「地域デザインラボ@ちば」で千葉県内の公務員さんたちが取り組んでいる「デザイン思考」って、なんだろう? (前編)

 

※注:この物語は、ヒノデダッズムによく出てくる「僕」と「フジヤマジロウ」が延々と雑談を続ける小説の体で書いています。あくまで個人的な考察なので間違っているかもしれませんがご容赦ください。

 


 

僕: あのさ、ちょっと教えてよ?

 

ヤマジロウ: なんだ?

 

僕: 「デザイン思考」って、どんな思考のことなの?

 

ヤマジロウ: いきなりどうした?

 

僕: うん、浦安市役所の職員さんが運営しているチームなんとかのホームページで見かけたんだけど、「デザイン思考」を使って千葉県のことを考えるような公務員さんたちの集まりが立ち上がったみたいだよ。

 

ヤマジロウ: 6時のなんとかのことか? 日本版の「TED」を展開すると思って期待していたら、限られたコンテンツだけで年間1,000円も取られると聞いてがっかりした。それと、疲れた中年男性のようなイラストは、私を含めた千葉県内の多くのオッサンを敵に回している。面白さのアピールではなくて、もっと真摯に、もっと謙虚に。TEDのように各界の著名人が講演を行って、講演者自身の名誉になるくらいのキリっとした演出がほしい。ただ、日本のNPOの場合には一部を除いて寄附における税控除がアレだし、企業のスポンサーという手段も...となるとコンテンツに課金せざるをえないわけで...しかし、それではコンテンツの良し悪しを広報することが難しくなるわけで...そうなると注目を集めるためにも公務員というアピールが必要になり...なかなか難しいな...辛いだろうな...頑張れよ。

 

僕: おいおい、いきなり突っ込むと思ったらジレンマからの励ましかよ。6時のなんとかのことじゃないよ。ていうか、TEDって、なに?

 

ヤマジロウ: 米国ニューヨーク市に本部がある非営利団体。Technology Entertainment Designを略してTED。世界的な講演会「TED Conference」を開催して、インターネット上では無料で動画を配信している。テクノロジーと銘打っているが、実際には様々な著名人がプレゼンテーションを行っている。

 

僕: へぇ。6時のなんとかに似ているね。無料で動画を配信しているんだ。ネットじゃなくて会員として実際に講演を聞きたかったら、年会費って、いくらなの?

 

ヤマジロウ: 日本円のレートに換算すると1年間の会費は...約100万円だな。既会員からの紹介がないと会員になれないそうだ。

 

僕: 年会費が100万円!? 1000円どころの話じゃないでしょ!?

 

ヤマジロウ: 安い100万円もあれば、高い1000円もある。TEDの動画は無料でネット配信されているが、講演会に参加するには高額な料金がかかる。それでも、その場所で話を聞くだけの価値があるということだ。音楽の分野でもそうだろ? 同じような音が聞こえてきたとしても、ライブと録音CDは違う。国際的なカンファレンスに参加したことのある人なら分かるだろう。五感で学ぶというか、強烈なモチベーションがやってくる。自らの存在があまりに小さく感じて自信を失いつつ、一方でその世界が思ったよりも小さいことに気づいてやる気が出てくるというか。

 

僕: TEDねぇ...

 

ヤマジロウ: 最近、私はツイッターだとかフェイスブックだとかブログだとか、そういったネットの世界に疲れてしまったので、半ばネット絶ちをしていたりする。ただし、TEDと浦安人図鑑については毎回チェックして勉強している。

 

僕:だったらどうしてブログをやってるのさ...浦安人図鑑? J:COMのご当地番組?

 

ヤマジロウ: そう、ジョークではなくてガチで勉強になる。浦安人図鑑は、我がまち「浦安」のことを学ぶ上でとても大切だな。浦安のリーダーの皆さんの顔、声、人柄。これらは写真や文章では伝わってこないからな。ただ、インタビューワーの声がうるさく感じるので、ご本人だけのプレゼンテーションを聴いてみたい。それと、浦安市議会の動画も参考になるが、すべて見るのは大変なので会議録でざっと読み流している。重要なテーマについてはキーワード検索だな。あと、議場でのヤジについてもきちんと記録した方が楽しいかもしれない。

 

僕: それにしても...TEDねぇ...

 

ヤマジロウ: 千葉県というのは公務員...といっても行政職の事務職員がほとんどだが、オフサイトで集まって様々な取り組みを行っている。先ほどの6時のなんとかも、多くのメンバーは県庁や市役所の職員だ。では、普通の仕事をやっているだけの公務員と比べて、彼ら彼女らの姿はどのように映る? 今はまだ手探りの段階ではあるが、県のこと、街のことを真剣に考えて頑張ってくださっている。私は、県民として、市民として、そういった取り組みを続ける職員たちに感謝したいし、誇りに思いたい。

 

僕: 落しておいて持ち上げてきたか...

 

ヤマジロウ: そういえば、TEDの動画の中で、そういった公務員を励ましてくれるようなプレゼンがあったな。TEDの中でも有名なプレゼンのひとつだ。TEDは日本語字幕が用意されているので、英語が得意でなくても理解できる。

 

僕: へぇ。

 

Derek Sivers: How to start a movement

 

ヤマジロウ: たった3分間でこれだけ素晴らしい内容を伝えることができるなんて、信じられないな。このTEDトークのテーマは、「ムーブメントを起こすにはどうすればいいのか?」という内容だ。変わったことをしている孤独な人が、どうやってリーダーになるのか。リーダーを生み出すのはフォロワーの力なんだということを学ぶことができる。というか、シヴァーズ氏の講演を生で聴いてみたい。

 

僕:「すごいことをしている孤独なバカを見つけたら、立ち上がって参加する最初の人間となる勇気をもってください」って。

 

ヤマジロウ: そう、リーダーを生み出すにはフォロワーが必要になる。浦安市の公務員が中心となって取り組んでいるチームなんとかにしても、千葉県内の公務員が集まっている6時のなんとかにしても、県庁や市役所で働いている職員から見れば変わったことをしている人たちかもしれない。しかし、県民や市民がフォロワーとしてムーブメントに参加し始めた時、彼ら彼女らは変な人たちではなくて、本質的な意味において地方行政のリーダーにトランスフォームする。しかし...

 

僕: しかし?

 

ヤマジロウ: 彼ら彼女らの取り組みや熱い気持ちが、ほとんどの千葉県民や浦安市民に届いていない気がする。いや、むしろ、県民や市民にとっての地方行政自体がクラウドのような存在になりつつあるのではないかという気配さえ感じられる。

 

僕: クラウドって、コンピューターネットワークのクラウドのこと?

 

ヤマジロウ: そう。「役所の仕事は、役所に勤めている人たちが責任をもってやればいいじゃないのよ。だって、税金から給料をもらって仕事をしているわけなんだから。え? 市民参加? だったら、市役所の人たちは私たちの仕事を手伝ってくれるわけ?」という感じ。自分たちが生活する県や街のことなのだが...地方行政に対して突っ込む感じではないけれど、カウンターを隔てた心の距離が広がっているというか。ただの勘違いかもしれないがな。・・・で、なんの話だったかな?

 

僕: ああ、そうそう、チームなんとかのフェイスブックとかブログとかで見たんだけど、千葉県内の県庁とか市役所の職員さんたちが集まって、「デザイン思考」を使って千葉県のくらしを考えるチームが立ち上がったそうなんだよ。

 

ヤマジロウ: チームなんとか...やっと思い出した。チームウラシマのことだな。あのチームのリーダーとは市民税課のカウンターで何度か挨拶した程度で、別に友人でもないし、やり取りをしているわけでもない。ただ、フェイスブックだけで孤軍奮闘していたので、このチームのサイトを私が立ち上げて、使い方を教えた後で全消去したことがある。その後、彼は、市民税課の係長から課長補佐に昇格したようだが、私には何の報告もないし、その必要もない。浦安市が液状化に襲われた時、彼は地理情報システムを駆使して復旧に貢献した。私は彼に恩返しをしたいと思った。

 

僕: サイトを立ち上げておいて、全消去って、君、鬼だね。

 

ヤマジロウ: コンテンツデータは彼が用意していたし、何事も自分で育てたサイトの方が愛着が出て長続きする。誰かに何かを教えるというのは簡単なことじゃないさ。実際にやってみせることが大切なんだ。現に、彼は、ヒノデダッズムのサイトがみすぼらしく感じるくらいに、スタイリッシュで使いやすいチームウラシマのサイトを完成させ、フル活用している。それと、チームウラシマは何かと目立つので、色々な人たちがフェイスブックで近寄ってきたりする。そういった人たちというのは、チームウラシマのスキルや情報を利用したいだけで、その取り組みを支援しているとは思えない時があるし、チームウラシマがヒノデダッズムをフィーチャーしてくれた時に、横やりで批判的なコメントを飛ばしてくる人もいる。だから、私はチームウラシマと距離を取っていて、あまり関わらないようにしている。まあ、チームウラシマのリーダーが、私のことを誰かに話したら、チームウラシマ自体が消滅する。

 

僕:おいおい、物騒な。

 

ヤマジロウ: 彼は浦安市の職員だ。私は浦安市の市民だ。浦安市には「個人情報保護条例」がある。市議会議員だとかPTA会長だとかがやってきて、彼が私のことについて口を滑らせてコッソリと話してしまったら、コンプライアンス違反で罰を受けることになり、チームウラシマどころの話ではなくなる。

 

僕: ああ、そういうことね。ていうか、君、サイクリングサークルを主宰してるんだから、君のことを知りたければ自転車に乗ってくれば丸分かりでしょ?

 

ヤマジロウ: そうなんだよ。コソコソと私の情報を調べる必要もない。で、なんだったっけ? デザイン思考? ああ、そういうことか。彼なら楽勝だろ。なぜなら...

 

僕: いや、そうとも思えないんだ。むしろ、誰かに向かってサポートを求めているような気がするんだよ。 

 

地域デザインラボ@ちば

https://designlabchiba.jimdofree.com/

 

ヤマジロウ: なぜだ? フェイスブックの投稿を眺めてみても、彼らが悩み苦しみながら活動を続けている感がある。この研究会を開催した翌日にメンバー募集を出しているようだ。いつもは余裕綽綽で様々なイベントを開催しているのに、どうしたのだろう。というか、これは...

 

僕: これは?

 

ヤマジロウ: 地域デザインラボ@ちばの研究会の内容というのは、本当にデザイン思考に基づいているのだろうか?

 

僕: え!?

 

ヤマジロウ: 最初に気づいたのは、デラちばには、6時のなんとかもしくはチームウラシマのメンバーではない県庁もしくは市役所の職員が集まっているということだ。6時のなんとかもしくはチームウラシマで目にした職員には勢いで盛り上がっているようなパーティーっぽい感じがあったが、デラちばの彼ら彼女らはガチだ。目つきだけで分かる。本当に千葉県や市町村のことを想っていることが分かる。熱意もある。いや、むしろ、これからやってくる苦難に立ち向かおうという危機感や覚悟さえ感じられる。しかし...キックオフ会議の様子を紹介している写真において、ホワイトボードに書かれている内容が気になる。デザイン思考で登場するはずのキーワードも、連続したヘキサゴンのフローも見当たらない。既成のデザイン思考よりもさらに上のレベルでデザイン思考について議論しているのか、デザイン思考そのものを勘違いしているのか。

 

僕: ヘキサゴンって、六角形のこと?

 

ヤマジロウ: となると...もしかして「サービスデザイン思考」のことを自治体職員として研究しようとしているのか...国から具体的な方針が出されてから1年も経っていないぞ...いや、確かに市民とのタッチポイントを考えると自治体職員だからこそ...だとすれば、千葉県どころか日本全国の自治体の中でも先駆け的な存在になる...しかし、現時点ではバズワードに近いデザインシンキングという概念からエンドツーエンドのシステムまで持ち込むことができるかどうか...そこにAIやIoTまで組み込むわけだから...

 

僕: あのさ、デザイン思考の前にヤマジロウ思考に入ってるよ。分かりやすく説明してくれないかな?

 

ヤマジロウ: いくらで?

 

僕: お金を取るのかよ?

 

ヤマジロウ: 冗談だ。感謝の気持ちだけで十分だが、物事を分かりやすく説明するというのは、難しく説明するよりも大変なのさ。しかも、ヒノデダッズムのサイトのアクセスを解析すると、定期的に習志野エリアからユーザーがやってくる。このユーザー、チームウラシマのリーダーだろ? 浦安市教育委員会の鈴木教育長ばかりがヒノデダッズムでフィーチャーされているのに、どうして最近のヒノデダッズムはチームウラシマをスルーするのだ寂しいだろ少しはいじってくれよ的な。

 

僕: いや、そうじゃなくて、本当に困っているように見えない?

 

ヤマジロウ: 見える。おかしいな...彼がデザイン思考を理解できていないはずがないんだ。なぜなら...

 

僕: じゃあさ、そもそも、デザイン思考ってなんなのかを説明してよ。新しい考えなの?

 

ヤマジロウ: 私が大学院の博士課程で学んでいた頃にはすでに耳にした思考だから、歴史としては古いだろうな。ただ、ビジネスシーンで注目されてきたのは5年くらい前、登場してきたのはさらに5年くらい前だろうか。デザイン思考、というよりも「デザインシンキング」という名前の方が分かりやすいが、要は考え方の一つだ。「シンキング」と聞いて何を想像する?

 

僕: ポジティブシンキング。

 

ヤマジロウ: ...まあ、そうだな。それも考え方の一つだな。大学院で博士号を取得した人たちというのは...色々と訳あって量産された博士たちはどうか分からないが...頭の中でいくつかのシンキングを走らせたり、取捨選択しながら課題について考え、その答えを見つけるようにトレーニングを受ける。まあ、特訓という形ではないが、指導教官や先輩から厳しく指摘されることもあるし、それらを使えないと話にならないということもある。

 

僕: いくつかのシンキング?

 

ヤマジロウ: よく知られているのが、「ロジカルシンキング」。日本語だと論理的思考。この思考についてはあまり説明する必要もないだろうね。筋道を立てながら論理的に考えを深めていく思考法。Aという点から先に考えようとした時、その先に「B」と「B'」の選択肢があったとすると、「A → B」なのか「A → B'」なのかを考える。「A → B'」を選択した時、その先に「C」と「C'」の選択肢があったとすると、「A → B' → C」なのか「A → B' → C'」なのかを考えるといった感じ。課題から出発して前向きに考える場合と、問題が生じてから後ろ向きに考える場合があったりする。後ろ向きのロジカルシンキングの場合には、要素を分解して選択肢をさかのぼる形になる。それと、現役の保護者だからこそ分かるが、小学校の先生たちはロジカルシンキングが苦手な場合が多いように感じる。

 

僕: ロジカルシンキングね。

 

ヤマジロウ: それと、「ラテラルシンキング」。日本語だと水平的思考かな。論理的に考えを積み重ねていくのではなくて、むしろ既成の概念にとらわれずに多面的に考える思考のこと。ロジカルシンキングが垂直方向の思考だとすると、ラテラルシンキングは水平方向の思考だと言われる。A → B → Cのようにロジックに進まなくても構わなくて、A → B = G → C = D = Zのように、結論が複数あっても構わない。

 

僕: ロジカルじゃなくても構わないってこと?

 

ヤマジロウ: そう、むしろロジックを外す感じだな。既成概念を打ち破らなくてはならないクリエイティブな人、それと、コメディアンやアーティストの中にもラテラルシンカーがたくさんいる。それと、ロジカルシンキングの場合にはその人の頭の中での話だから、ロジック自体が間違っていることもある。そういった時、様々な要素を頭に入れておいて、時間の経過や状況の変化、もしくは何かの拍子に点と点が繋がって線になることがあるだろ? 我が子を育てていると分かるが、子供たちの発想というのは大人が予想できなくて、ラテラルシンキングを使っているのではないかと感じることさえある。親がロジカルに、子がラテラルに考えるので、子の考えが分からなくて親が疲れる。逆もまたしかり。子供たちと触れ合っているからなのか、小学校の先生たちはラテラルシンキングが得意だな。

 

僕: ラテラルシンキングね。

 

ヤマジロウ: それと、「クリティカルシンキング」。これは批判的思考。目の前の物事について分析して、その問題となっている部分を見つけて批判する。完璧な物事というのはないので、どこかに問題が隠れていたり表面化しているわけで、そういったところを見つけて突く。

 

僕: なんだか嫌な感じの思考だね。性格が悪いというか。

 

ヤマジロウ: 批判といっても、罵倒したり貶めるわけではなくて、問題点を見つけてアドバイスするような思考かな。それと、相手を攻撃しない形で一緒に問題を考えたいとか、解決策を教わりたい時にも使うから、決して喧嘩的なシンキングでもないさ。本人が気付いていない問題点を指摘するということは、全体で考えれば得だったりもする。自分でうんうんと頭を捻らなくても、サクッとアイデアが飛んでくると時間と労力の節約にもなる。米国では小学生の時からクリティカルシンキングを学ぶそうだ。国際的な舞台では外国人からの批判というのは非常に強烈で、感情的にならずに切り返すわけだ。むしろ、日本人のように沈黙が美徳ではなくて、意見を言わない人は何か企んでいるとか、そもそも考える力がない無能という判定を受けたりもする。もちろんビジネスシーンでは黙っていた時の方が良い場面も多々あるし、万能ではない。

 

僕: 市議会議員とか、PTAの役員とかで、クリティカルシンキングが得意な人っているんじゃないかな?

 

ヤマジロウ: 市議会議員については政治的なマターが関わるのでノーコメントだけれど、クリティカルシンキングが得意な保護者は珍しくないね。PTAの集まりで、段取りとか仕切りとかについて文句ばかり言う人がいたりする。そういったクリティカルシンカーから指摘を受けた時、どうすればいいか分かるかい?

 

僕: え?

 

ヤマジロウ: クリティカルシンキングというか、批判ばかりする人というのは逆質問に弱い。自分に批判が飛んできた時に、ロジカルシンキングで切り返すことができればいいけれど、ブーメランのように飛んできて唖然とする感じ。「なるほど、素晴らしいご指摘ありがとうございます。ただ、そのご指摘の中で、私なりに分からないことがあります。〇〇〇をどうするかという点です。その点について、お教えいただけないでしょうか?」と切り返す。すると、しばらく沈黙してからロジックのずれた意見が出てきたりするんだよ。サッカーだとキーパーがボールを弾いて宙に浮いた状態だな。そこに対して、今度はクリティカルシンキングで突っ込み返す。その時には、相手のロジックの穴を見つけて突く。これは外国人が相手でも同じだよ。

 

僕: マジで? でもさ、PTAの集まりが終わってから批判されるんじゃないの?

 

ヤマジロウ: 私の経験則でしかないけれど、井戸端会議どころか、ツイッターで罵倒されるかもしれないね。

 

僕: えっと、ロジカルシンキング、ラテラルシンキング、クリティカルシンキングだね。

 

ヤマジロウ: それと、コンセプチュアルシンキングとか、アナリティカルシンキングとかもある。

 

僕: もう、お腹、いや、頭一杯だよ。博士って、すごくたくさんの思考を切り替えてるんだね。

 

ヤマジロウ: それと、あばれはっちゃくシンキングとか、一休さんシンキングとか。

 

僕: いや、逆立ちしたり、座禅してまで考えたくない。

 

ヤマジロウ: 彼らのように考え事をする時には目をつぶった方がはかどることはすでに根拠があって、実際に論文が出ているさ。そして、ようやく、デザインシンキングの話が始まる。

 

僕: 長いよ。

 

ヤマジロウ: デザインシンキングという思考方法は、私が大学院生だった頃でも学んだくらいだから、20年以上前にはすでに発案されていたはずだ。デザインシンキングというのは、あらかじめ考える段階を設計しておいて、それぞれの段階をステップバイステップで進みながら考えるという思考方法だったと記憶している。

 

僕: 具体的には、どんな段階なの?

 

ヤマジロウ: 海外のサイトを調べてみると、以下のような段階がポピュラーになっているようだ。昔はもっとたくさんの段階があったような気がするが、厄年を越えて記憶が怪しくなってきた。

 

① Empathize

② Define

③ Ideate 

④ Prototype

⑤ Test

 

僕: さっきの六角形って、どういう意味?

 

ヤマジロウ: 「デザイン思考」で画像検索すれば分かる。それぞれのキーワードがヘキサゴンの図形の中に入っていて、それらが繋がったような不思議な図形ばかりがヒットする。別々の人たちが色々なコンセプトを広めたら、別々の画像になるだろ? 裏を返せば、そういったコンセプトを広めた人たちがいるということさ。

 

僕: へぇ。

 

ヤマジロウ: 最近の説明では「デザイナーの思考」という定義が目立つ。当時は、「デザインシンキングというのは、日本の職人や匠の考え方にとても良く似ているよ。創意工夫が得意な日本人にとっては自然なことだよ」と教わった気がする。しかし、日本語でデザイン思考とかデザインシンキングについてググると大変なことになっている。

 

僕: どういうこと?

 

ヤマジロウ: カレーライスとかラーメンのような。インドのカレーや中国の拉麺が日本に入ってきた時のように、デザインシンキングが日本に入ってきた時点で形が変わって、日本版のデザインシンキングに対してさらに日本人が創意工夫で独特の味付けを加えているような。

 

僕: 外国から日本にやってきて、独自の進化を遂げているって感じなのかい?

 

ヤマジロウ: しかも旨い。

 

僕: へぇ。良いことじゃないか。

 

ヤマジロウ: どの分野でもそうだけれど、日本語のネット検索というのはアフィリエイトブログやまとめサイトなどに埋め尽くされて、もはやカオスに近い。なので、私は、政府や自治体、大手企業のサイトを見て確認することにしている。そして、有名な企業のサイトでは、デザイン思考について以下のように定義されている。以下、引用。

 

デザイン思考 :デジタルマーケティング コラム|富士通

http://www.fujitsu.com/jp/solutions/business-technology/intelligent-data-services/digitalmarketing/column/column015.html

 

「デザイン思考(Design Thinking)」は、アメリカのデザインコンサルティング会社IDEO(アイディオ)が、デザイナーの感覚と手法をビジネスに利用できるように体系化したものです。

 

僕: デザイナーの感覚? 君さ、とても優秀なデザイナーと知り合いだよね? 彼って、本当にデザイン思考で作品を生み出していると思う?

 

ヤマジロウ: うーん、デザインシンキングというよりも、芸術的な才能というか、一瞬で答えが出たり、誰もが共感する美意識をひらめくというか。ただ、確かにデザインシンキングがデザイナーの考えに基づくと言っている日本語のサイトがほとんどだ。デザイナーの感覚とか手法というよりも、むしろステップバイステップに、そして拡散してから収束するような思考だったような気がするんだが。

 

僕: じゃあさ、カレーライスがインド、ラーメンが中国から来たんだったら、デザインシンキングがやってきた国の人の説明を聞いてみたら?

 

ヤマジロウ: そうだな。デザインシンキングをビジネスに取り入れたのは、研究機関や行政機関ではなくて、「IDEO」(アイディオ)という米国のデザインコンサルタント会社だったのか。なるほど、最近の日本のコンサル企業が一斉にデザイン思考を取り上げたような気がするのはそういうことか。

 

僕: まあ、ビジネスということもあるし、新しいテーマとかコンセプトって、大切だろうし...

 

ヤマジロウ: それが人の幸せにつながるのであれば、大いに素晴らしい思考だな。そういえば、IDEOのCEOがTEDでプレゼンをしていたな。

 

僕: 聞いてみよう。

 

ヤマジロウ: なるほど、彼は元々、工業製品のデザイナーで、そこからコンサルタントになったわけか。だから、デザインと思考について詳しいのか。うーん、ただ、デザインシンキングとは何かということが分かりにくいな。ロードバイク乗りにとっては「やまめ乗り」を教わった時のような感じだ。

 

僕: 日本語で読んでも難しいね。

 

ヤマジロウ: デザインシンキングの中に、定義が曖昧なバズワードがかなり含まれていて、ロジカルシンキングが途中で止まってしまう。しかし、ラテラルシンキングで受け止めようとしても、ポイントを外されてしまうような。なるほど、国内の市役所でも類まれな才能を持っているチームウラシマのリーダーでさえ、デザイン思考を完全には理解できていないと感じるのはそういうことか。

 

僕: でもさ、ブラウンさんのお話って、とても大切な何かを感じるんだよ。デザインシンキングって、方法論でしょ? でもさ、「真心」というか、人として大切な何か。

 

ヤマジロウ: たしかにそうだな。シンキングというよりも、対象となる相手の気持ちに立って考えるという思考。そうか、最近の日本の行政でデザイン思考が注目されているというのは、そういうことなのか?

 

僕: なにさ?

 

ヤマジロウ: デザインシンキング自体はかなり古くから言われていた考え方だ。しかし、最近では、その思考方法にユーザー目線の要素を追加して、ビジネスで使えるように改良したわけか。そして、これからは行政に使うということだな。デザインシンキングがあるから行政に応用しようという話ではなくて、必要な方法論を探した結果として、そこにデザインシンキングがあったというわけか。日本人には自然と備わっているはずなのに、行政において足りないと指摘され続けていた要素が、最近のデザインシンキングに含まれている。

 

僕: 日本人に備わっているはずなのに、行政に足りないと指摘されてきたこと?

 

ヤマジロウ:「Human-centered design」。

 

つづく