下に付けて、業務をサポートするとともに、彼のスキルやセンスを学んで次の世代につなぐ。

 

僕: 君さ、キモいよね。浦安市役所マニアじゃないんだから。上司はどうすんのさ?

 

ヤマジロウ: そうだな...チームウラシマのリーダーだけで管理業務の柱を担うのは負荷が大きいので、情報業務に長けた次長級職員を浦安市のCIOに任命する。

 

僕: CIOがなんなのかわかんないけど、そんなすごいことができる次長さんがおられるのかい!?

 

ヤマジロウ: うん、間違いない。最近、大変な部署から異動になったので、良いタイミングだと思う。ということで、ここまでの対応において要するコストはゼロに近い。ただの人事異動だ。そして、彼らを信じて黙って待つ。以上。

 

僕:おーい、完全に人任せじゃないか! あのさ、いきなり結論に行ったから、全く意味が分からないね。

 

ヤマジロウ: 市民として応援を要請されたら、アンケートに答えるくらいだな。それでいいんだよ。彼ら彼女らは優秀だ。しかし、幹部が優秀だとは言えなくて、そういった意味ではただの市役所だが、伸びしろはある。そういったことまで説明していたら、話せば長くなる。よく考えろ。こんなにマニアックなブログエントリーを、一体、どこの浦安市民が読むんだ?

 

僕: でも、いいじゃないか。中学二年生の男子っぽく、熱く話してみてよ。

 

ヤマジロウ: まあ、チームウラシマのリーダーが張り切ってしまうのも分かる気がするが、切々と説明を並べるだけで、熱い感じになるかもしれないな。まず、デラちばのことは脇に置いて、「電子行政」について考えてみたい。

 

僕: うんうん。

 

ヤマジロウ: 電子行政というと、ほら、アンドロイドみたいな人型ロボットがウィーンとモーター音を出しながら動き回ったり、緑色もしくは青白い部屋の中でカタカタとキーボード音が鳴り響いたりというイメージがあるかもしれないが、そうじゃないんだ。やってることは今までと変わらない。しかし、パソコンとか、そういった情報端末の中で行われていることが違う。私たちのようなユーザー側としては、大してやることは変わらないが、もっと便利になる。しかし、今までは、そういった行政業務を人間がやっていた。現在の技術ならば人間がやらなくてもいいことを人間がやっている。だから時間と金がかかり、時にミスが起き、職員にストレスがかかって、疲弊して倒れることもある。職員の仕事が遅かったり、疲れたり、ミスをすると、結局は、私たちのような市民に影響が出る。

 

僕: まあそうだよね。

 

ヤマジロウ: では、どうして電子行政が必要なのか? 業務の効率化だけではなくて、電子行政でないと実現しえない内容もある。例えば...ほら、浦安市内でもそうだが、政治や行政に関わる人たちから、「10年後、20年後の浦安を考えて取り組みます!」という感じのメッセージが発信されたりするだろ? では、実際に10年後、20年後の浦安の具体的な姿をイメージできていて、何が課題で、どうやって解決するのかまで説明できる人がどれくらいいると思う? まさに、「言うは易く行うは難し」だ。

 

僕: 10年後...ねぇ...

 

ヤマジロウ: 浦安市の財政力がさらに高くなり、もしくは現状を保つことができて、市役所の職員の数を維持することができるだろうか。また、市内を眺めてみると、思ったよりもシニア世代の市民の方々が多いことに気づく。自分の親の世代だけでなく、自分たちも将来はそうなるのだが、たった5年の時間が流れただけで、とても老いていく感じがある。10年後になるとさらに衰える。今は元気に歩いたり、マイカーに乗って買物や病院に行くことができるかもしれないが、やがて歩くことさえ厳しくなる日が来ることだろう。街全体で考えると非常に多くの高齢者を支えることになるのではなかろうか。そういった時、これまで浦安という街を支えてくださった彼ら彼女らを、誰が守るのか。誰にサポートや助けを求めるか。もちろん地域の繋がりも大切だが、それだけでは限界がある。では、今のスタイルの行政で本当に守ることができるのか。

 

僕:うーん、市役所とか業務委託の団体や会社の「人手」だけで対応していたら、大変なことになるかもね。

 

ヤマジロウ: そういった時、例えば、高齢者の方々のご自宅に情報端末が設置されていたとする。小さなタブレットではなくて、昔から慣れ親しんだテレビのサイズくらいでも構わない。その端末では、普段はテレビも見られるようにすればいい。その端末を操作するのはキーボードではなく、大きなタッチパネルで入力できればいいだろう。今は廉価品が売られている。その情報端末に、電話とネットが繋がっていて、宅配ベースの買物を音声で注文したり、市役所に相談したり、病院までのサポートをお願いしたり、離れて暮らす家族がテレビ電話のような形で声をかけてくれるといったシステムがあったら便利だと思わないか?

 

僕: うん、それと、AIが話しかけてくれたりするといいかもね。「〇〇さん、今日はいい天気ですね。お体、大丈夫ですか? ご家庭で足りないものはありませんか?」って。

 

ヤマジロウ: 浦安市には、「ハイブリッドクラウド」という基礎自治体ではヘビー級とも言える強力な情報システムがすでに配備されている。これは全国の自治体どころか、東京の23区よりも導入が早かったくらいで、今でも導入できていない23区の街があったりする。自宅の情報端末から浦安市のハイブリッドクラウドを経由して、関係各所に情報を伝えるシステムを構築するのは難しくない。例えば、高齢者がお住まいの自宅の玄関先に防犯カメラを設置して、誰かがやってきたら高速通信ネットワークを使って動画を浦安市役所に転送し、記録し続けるというシステムだって不可能ではないと思う。

 

僕: なるほどね。何か事件性のあるトラブルがあったら、浦安市役所から浦安警察署に動画のデータを転送するわけね。浦安市内に防犯カメラを設置して、そこから浦安市のハイブリッドクラウドに動画を転送していたら、悪いことを考える人たちが浦安市に寄り付かなくなるんじゃないかな。これって、「IoT」ってやつなのかい?

 

ヤマジロウ: 「IoT」、すなわち「Internet of Things」という言葉を聞くと、「なんだそりゃ?」という感じになってしまうが、要は、「人」ではなくて、「物」がインターネットを使うというだけの話だ。テクノロジー自体は難しいかもしれないが、ユーザー目線で考えれば大して難しい話でもない。

 

僕: 横文字が並ぶと難しく感じるよね。

 

ヤマジロウ: 結局のところ、昨今のITについて思う課題は、一般の人たちが分かりにくい専門用語を、分かりやすく説明できていないということだ。「一般の人が分からない専門用語を知っている俺ってカッコいい」という時代はすでに去った。一般の人が分からないことを分かりやすく説明できることが、プロとしての能力だという時代に入った。例えば、私たちが病院に行って診断や治療を受ける時、横柄な医者を除いて、普通は患者目線で分かりやすく説明してくれるだろ? 

 

僕: そうだよね。いきなり専門用語で説明しないよね。だって、言葉の意味が分からなかったら不安になってしまうから。

 

ヤマジロウ: ITや行政についても同じことが言えると思う。自分たちは理解できているからと、専門的な用語をいきなり使ってしまうと、その時点でユーザー側は考えることが辛くなってしまう。分かりやすく説明することが大切なのさ。また、市役所の仕事だけを考えても電子化できる分野はたくさんある。市民が浦安市に引っ越してきて、市役所の窓口に行って、何度も申請書の様式に住所と氏名を手書きで記入して、市役所の中の人がパソコンでポチポチやったりする。一体、同じ住所を何度書かせりゃ気が済むんだと。そういった手書きの様式を全自動で読み取って、確認してボタンを押すだけで証明書を発行したり、情報を管理することが可能になってきた...というか、実際に23区では始まっていたりもする。

 

僕: へぇ、あのさ、マイナンバーってどうなのよ? あれって、すごくシビアな番号だから落したら大変だし、カードの形で持ち運びたくないんだよね。

 

ヤマジロウ: いつも思うのだが、マイナンバーの番号を浦安市で一度、暗号化した市民カードを作ってくれたらいいと思わないか? そうすれば、カードを落としても浦安市で情報を変更するだけでマイナンバーは守られるし、浦安市に申請を出す時に、わざわざ手書きをする必要がなくなるんじゃないかと。保育園を利用する時の継続申請とかでは、毎回、毎回、同じ書類を出さないといけなくて、とても面倒だ。

 

僕: 街の整備とかは?

 

ヤマジロウ: 北海道の自治体でテストが行われたと記憶しているが、例えば、道路の管理というのはとても大変な作業だと思う。市役所の人たちや業務委託された人たちが車に乗って見回るだけでも相当な作業量だ。そういった時、公用車にカメラを取り付けて、路面や標識が傷んでいる場所のデータをAIで自動的に検出して、地図として表示させることができたりする。また、通過していない道路があれば、そのルートも自動で表示されるようだ。浦安市内の全ての道路をチェックするのなら、1日くらいあれば十分だな。

 

僕: あのさ、ほら、千葉市がやってる「ちばレポ」って、浦安市で実施できるのかな?

 

ヤマジロウ: ああ、行政の関係者が指摘することがあるな。確かに面積の大きい千葉市だと便利なシステムかもしれないが、浦安市のようにコンパクトな街だからといって不要とは言えなくて、公園だとか歩道だとか、そういった場所の不具合を市民が報告できると助かる。

 

僕: 市民が浦安市に街の不具合を報告するとポイントが集まって、ハンドルネームでランキングに並んだりすると楽しいね。

 

ヤマジロウ: ポケモンなんとかよりも社会のためになる。その時点で、行政と市民が一緒に街のことを考えるパーティだ。浦安市に対する突っ込みが減るだろうな。それと、東日本大震災に対して真っ向勝負を挑んだ浦安市のGISテクノロジー、つまり地理空間情報を分析する技術というのは、実は、千葉市よりも数段上だと思う。なにせ、全国の他の自治体からも高い評価を受けるくらいだからな。

 

僕: え!? 全国の自治体から?

 

ヤマジロウ: よく考えろ。液状化で街が崩壊するという緊迫した状況で耐え抜いた浦安市のG空間情報技術だぞ? ゴミが落ちているだとか、標識が倒れているとか、その程度の街の不具合の把握くらい、何の困難もない。財政力では千葉市に負けていないし、浦安市内の全ての小中学校にはエアコンが設置されている。

 

僕: エアコンはともかく、浦安市のITって、そんなにすごいんだ。

 

ヤマジロウ: ただ、浦安市の場合には、街の不具合について電話一本ですぐに対応してくれるのに、わざわざオンラインでやり取りする必要があるのかという意見も分かる。ただし、働き盛りの世代が忙しい毎日の中で、公園の不具合を浦安市に報告することができるのは休日がほとんどだ。しかし、休日は浦安市役所の公園担当の課が動いていない。すると、報告ができなくて、不満が溜まる。もしくは面倒で報告しなくなる。すると他の人たちにとって不満が溜まる。そういった悪循環だな。

 

僕: なるほどね。

 

ヤマジロウ: まあ、実際にはAI-OCRやRPAといった市役所の中だけの業務改善かもしれないが、それだって大切なことさ。電子行政の可能性はたくさんあるように感じる。

  


僕: じゃあさ、最近になって、どうして「デジタル・ガバメント」とか、「サービスデザイン」っていう考え方が出てきたのさ?

 

ヤマジロウ: うーん、私の雑学の中で理解している限りでしかないが、おそらく「e-Japan戦略」の中で残った課題を解決するためだろうな。

 

僕: e-Japan?

 

ヤマジロウ: 平成13年、つまり2001年頃に立ち上がった日本政府の戦略だな。すごくないか? 平成13年なんて、ちょっと前のことだと思っていたら、もう20年近く前なんだな。今の若い人たちからすれば考えられないだろうけれど、携帯電話でネットなんて、ほとんど無理だったな。メールが精一杯だった。

 

僕: ほら、家庭だと、パソコンから電話回線にケーブルを繋いで、電話マークをモニターに映して、「ジゴゴ、ジゴゴ、ジゴ、ジコ、キューキュルルルルー」ってインターネットに接続していたよね。

 

ヤマジロウ: そうだな。大学の中のインターネット回線は家庭用よりも速かったので、研究に没頭して外界との触れ合いもない男子大学院生たちは、MOドライブのカセットを手に取って夜中の研究室で頑張ったものだ。ああ、懐かしい。

 

僕: おいおい。

 

ヤマジロウ: ・・・というネット環境だった頃に、「e-Japan」が立ち上がったわけだよ。不思議なことに、この国では、政府が実行して成功した施策についてはニュースにならなくて、失敗した施策についてはニュースになる。それもまたこの国の現状なのだろう。

 

僕: e-Japan って、成功したのかい?

 

ヤマジロウ: 20年近く前に掲げられた戦略を、今になって見ればよく分かる。以下、要旨の一部を引用。

  

e-Japan戦略

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dai1/1siryou05_2.html

 

平成13年1月22日

高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部

 

II.重点政策分野

 

1.超高速ネットワークインフラ整備及び競争政策

(1) 基本的考え方 

(2) 目標 

(3) 推進すべき方策

超高速ネットワークインフラの整備及び競争の促進

情報格差の是正

研究開発の推進

国際インターネット網の整備

 

2.電子商取引ルールと新たな環境整備

(1) 基本的考え方 

(2) 目標 

(3) 推進すべき方策

早急に実施すべき分野

2002年までに達成すべき分野

 

3.電子政府の実現

(1) 基本的考え方 

(2) 目標 

(3) 推進すべき方策

行政(国・地方公共団体)内部の電子化

官民接点のオンライン化

行政情報のインターネット公開、利用促進

地方公共団体の取組み支援

規制・制度の改革

調達方式の見直し

 

4.人材育成の強化

 (1) 基本的考え方 

(2) 目標 

(3) 推進すべき方策

情報リテラシーの向上

ITを指導する人材の育成

IT技術者・研究者の育成

コンテンツ・クリエイターの育成

 

僕: へぇ、国だけじゃなくて民間の努力もあるけれど、e-Japanで考えていたことって、ある程度は実現したんじゃないのかな?

 

ヤマジロウ: 筆頭に挙げられていた「超高速ネットワーク」はすでに実現しただろ。他国の人たちが日本にやってきて、あまりのネットワークの速度に驚くことがあるそうだ。そして、超高速ネットワークを活用して、電車の中で人々がネットゲームを楽しんでいる。駅構内を下を向いて歩きながらYouTubeの動画を楽しんでいる。これが超高速ネットワークが目指した姿だろうか?

 

僕: それだけじゃないでしょ! たくさんの人たちの幸せに繋がっているはずだよ!

 

ヤマジロウ: その通り。例えば、浦安市に住んでいると、市役所にはたくさんの情報が集まる。一人ひとりの市民が生活する上で大切な情報だ。その情報は、浦安市のハイブリッドクラウドに毎日、転送されて、きちんとバックアップが用意されている。そういった膨大な情報を伝達するためには、超高速ネットワークが必要だ。それと、企業が活動する上でも、IoTを活用するためにも、高速通信がないと話にならない場面は多々ある。

 

僕:「電子商取引ルール」とか「人材育成」とかも、上手く行ったんじゃないの?

 

ヤマジロウ: そうだな。ただ、「電子政府の実現」という点では、必ずしも実現が難しかったと言わざるをえない。全てが失敗したというわけではなくて、とても重要なシステムが構築された例もある。だた、予想以上に実現が困難だった理由の一つとしては、技術的な制約だと思う。その当時のICTのテクノロジーでは、要求されたニーズに対して応じることが難しかったという点だな。もう一つの理由としては、電子化によって、必ずしも使い勝手が良くならなかったという点だと思う。例えば、サイトに入力可能なPDFを用意してダウンロードできるようにしても、市役所に行って様式をもらってボールペンで書き込んだ方が手っ取り早いとか。

 

僕: それってさ、完全な形でシステムを作るって大変だと思うんだよ。人の気持ちまで察して手続きを用意するわけだから。

 

ヤマジロウ: さらに、国民なり市民どころか、同業者でさえ面倒なので電子行政のシステムを使わなくて、結局、そのシステムの構築にかけた予算と比べてベネフィットがとても小さいという痛い状況になったようだ。では、行政における電子化を止めてしまってよいものだろうか。海外の先進国は次々に革新的な電子行政に向かって走っていく。このままでは日本だけが取り残されるのではないかと。資源の少ない日本にとって、情報分野での発展は大切な鍵なんだと思う。

 

僕: すっごく大きな目で考えるとさ...大変なんだね。

 

ヤマジロウ: なにそれその他人目線という感がなくはないが、普通に考えればそうかもしれないな。そういったマターについては、そういった職業の人たちが取り組めばいいじゃないかと。

  

僕: でもさ、そうじゃないか。普通の人たちが、そういったお話と触れ合う機会って、どこにあるのさ? 新聞なの? テレビなの?

  

ヤマジロウ: まあ、そうやって行政に突っ込んで何になる? 行政といっても、向こう側にいるのは普通の人間なんだよ。もちろん色々な立場があるけれど、同じ人間だ。

 

僕: うーん、それで、電子行政って、どうなるのさ?

 

ヤマジロウ: 2001年から本格的に始まった「e-Japan」において多くが達成されたけれど、必ずしも達成したとは言えなかった電子政府の実現。そのゴールを考えて、新たな目標が設定されたわけだ。ほら、市役所の書類とかを見ると、「PDCAサイクル」という言葉が出てくるだろ? 「Plan、Do、Check、Action」というサイクル。最近では、「PDCAサイクルは時代遅れ!」みたいなアフィリエイトサイトとか、博士号を持っていない学者気取りの学部学生のネット記事を見かけるが、計画を実行して見直しをすることの何が悪いのだと私は言いたい。PDCAサイクルを馬鹿にする人たちというのは、そもそもそのサイクルの大切さを理解していないと思う。それはともかく、e-Japan戦略という構想は、長い期間で考えれば、Doの後のCheckとActionというステージに差し掛かったわけだ。

 

僕: ふーん、で、どうするわけ?

 

ヤマジロウ: そして、日本政府としては、「デジタル・ガバメント推進方針」を打ち出して、電子政府の実現に向けて再び舵を切ったわけだな。電子政府の中には、もちろんだが浦安市といった自治体も含まれていると思う。

 

僕: へぇ、でもさ、なんとか方針って、本当に上手くいくわけ? ほら、浦安市でも、なんとか総合計画とか、そういったことがあったりするでしょ?

 

ヤマジロウ: それらのプランが絵に描いた餅だと言いたいのか? それらのプロジェクトのために、一体、どれだけの父親たちが残業を続け、奥さんたちからハードヒットを受け続けているのか、お前には分かるのか? 深夜残業を耐え抜くために、一体、どれだけの数のカップラーメンが消費されたのか、お前には分かるのか?

 

僕: 分かるはずないでしょ? それが仕事なんだから、責任をもってやればいいじゃないか。

 

ヤマジロウ: まあとにかく、浦安市役所の職員も含めて、政府の方針を読めばいいと思う。以下、引用。

 

政府CIOポータル - Government Chief Information Officers' Portal, Japan

https://cio.go.jp/

  

政府CIOポータルについて

本サイトは、内閣情報通信政策監(以下、政府CIO)が推進する政策に関するwebサイトです。政府CIOは、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室(以下、IT総合戦略室)の室長を兼務することから、本サイトは、IT総合戦略室のwebサイトとして整備されています。

  

デジタル・ガバメント実行計画

https://cio.go.jp/node/2422

 

2016(平成28)年12月に官民データ活用推進基本法(平成28年法律第103号)が成立し、データ流通環境の整備や行政手続のオンライン利用の原則化など、官民データの活用に資する各種施策の推進が政府の取組として義務付けられました。2017(平成29)年5月には同法及び高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成12年法律第144号)に基づく取組を具体化するものとして、「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(平成29年5月30日閣議決定)(以下「IT宣言・官民データ計画」という。)が策定されています。

 

特に、IT宣言・官民データ計画の重点分野の一つである電子行政分野における取組については、2017(平成29)年5月に「デジタル・ガバメント推進方針」(平成29年5月30日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議決定)が策定されました。本方針では、本格的に国民・事業者の利便性向上に重点を置き、行政の在り方そのものをデジタル前提で見直すデジタル・ガバメントの実現を目指すこととされています。

 

本計画は、官民データ活用推進基本法及び「デジタル・ガバメント推進方針」に示された方向性を具体化し、実行することによって、安心、安全かつ公平、公正で豊かな社会を実現するための計画です。また、IT宣言・官民データ計画に掲げられた重点分野の一つである電子行政分野を深掘りし、詳細化した計画となっています。

 

僕: あれ? 思ったよりも読みやすいよね。基本的な質問なんだけれど、「CIO」って、なんだい?

 

ヤマジロウ: 「Chief Information Officer」の略で、日本語だと「最高情報責任者」だな。日本政府だと、「内閣情報通信政策監」という役職名が付いている。「ポータル」という言葉は「門」や「入口」という意味だ。つまり、「政府CIOポータル」という言葉は、内閣情報通信政策監を中心とした取り組みを知るための「入口」という意味だな。

 

僕:へぇ、でもさ、こんなにたくさんの文章を引用しちゃって、大丈夫なの?

 

ヤマジロウ: このサイトは、「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」の表示がある。二次利用も可能なのだよ。

 

僕: なんだかさ、この取り組みって、役人っぽくないよね? すごくオープンだよね。ほら、役所って、もっと閉鎖的で、一般人と考え方が違う感じがしたんだけれど。

 

ヤマジロウ: 多くが役所じゃない出身の人たちが考えているんだから、当然だろ?

 

僕: え? 民間の人たちってわけなのかい?

 

ヤマジロウ: 私は政府CIOポータルのステマをやるつもりはないが、政府のCIO、つまり、内閣情報通信政策監は、そもそも役所で育っていない。民間企業の出身者で、しかもイケメンだ。

 

僕: マジで!? あ、ほんとだ、「舘ひろし」さんかと思ったよ!

 

ヤマジロウ: ほんとにイケメンだな。しかも京都大学卒で、米国の大学院を修了した秀才だ。若い頃はたくさんの女性からモテたかもしれない。それはともかく、CIOを補佐する「CIO補佐官」の多くも民間の出身だ。

 

僕: CIO補佐官? すっごくカッコいい肩書だよね。

 

ヤマジロウ: 情報分野の凄いところは、民間の出身者を積極的に行政に招いて手腕をふるってもらうということだと思う。いや、そういった余裕ではなくて、もはや民間の人たちに助けてもらわないと動けないという危機感や覚悟さえ感じる。浦安市役所の職員でも、本気になればCIO補佐官になれたりするんだがな。

 

僕: え?

 

ヤマジロウ: それはともかく、ここまで来て、ようやく「デラックスちばけん」が掲げる「デザイン思考」という言葉にたどり着くわけだよ。

 

僕: 「デラックスちばけん」じゃなくて、「地域デザインラボ@ちば」だろ?

 

ヤマジロウ: やはり「デラちば」の方が呼びやすい。以下、政府CIOポータルから引用。

  

サービスデザイン思考によるサービス・業務改革(BPR)を進めよう

https://cio.go.jp/node/2421

  

行政による国民、企業に向けたこれまでのサービスは、必ずしも利用者のニーズに沿っているとは言えないものがあります。この状態から脱却するために、「デジタル・ガバメント推進方針」(平成29年5月30日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議決定)においては、利用者中心の行政サービス改革推進の考え方として、「サービスデザイン思考」を取り入れるとしています。

  

「サービスデザイン思考」とは、サービスデザインを進めていくに当たり、概念や方法論などを整理したものなのですが、これはどういうことなのでしょうか?ちょっと言葉を2つに分けて考えてみましょう。

 

サービスってなに?

まず、行政による「サービス」についてです。ここでは、公共サービス基本法(平成21年法律第40号)第2条に規定する公共サービス及びそのサービスに係る業務を実施する職員等が業務を円滑に行うための仕組みと定義します。簡単に言えば、国民生活の安定と向上のために、国や地方自治体等が、国民や企業に対して何かをする、といった行動そのもののことです。

  

デザイン思考ってなに?

次に、「デザイン思考」についてです。「デザイン思考」とは、サービスやビジネスを構築する際に、デザイナーがデザインを行う際の進め方や考え方を適用していこうというもので、主観を重視し、利用者中心に考えていきましょうというものです。「サービスの利用者」がどのように振る舞い、どのように考えているかを理解した上で、利用者体験全体をデザインする必要があります。

 

また、まずは作って試してみようというのも特徴です。もし作ったものに問題があっても、そこを修正してさらによいものにしていけばよい、という考えです。最初から100点満点のサービスが提供できればよいですが、なかなかそうはなりません。例えば、まずは60点のサービスを提供し、次に残りの40点に対して60点の改善を行えば84点となり、次に残りの16点に対して60点の改善を行えば93.6点となります。60点であっても、それを繰り返すことで高得点となります。まずはチャレンジし、次々に改善をしていこうということです。

 

サービスデザイン思考ってなに?

このように言葉を「サービス」と「デザイン思考」に分けて考えましたが、整理してみましょう。「サービスデザイン思考」とは「サービス」+「デザイン思考」であり、「サービスの現状における課題を、デザイン思考を用いて解決しよう」ということです。

 

サービスが目的どおり機能し、利用者に満足してもらうためには、提供者の視点で用意した手続を利用者に「使わせる」のではなく、サービスの受け手側の立場を考慮した調査・分析から得られる利用者の「本質的なニーズ」に基づき、サービス・業務を設計・開発した上で、利用者に「使っていただく」という意識、これが「サービスデザイン思考」です。

 

「サービスデザイン思考」によるサービス・業務改革(BPR)は国際的な潮流にもなってきています。

 

サービスデザイン実践ガイドブック(β版)

https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/guidebook_servicedesign.pdf

  


僕: あのさ、「必ずしも利用者のニーズに沿っているとは言えないものがあります。」っていう部分...

 

ヤマジロウ: そう、この部分がe-Japanでネックとなった電子行政の課題かもしれないな。役所の常識が、必ずしも役所の外の常識とは言えないという点だろう。ほら、「お役所仕事」という言葉があったりするだろ? そういったギャップに気づいて、役所の外の人たちに参加してもらって、積極的に変えようという取り組みは大切だと思うんだ。しかし、なぜかこの国では、そういった真面目なことが...

 

僕: まあとにかく、「サービスデザイン実践ガイドブック」って、デラちばのサイトでも隅っこで紹介されていたよね? お役所目線を捨てて、サービスを使っていただくという企業人の目線って、すごく大切かもしれないね。

 

ヤマジロウ: おそらくなんだが、デラちばでデザイン思考というキーワードが取り上げられたのは、政府の動きに呼応した結果だと思った。千葉県の限られた数の地方公務員の人たちは、日本政府がデジタルガバメントに向かって舵を切ったことを知ったのだろう。そして、デジタルガバメントを達成するには、政府が旗を振るだけでは足りなくて、市民と行政とのタッチポイントであり、インターフェイスとなる自治体職員の力が必要なんだ、いや、自治体職員が変わらなくてはならないと察したのだと思う。しかし、県庁にしろ、市役所にしろ、情報担当課という縦割り行政の壁があって、なかなか堂々と取り組みを始めることが難しいと判断したのだろうな。だから、自主研究グループとして集まって、全くの無給で働いているわけだ。熱いと思わんかね?

 

僕: 立派だと思うよ。なかなかできないね。

 

ヤマジロウ: 私には、霞ヶ関、つまり中央省庁で働いている先輩や後輩がいたりする。県庁や市役所の人たちは、深夜の霞ヶ関に行って庁舎を眺めてみると勉強になる。真夜中なのに煌々と明かりが付いていたりする。「給料を時給に換算すると、コンビニのバイトと同じくらいだよ」と言っている人さえいる。もしも、霞ヶ関の中の人たちが県庁や市役所で働いていたら、業務能力でトップクラスの人たちだと思う。そういった優秀な人たちがフルパワーで働いてさえ、深夜まで残業を続けなくてはならないくらいの業務量があるということだ。電子行政が必要な理由も分かる。

 

僕: そんなに辛かったら、市役所に転職したらいいじゃないか。

 

ヤマジロウ: 先輩の話だと、実際に自治体の職員に転職する人も珍しくないが、まさに歯を食いしばって激務に耐えている人たちも多いそうだ。それはどうしてなのか? 日本という祖国のために働いているという矜持なのかもしれないな。浦安市役所には、浦安生まれで浦安育ちの職員が多いだろ? 同じ気持ちだと思うよ。

 

僕: ほんと、ありがたいよね...

 

ヤマジロウ: ただ、地方公務員がオフサイトのミーティングで盛り上がったり、副業に精を出す余裕があるのなら、地方交付税交付金を削って、その分の人件費を調整して、自治体の職員の数を減らせばいいじゃないかという意見が出るかどうか。他方、電子行政が進むと地方の役所で人員削減が始まって規模が小さくなるではないかという意見が出るかどうか。

 

僕: でもさ、地方公務員だって労働者なんだから、あまり厳しくするのは良くないでしょ。

 

ヤマジロウ: その通り。普段の街の仕事を行う上で十分だと思っても、いざ自然災害が発生した時には人手がないと対応が難しいという側面もあるだろうし、業務を電子化したとしても人の力が必要になることもある。それと、オフサイトの取り組みでもそうだが、「もっと頑張りたい!」と感じている人たちの頭を押さえつける必要なんて、どこにもないんだと私は思うよ。

 

僕: じゃあさ、デラちばに参加しているチームウラシマのリーダーって、デザイン思考を理解できているのかな? 君的には、「理解できていないはずがない」と言っているけど。

 

ヤマジロウ: 世の中には、ロジカルシンキングが得意な人、ラテラルシンキングが得意な人、クリティカルシンキングとか、アナリティカルシンキングが得意な人。たくさんの人たちがいる。そして、多くの人たちが、自分がどのような思考を得意としているかを、自分では気づいていないと思うんだ。

 

僕: そうだね...自分がどんな考え方なのかって、自分では分かっているようで分かってないというか...

 

ヤマジロウ: 最も理解しやすいように見えて理解しがたい存在、また最もコントロールしやすいように見えてコントロールが難しい存在。それは自分自身だな。鏡があれば自分自身の姿を見ることはできるが、自分自身の考え方は鏡には映らないからな。つまり、自分のことを知ることは、とても難しいのさ。例えば、うちの妻はゴリゴリのロジカルシンカーで、子供がロジックに従わないと腹を立てて怒ったりするが、私が言ってから「ああ、そういえばそうよね」と納得したくらいだった。

 

僕: へぇ。

 

ヤマジロウ: で、チームウラシマのリーダーというのは、非常に優れた生粋の「デザインシンカー」なんだよ。それも、デザインシンキングを学校や職場で身に着けたわけじゃなくて、生まれつきデザインシンキングに特化した人なんだと思う。

 

僕: チームウラシマのリーダーって、デザインシンカーだったの? なにそれカッコいいじゃない。根拠は?

 

ヤマジロウ: そう囁くんだよ。私のゴーストが。

 

僕: まさかの攻殻機動隊風。

 

ヤマジロウ: 本人が気付いているかどうか分からないけれどね。たぶん、今まで生きてきた中で「お前、変わってるね」と言われたことが多々あったかもしれないが、どんな思考であっても、それに特化すると変わった人扱いされるだろうから。そして、彼が「サービスデザイン」の説明を読んだ時には、「そうだ、そうなんだ!」と共感しただろうし、一方で、デラちばでデザイン思考に従って話し合っても「あれ~、それって普通じゃないのか? 色々と考えたのに自分と同じ結論になっちゃったぞ?」と拍子抜けして悩んでいるかもしれないね。

 

僕: え?

 

つづく