広報うらやすを見て、自分は思い出した。水害のリスクを抱える街で生活していることを (前編)

 

※注:この物語はヒノデダッズムによく出てくる「僕」と「フジヤマジロウ」が延々と会話を続ける小説の体で書いています。

 

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ヤマジロウ: おい。

 

僕: なになに?

 

ヤマジロウ: 誰だ? フジヤマジロウが電車通勤で疲れ果てて死にそうになったという根も葉もない噂を流しているのは!?

 

僕: ほんと!? 毎日、ロードバイクで突っ走りながら通勤しているところをたくさんの友達に目撃されてるよ!?

 

ヤマジロウ: 全く、どこの馬の骨だ!? ネットで発信している輩がいるそうだぞ!

 

僕: あ、あのさ...その発信源って、君じゃないの?

 

ヤマジロウ: なるほど。「人類の最大の脅威というのは、同じ人類」ということか。SF映画でよくあるパターンだな。

 

僕: スケールを広げすぎでしょ。

 

ヤマジロウ: 「自らに迫ってくる恐怖の正体を探っていったら、自らにたどり着いた」というサイコホラーでよくあるパターンだな。ああ怖い。

 

僕: ホラーじゃないでしょ。

 

ヤマジロウ: 四十路に入って、五十路が見えてきて、ようやく分かってきたことがある。自分が生きている過程で、実にたくさんの人たちに教え導いていただき、励まし助けていただいた。あまりに多くの方々にお世話になったので、足を向けずに眠ろうとすると、立って寝なければならない。そして、その理由が分かった気がする。

 

僕: 支えてあげないと、生き急いで本当に早死にしそうだね。

 

ヤマジロウ: そうか、だから、妻に結婚を申し出た時の返事が、「仕方がないから、保護してあげる」だったのか。「結婚」ではなくて、「保護」という意味がようやく分かった。

 

僕: あはは!

 

ヤマジロウ: 自分は常々思う。文武両道で人徳も人脈もあるような超人なんて稀有だ。人は誰しも個人のレベルでの総力には限界がある。他者よりも優れた力があれば、劣っている力もあることだろう。それが個性であり多様性だと言葉では分かっていても、人は時に喜び、人は時に悩む。

 

僕: どうして、悟ったような一般論に持ち込むのかな?

 

ヤマジロウ: そして、そのような個のレベルの限界や優劣というのは、人だけではなくて街のレベルでも存在するのではないかと、四十路になって思う。ああそうそう、今回の雑談のテーマは「水害」だ。極めて真面目な話なので、笑いを取りにいかないし、笑って話せる話でもない。嫌なら読まなければいい。大切なことだとは思うが、浦安の子育て世代の中には関心がない人もいることだろう。

 

僕: おいおい、フジヤマジロウ小説には珍しいシリアスモードだね。普段は中二病全開で行くのに。

 

ヤマジロウ: そうだ、今回は中二的な話は封印し、シリアスモードで行く。さっそくだが気分を盛り上げるために、この曲を聴こう。

 

僕: おい、これ、「進撃の巨人」のサウンドトラックじゃないか。ふざけないでよ。

 

ヤマジロウ: ふざけているわけではない。聞けば分かる。

 

僕: ・・・・

 

ヤマジロウ: ・・・・

 

僕: なんだろう、この曲、すごく気分が重いよ。両胸の辺りから...目の奥まで...何かがせり上がってくるような...

 

ヤマジロウ: 「Attack on Titan」という曲だ。大きな壁に囲まれた街で平穏に生活する人類。壁が壊れることなんてありえないと安心していたところに、超大型巨人がやってきて壁を破壊し、獰猛な巨人が街に雪崩れ込んできて、街が崩壊する。

 

僕: 救いようがない残酷さというか。絶望感というか。

 

ヤマジロウ: 進撃の巨人という作品は、たくさんの人たちに大きな衝撃を与えたが、その理由は何なのか? 自分なりには人間の脳の中にある「恐怖」を響き寄せたのではないかと思う。

 

僕: 恐怖?

 

ヤマジロウ: ホラー映画のようなダイレクトな恐怖ではなくて、もっと社会的で高次の恐怖。人が生きていく中で何を幸せと考えるか、それは人それぞれだろう。自分なりには、穏やかで平凡な日常を過ごすことができる生活。それが幸せの大きな柱だと信じる。家族の笑顔、見慣れた街の姿。人は記憶によって自分であり続ける。ので、人が生きていくためには、たくさんの記憶が必要になる。

 

僕: 何気にミカサのオマージュが。

 

ヤマジロウ: 思い出の場所の記憶でさえ、自分の一部に他ならない。そういった幸せが一瞬にして崩壊する恐怖。同時に、自分たちが悪いことをしたわけでもないのにやってくる脅威。抗うことができない無力感と悲しみ。お前だって思い出せるだろう?

 

僕: 東日本大震災の液状化。思い出したくないけどね。辛かったよ、本当に。ライフラインの大切さ。人と人との絆の大切さ。液状化でたくさんのことを学んだけれど、仕事に行くときには見慣れた街の風景だったのに、歩いて新浦安に帰ってきたら陸橋は落ちているし、地面は砂泥だらけ。たくさんのものが傾いてしまっていて、悪い夢でも見ているんじゃないかって思った。

 

ヤマジロウ: それと、自分の場合には、実際に故郷が水害に遭って街が崩壊したことがある。こんなに立派な堤防が決壊するとはと愕然とした。たくさんの人たちが苦しみ、涙した。いつの日か、我が子たちを連れて行こうと思っていた神社も鳥居を残して流された。子供の頃にこの土俵で相撲を楽しんだとか、若き日にここから神輿をかついで出発したとか。そういった思い出の場所が消え去った。いつの日か、自分の子供の頃の思い出を我が子たちに話そうと思っていた場所も姿が変わってしまった。その記憶は自分の頭の中と色褪せた写真の中にある。

 

僕: 辛いよね...

 

ヤマジロウ: では、それまで、行政や地域住民はどう感じていたか。「水害が来るかもしれない」と聞いても、多くの人たちは気にもせず、関心もなかった。滅多に来ないから、心配しても仕方がないとか。杞憂という言葉もあるくらいだからな。その自治体の職員においても、災害に対して本気になっていたのかどうか。仕事として防災の手順を確認していたようだが、最悪の事態を想定しておらず、後手後手の対応だった。そして、想定していないことが発生すれば「想定外」だと。想定していないということは、ぶっつけ本番で、その場の判断で考えるしかないということだ。結果、その自治体には大きな悲しみの記憶と現実的な負債が増えてしまい、職員の給料も減ったことだろう。

 

僕: 最近の新浦安には、液状化を経験していない若いお父さんやお母さんも引っ越してきているよね。あれから長い月日が流れたと思うんだけど、フラッシュバックする時があるよ。

 

ヤマジロウ: 市役所の中でも、液状化という修羅場を経験した職員が少しずつ定年退職し、あの惨事を知らない若手も増えてきたようだ。それと、最近、広報うらやすのとあるページを見ていて、ふと、昔のことを思い出した。液状化の時に水道が止まって、たくさんの空のペットボトルを背負って公園まで行った時のことだ。小さな我が子をベビーバスで風呂に入れてあげたいと、水を汲みにまわって、その時は必死だった。そこに、一人のご老人が自転車を押しながら歩いてきた。

 

僕: 新浦安の人じゃなかったよね。

 

ヤマジロウ: 彼は元町の人で、かなりお年を召しておられた。彼の住まいは無傷だったようだが、液状化で崩れた街並みを眺めながら、何かを思い出していたような感じがあった。そして、自分は自嘲気味に彼に言った。「こんなことになるのなら、元町の方に住んでおけば良かったですね」と。

 

僕: 元町の方は液状化の被害が小さかったからね。

 

ヤマジロウ: ただ、去り際に彼が残していった言葉が気になった。

 

「元町だって、安心じゃないんだよ」

 

僕: 不思議だね。どういう意味なんだろう。

 

ヤマジロウ: そう、不思議だった。彼の目に浮かんでいたのは、「あー、俺が住んでいるところは無事だったよ」という安心感ではなかった。まばたきの回数が減って、涙が浮かぶような。そのご老人の脳の中で封印されていた恐怖がフラッシュバックしたような。一体、彼は過去に何を知り、今、何を思い出しているのだろうかと、自分は不思議に感じた。

 

僕: 何を思い出したのだろうね。

 

ヤマジロウ: それと、「元町だって、安心じゃないんだよ」という去り際の言葉の意味が分からなかった。新浦安の中町や新町に液状化のリスクがあることは身をもって知った。元町に何があるのか? 活気があって、楽しい場所ではないか。

 

僕: そうだよね。漁師町の時からの歴史もあるじゃないか。

 

ヤマジロウ: そう、その理由が分からなかった。そして、浦安市が配布した広報誌を見て、自分は何かを思い出した。

 

広報うらやす No.1101 2018年(平成30年)7月1日発行

 

水害からまちを守る ~道路冠水予測マップ~

 

http://www.city.urayasu.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/022/675/koho1101_1-3.pdf

 

僕: ふむふむ。大雨が降ると、浦安全体が冠水して水浸しになるってことなんだ。浦安の水害のことは浦安市内の市民全体で考えることで、浦安市が対策に取り組んでいるよってことなんだね。広報うらやすって分かりやすいね。勉強になったよ。

 

ヤマジロウ: ・・・・

 

僕: あれ? どうしたのさ?

 

ヤマジロウ: ・・・・

 

僕: ねぇ、もしかして何か怒ってる?

 

ヤマジロウ: お前は、このマップデータを見て、それしか感じないのか?

 

僕: 広報うらやすを見て、何を心配しているのさ。

 

ヤマジロウ: 広報うらやすにおいて、水害をテーマとしてデータを市民に伝える。それは大切なことだ。しかし、このデータは...厳しい指摘を投げかけようとしているのではなくて、その背景にもっと大きな課題があるはずなのに、どうしてこうなのか。それらの情報はすでにネット上で公開されているが、ネット上では情報が断片になっていて、市民にとって分かりやすい形でまとめられているとは思えない。どうして積極的に伝えようとしないのか?

 

僕: ええ? なんなのさ?

 

ヤマジロウ: 広報うらやすのデータマップを見ていて、すぐに気づくことがある。ポンプ場や排水機場の分布だ。これらの設備は、街の中に溜まった雨水を地面の外、つまり川や海に排出するための設備なのだろう。浦安の場合に水を排出する場所は河川が中心になるのだろうか。しかし、それらの排水設備が浦安市全体にまんべんなく配置されているのではなくて、当代島地区、猫実地区、堀江地区。つまり、埋め立て前から浦安市に存在していた元町エリアに集中している。

 

僕: あれ? ほんとだね。僕たちが住んでいる日の出地区には、ポンプ場も排水機場も水門もないんだね。新町全体に何もない感じがするよ。地面の下に雨水を流す設備があるのかな?

 

ヤマジロウ: それも大切な部分だ。どうして、元町エリアにポンプ場や排水機場が集中しているのか。元町において過去に設置され、新浦安では地理的もしくは技術的に必要がなくなって、そのまま元町に残っているという過去の遺物ではなさそうだ。サイクリングの途中で見かける排水設備は、どこもかしこも使わずに放置して朽ちていくのかなという印象があった。しかし、実際には老朽化しているだけで、使っていたのか。

 

僕: それとさ、こんなにポンプ場や排水機場が元町に集中しているのに、大雨が降った時の冠水の状態って、本当に広報うらやすの記事みたいになるのかな? もっと元町が水浸しになる気がするんだよ。でもさ、広報うらやすって、浦安市が市民の皆さんに配るものなんだから、間違いはないと思うんだよね。

 

ヤマジロウ: その点も重要だな。広報うらやすには、きちんと以下の説明が記載されている。

 

「近年の大雨ではこのようになる可能性があります。近年は1時間あたり60mm以上となるような大雨が降ることが増えています。このような雨が降ると、現在の大雨対策では対応しきれない可能性があり、左図のように、市域全体で冠水する恐れがあります」

 

僕: 「市域全体で冠水」は分かるんだけど、本当にこうなるのだろうか。でもさ、「このようになります」って書いてあるよね。でもさ、住宅街って、本当に冠水しないのだろうか。

 

ヤマジロウ: 自分はその点が最も気になった。ハザードマップというのは、様々な事態を想定して複数のマップデータを用意するはずだ。市民にとっては広報うらやすに掲載されていたマップが最も印象に残るわけで、「浦安市が言ってるんだから」と信じてしまう。つまり、複数あるマップデータの中から、市民に提供する情報として最も適しているデータなのだろう。ただ、排水施設の分布を見ると、このハザードマップ通りになるのかどうか、疑問に思った。元町の住宅街がもっと水浸しになるような気がする。

 

僕: あれ!? このマップってさ、「道路冠水予測マップ」って書いてあるよ! ハザードマップじゃなくて、道路の冠水のマップを広報うらやすに乗っけて、「近年の大雨ではこのようになる可能性があります」って言っているわけなのかい? それで、浦安市の取り組みを発信しているわけなのかい?

 

ヤマジロウ: 確かに道路冠水の予測マップだな。ハザードマップではあるけれど、非常に限定的なデータだと思う。道路の冠水マップを広報誌で配ることの意図はなんだろう。浦安市民は道路の上で生活しているわけではない。それぞれの地区で特性があって当然なので、浦安市がこのような限定的なデータを提示して「これは浦安全体の課題なんですよ!」と広報したところで、少なくとも新町の住民にはすぐに見透かされる。興味があるか否かは別として。

 

僕: 「水害対策は、浦安全体の課題なんです!」っていう感じ?

 

ヤマジロウ: いや、それを狙ったとするならば、思考が単純すぎて潔いと感じてしまう自分がここにいる。だとすれば、全市的な課題だと浦安市が発信したい理由は何か? 水害対策に関係する予算の地区的な偏りなのか? 「うちの地区はあまり関係ないのに、あの地区に大きな予算を付けるのはいかがなものか?」という市民からのツッコミを恐れているのか? いや、そういうことで細かく突っ込む市民は少数だと思う。では、住居のデータまで提示した場合に、「うちの住宅が水に浸かると発信するなんてけしからん!」という市民からのツッコミがあると想定して、角が立たない道路の冠水マップを広報うらやすに掲載することになったということだろうか? 分からない。

 

僕: 素朴な疑問なのだけれど、浦安市の水害対策って、全市的な課題じゃないの?

 

ヤマジロウ: 全市的な課題だと思う。ただ、そのエビデンスとして道路の冠水を示すのは適切なのかどうか。データを見る限りではそう思えない。

 

僕: ちょっと、君、煽らないでよ。

 

ヤマジロウ: 煽っているわけではない。この一枚として市民に提示するのであれば、このマップデータだけでは十分ではないと言いたい。ハザードマップというのは、それを見て市民が避難経路を考えるきっかけになる。そういったことを考える上で、道路冠水のマップだけを見せられて、どうやって避難を考えるのか。少なくとも、[1] 河川の増水もしくは堤防の決壊によって洪水が発生した場合のハザードマップと、[2] 大雨が降りすぎて排水できなくて市内が冠水した場合のハザードマップ。この2種類のハザードマップを提示した方が良かったと思う。道路の冠水マップというのは理解が難しい。

 

僕: じゃあさ、浦安市が、わざとハザードマップを公開していないってことなのかい?

 

ヤマジロウ: ネット上には公開している。しかし、それらの情報の場所が断片化されていて非常に分かりにくい。数十年前から浦安市内に住み続けている市民なら伝聞で理解しているかもしれないが、新しく浦安に引っ越してきた子育て世代にとっては、余程の関心がある人でないと情報を理解することは難しいと思う。

 

僕: あのさ、君の奥さんって、浦安出身でしょ? 何か言ってなかった?

 

ヤマジロウ: 先ほどのマップデータを見て、これはけしからんと妻に熱く語ったわけだ。しかし、妻から返ってきた回答は実にクールで愕然とした。

 

「え? 知らなかったの? 元町は昔に大きな水害があって、今でもリスクがあるのよ」

 

僕: うわー、さすが地元だね。元町で育った人は知っているんだね。

 

ヤマジロウ: 自分は、浦安市民なのにそんなことも知らなかったのかと激しく反省した。ただ、他の街から引っ越してきた保護者というのは、このような感じだと思う時もある。どの街でもそうだが、市からの広報というのは、市民にとって最も信頼できる情報であり、今後もそうあってほしい。新しい浦安が始まって、急に水害の情報が発信されるようになった感がある。いや、そういえば、かつての浦安でも、地味ではあるが水害についての情報が発信されていた気がする。また、市民としてはその街の行政を信じることが大切だが、信じていたことが正しかったことを確認するために、あえて疑うことも大切ではないかと。反省することがとても多いぞ。

 

僕: あのさ、浦安市にはいくつかのハザードマップがあるって話だよね。一つにまとめたサイトって、ないのかな?

 

ヤマジロウ: それが、浦安市のサイトを眺めてみたのだが、なかなか見つからない。わざと分けているというよりも、現状で満足してしまっているような感がある。

 

僕: 浦安の水害のリスクについて、池上彰さん風に分かりやすく説明してよ。

 

ヤマジロウ: 竹村健一さん風に切れ味鋭くなら説明できる。

 

僕: 「だいたいやね~、浦安市いうんわね~」ってぶった切られても困るよ。市役所の中の人たちが身構えちゃうから、池上さん風で。

 

ヤマジロウ: 「いい質問ですね~」という体は苦手だな。まず、浦安市が抱える水害のリスクとは何か? そこから始める必要がある。普通に考えるとリスクは1種類だと感じてしまうかもしれない。例えば、近くに大きな川があって、過去に氾濫したことがあって、それがリスクだとか。しかし、自分が見る限りそうではない。

 

僕: ということは、浦安市の場合には、いくつかの水害のリスクがあるってことなの? 

 

ヤマジロウ: 自分なりに考えてみると、浦安市は少なくとも3つの水害リスクを抱えた状況だと思う。こんなことを考えていると、この街のことが好きな人たちから色々とツッコミがやってくるかもしれないが。

 

僕: 3つも!?

 

ヤマジロウ: 大きく分けると、今の浦安というのは、「①洪水のリスク」と「②内水のリスク」と「③高潮のリスク」を有していると思っている。極めて人工的で都市化されたウォーターフロントだから仕方がない気がするが、問題は、埋め立ての前から浦安に存在していた元町でさえ、いや、そういった元町こそがリスクの多くを受けてしまっていることだと思う。

 

僕: マジで?

 

ヤマジロウ: ただ、妻が元町で育ったことがあるとはいえ、東京から浦安の新町に引っ越してきた自分が元町について考えていると、元町の人たちから見れば心穏やかではないかもしれない。

 

僕: うーん、余計なお世話だと言われるかもね。

 

ヤマジロウ: なので、考えないことにした。貴重な時間だからな。もう寝る。お休み。

 

僕: おい。

 

ヤマジロウ: 浦安について考えようとすると、どうしても元町、中町、新町の枠を越えなければならない時がある。しかし、新町の人間が元町について考えると、色々とツッコミが来ることがあるのだよ。シニア世代というよりも、子育て中の同世代から。では、元町の保護者が新町について言及することがあるのかというと、ほとんどない。逆もまた然りかもしれない。シニア世代が若かりし日、現役の子育て世代だった時の情景が目に浮かぶ。この街は、このような距離感を保ちながら前に進んだのだろうと。

 

僕: うーん、それでもさ、君って、元町を助けたいんだよね。伝わるかな?

 

ヤマジロウ: 助けたい? いや、そのような尊大な気持ちではない。街とは何だろうか。土地があり、家があり、学校があって、店がある。それだけで街だと言えるのか。古くから続く歴史や文化があるからこそ、その街に深みが生まれる。自分は故郷を捨て、浦安の埋め立て地で生活することになった。その埋め立て地だって、たくさんの人たちが集まって、少しずつ街の記憶を積み重ねてきている。しかし、浦安市には元町という重要な存在がある。古くからの街の記憶が残っている大切な場所であり、自分が自分であることの記憶の一部。すなわち、自分の一部だ。

 

僕: 君、熱いよね。

 

ヤマジロウ: 熱くない。元町だとか新町だとか。エリアごとに分かれた町意識も大切だと思うし、あえてエリアの壁を超えない方が穏やかに生活できると思う。ただ、他のエリアをリスペクトして何が悪い? 自分が元町に引っ越したら、自分は元町の人なのか? 浦安の財布はエリアごとに分かれているのか? 違うだろ。自分は自分で、浦安は一つしかない。自分が住む街のことを想い、自分が住む都道府県のことを想うこと。それがこの国を想うことに繋がる。

 

僕: あの...もしかして君って、もしかして...

 

ヤマジロウ: 思想的には偏っていないはずだがな。

 

僕: ああ、安心したよ。

 

ヤマジロウ: それと、浦安市内の子育て世代は、浦安市の関係者が言っていることを鵜呑みにせず、きちんと自分なりに考えることが大切だ。注視しなくても違和感があればすぐに分かる。わざと情報を隠しているのではなくて、言い切ることが適切かどうか、慎重になっていることもあるし、時に、市民が察してやる状況もあることだろう。迎合するわけでも、対立するわけでもなく、是々非々の態度で見つめることが大切だと思う。特に...

 

僕: 特に?

 

ヤマジロウ: 浦安市の財政力は高いが、あまり過大評価しない方がいい。日本全体で考えれば確かに高い財政力を有しているのかもしれないが、地方行政において必須な部分に予算を使っていくと、思ったよりも余裕がないのだよ。国からの交付金も受け取っていない状態だ。市民の気を引くハコモノやイベントに金を使っていると、他の大切な事業に使うための金がなくなってしまう。いくら財政力が高くても贅沢はできないと思うし、将来に残ってしまうような負の遺産は残すべきではない。

 

僕: 手厳しいね。

 

ヤマジロウ: 手厳しくない。地方行政でカバーしうる範囲というのは想像以上に広いが、その予算規模というは思ったりよりも大きくない。いくら財政力が高くても、現状を眺めてみると決して余裕のある状態だとは思えない。課題を先延ばしして市民のウケを優先したツケが、今になって浮上してきている。その方向性を望んだのは、たとえ全てではなく一部であったとしても、この街の市民であることを忘れてはならない。そして、新しい浦安市は、懸命に舵を切って方向を変えようとしている。機転が利いた英断というよりも、もはや現状ではそうせざるをえないのだと思う。

 

僕: えっと、話を戻すと、君なりに考える浦安の水害のリスクというのは、「①洪水のリスク」と「②内水のリスク」と「③高潮のリスク」だよね。洪水だけだと思っていたよ。

 

ヤマジロウ: 浦安市の関係者の中にもブログを持っている人たちがいるようだが、浦安の水害のリスクについて系統立てて説明している人が少ない。予算の裏付けから考えて実現不可能なアイデアを広めている人や、問題点を指摘するだけでアイデアを出さず誰か何とかしろ的な人はいるようだが、それも人の自由だ。さて、洪水というのはイメージの通り。大雨が降って河川が増水したり氾濫して、陸地が水没したり水浸しになる自然災害。それが洪水だ。

 

僕: それは小学生でも分かるよ。でもさ、広報うらやすの道路冠水予測マップだと、今ひとつ洪水のことが分からないんだよ。洪水のマップって、どこで手に入るのさ?

 

ヤマジロウ: すでに浦安市が公開している。以下引用。

 

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浦安市洪水ハザードマップとは | 浦安市公式サイト

 

http://www.city.urayasu.lg.jp/todokede/anzen/bousai/joho/1014168.html

 

浦安市洪水ハザードマップは、想定最大規模の大雨が利根川上流域に降り、江戸川が増水し、江戸川放水路が氾濫した場合の浸水の状況をシミュレーションにより予測した洪水浸水想定区域図(国土交通省作成)を基に、浦安市内の浸水する想定範囲と浸水した場合に想定される水深ならびに各地区の避難場所などを示した地図です。

 

あくまでも、江戸川が氾濫した場合を想定した内容となっていますので、大雨が降ったからといって必ずしも地図のような浸水があるものではありません。また、高潮や内水による氾濫などにより、浸水する想定範囲外においても浸水が発生する場合や、想定される水深が実際の浸水深と異なる場合があります。いざという時に備えて、避難所や家族の連絡先などを書き込んで、見やすい場所に貼っておきましょう。

 

江戸川は千葉県野田市関宿付近で利根川から分派し、東京湾へ注ぐ河川です。大雨の規模は、72時間総雨量491mm(利根川流域、八斗島(群馬県伊勢崎市)上流域)を想定しています。洪水時には上流域も含めた雨量・河川の水位情報などに注意し、早めの避難を心掛けてください。また、市から避難情報(避難勧告や避難指示(緊急)など)が出た場合には、速やかに避難行動を開始してください。

 

洪水ハザードマップは、水防法(昭和24年法律第193号)第15条第3項に基づき作成しました。

 

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僕: すごく大切な情報発信だよね。でもさ、あれ? このページには、「洪水ハザードマップ」が掲載されていないよ? どこなの?

 

ヤマジロウ: 自分は常々思うのだけれど、浦安市は市民の目線に立った情報のアクセシビリティについて、市民を集めてダメ出し大会をやった方がよいのではないか。攻撃的な市民ではなくて、データやサイトの取り扱いに長けた市民に集まってもらって、「ここはこうした方がいいよね」とか、「ここはこうなっているから分かりにくいのですよ」と、細かく修正した方がいい。ガラパゴスとまでは表現しないが、浦安市の行政には独特のルールがある気がする。

 

僕: おいおい、池上さん風にお願いしますね。

 

ヤマジロウ: 浦安市の情報というのは、とにかくあちこちにページが散らばっていて、直観的にたどって行くことが難しい時がある。市民が何かを調べたいなと感じた時、100人いれば90人くらいがそちらを選択するであろう思考を先読みしてリンクを張り、そこに情報を用意しておかないと意味がないわけで、何回もクリックしないといけないようでは足りない。また、市役所の中の人たちだけが理解できても、市役所の中の人たちだけが満足していても意味がない。忙しいことは分かるが、本来ならば、ユーザーの目線に立てない仕事をお役所仕事と呼ぶのではなくて、ユーザーに配慮ができる仕事こそがお役所仕事であってほしい。

 

僕: 手厳しいね。

 

ヤマジロウ: 手厳しくない。浦安市の場合には、多くの業務がアウトソーシングになっている。職員が気付いて指示を出せば済む話なのに、その指示の出し方が足りなかったりする。もとい、自分は浦安市の洪水ハザードマップが欲しかった。しかし、そのページには情報がアップロードされていない。ページを探してみると、浦安市洪水ハザードマップのページに「浦安市水害ハザードマップ」という全く同じ名前のページへのリンクがあったので、そこにアクセスした。すると、そのページに「浦安市水害ハザードマップ」というPDFへのリンクがあるので、さらにクリックしてアクセスした。ユーザーとしては「洪水」のマップがほしいのに、名前が「水害」になっている。ダンジョンゲームのようだ。

 

僕: 洪水ハザードマップがほしいのに、名前が水害ハザードマップ? あのさ、全体をまとめて画像を貼るだけじゃだめなのかな? ここまで浦安市のサイトの中を行き来するのって、難しいと思うんだよね。頭の中が混乱するよね。

 

ヤマジロウ: おそらく、この時点で調べることが面倒になる市民がいるだろうな。そして、「水害ハザードマップ」というのは、洪水ハザードマップと内水ハザードマップをセットにしたものなのだそうだ。実に説明が分かりにくい。アクセシビリティについて改善が必要だな。とにかく、洪水ハザードマップは、以下の水害ハザードマップの中に掲載されている。

 

浦安市水害ハザードマップ

 

http://www.city.urayasu.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/002/110/haza-do.pdf

 

僕: あのさ、どうしてPDFでハザードマップを掲載するんだろうね。この地図、すごく容量が大きくて、2ページしかないのに18メガバイトもあるよ。動作が遅いよね。緊急時に知りたい情報なんだから、もっとサイズを減らしてサクサク動いてほしいな。

 

ヤマジロウ: 緊急時でなくても、18メガバイトのPDFは携帯端末で閲覧することが難しい場合がある。HTMLの埋め込み画像とテキストの説明文を用意せずに、PDFのファイルをサイトに貼り付けて、あとは市民が自分たちでダウンロードせよというのは、いささか配慮が足りないと思わないのだろうか。小さな文字が多いから、印刷する場合に綺麗に打ち出せるようにという配慮でデータサイズの大きなファイルをアップロードしたのなら、それらをダウンロードしなくてもスマートフォンで閲覧できるような別ファイルを用意するのは、民間なら当然のことだ。これで市民の理解が得られると思っているのだろうか。プリンターがなくてもデータを見ることができるように、できる限りの配慮を施すことが大切だと思うのだが。

 

僕: 18メガバイトって、大きすぎでしょ。ネットで公開するための資料って、こうじゃないよね。

 

ヤマジロウ: このハザードマップがどのような状況で必要になるのか、その辺を理解できていれば、こんなに大きな容量のPDFだけのハザードマップの公開は避けたことだろう。「まあ、これでいいや」と仕事を終える前に、「本当にこれでいいのか」と振り返る用心深さがほしい。市民が電車での通勤中に市内の防災について考えようと思って気軽にアクセスして勉強するとか。大雨が降りだして市民が気になって寝る前に浦安市のサイトでチェックしておきたい時とか。実際に大雨が降っていて夜間に停電と洪水が同時に起こって、スマートフォンだけで情報を得なければならない時とか。そういった時、PDFを開いて眺めている余裕があるのだろうか? 

 

僕: 全くだね。

 

ヤマジロウ: 広報うらやすには、あらかじめ印刷して貼っておこうという旨のことが書いているが、実際に印刷して貼っている市民がどれだけいるのか。自宅にプリンターがある世帯がどれだけいるのか。職場のプリンターで浦安市のサイトの情報を印刷すれば、それはコンプライアンス違反だ。では、どこで印刷せよというのか。コンビニまで行ってハザードマップを印刷するのか? ハザードマップを印刷しておいて、停電の時にはスマホのライトで照らして情報を見るのか?スマホはライト以外にもたくさんの機能が付いている。実にもったいない。

 

僕: うーん。

 

ヤマジロウ: 印刷用にPDFも大切かもしれないが、画像データとしてHTML化しておけばよいだけの話だ。工夫すれば、スマートフォンのGPSと連動させることもできる。市職員がサイトを運営しているわけではなくて、市が委託した業者がサイトを運営しているのであれば、その旨を指示するだけじゃないのか。どうしても印刷体を各世帯に配布したいのなら、道路の冠水マップだけで十分なのか? 

 

僕: まあとにかく、浦安市の洪水ハザードマップを見てみよう。元町が思いっきりオレンジ色になってるよ!?

 

ヤマジロウ: 浦安市洪水ハザードマップには「想定最大規模の大雨が利根川上流域に降り、江戸川が増水し、江戸川放水路が氾濫した場合の浸水の状況をシミュレーション」という説明があった。江戸川が氾濫した場合、市川市の方が先に浸水し始めて、24時間以内には、当代島地区、猫実地区、北栄地区、堀江地区といった元町エリアが浸水するという計算だ。

 

僕: どれくらいの水の深さになるの?

 

ヤマジロウ: ちょっと待て。ああ、それにしても、このハザードマップは動作が重すぎて非常に使いにくい。市役所はすぐに印刷するのだろうけれど、今の世代は印刷しなくても情報を読むことができるのだよ。ああ、本当に使いづらい。このハザードマップを市職員が実際に使って、使い勝手を評価したのだろうか? 内容自体は素晴らしい。それだけにもったいない。外国人向けに英文の説明まできちんと並べて、本当に丁寧に作ったと思う。

 

僕: データの見せ方はともかく、洪水が起きた時の浸水って、実際にはどれくらい水が入ってくるのさ? 膝下くらいかな。だったら、少し我慢すれば何とかなるかも。

 

ヤマジロウ: ハザードマップのデータを見ると、あくまでシミュレーションだが、浸水した場合の最大水深は5~10メートル。いや、3~5メートルか? ヒートマップの色幅の使い方としてはあまり良くない。灰色のバックグラウンドに同系の暖色のグラデーションを並べると、人間の目が認識しづらい。特に、薄いオレンジ色と濃いオレンジ色の識別というのは非常に難しい。その色の違いだけで、浸水の深度が変わってくるのだから、コントラストをもっと明確にしないと分からない。青、緑、黄色、オレンジ、赤。それくらいの色の差がほしい。さらに、ヒートマップの場合、緑と赤の区別が難しい人たちのためにも配慮が必要だ。このデータを作った人は、一度、チームウラシマに入って修行した方がいい。次のページの色分けは分かりやすいのに、どうして一番大切なデータが。

 

僕: 本当に分かりにくいね。まあとにかく浸水が3~5メートルだったとすると... 2階建ての戸建てだと、屋根まで水がくる状態かな。いや、それ以上の時もあるのかな。最大の水深だから、もっと浸水が浅い場所もあるだろうけれど。

 

ヤマジロウ: 戸建て住宅でこの浸水の深度になると、ローンで買ったマイカーが水没して、家の中の家電は全て水浸しだな。電気配線、配管、その他。床下の基礎にもダメージが出るのだろうか。一体、どれくらいの工事が必要になるのだろう。

 

僕: あとさ、元町に洪水がやってきた時、どれくらいの時間、浸水しているわけ?

 

ヤマジロウ: 洪水ハザードマップを見ると、72時間から168時間の場所が多い。つまり、3日から1週間。浸水は徐々に減っていくだろうけれど、かなりの時間、街が水に浸かっている計算になる。こうやって見てみると、浦安市の洪水ハザードマップは情報としてとても有用だな。

 

僕: 1週間って、長いよね。どうしてこんなに時間がかかるんだろう。そのまま放置しても、街の中から水が抜けにくいとか、そういう理由があるのだろうか。

 

ヤマジロウ: 浦安市のサイトによると、元町エリアは地盤沈下を起こしていて、自然排水によって雨水を地面から川に排出することができなくなっているそうだ。目の前にあった海は埋め立ててしまったわけで、それならばとポンプなどを使って排水している。だから、元町にたくさんのポンプ場や排水機場があるというわけだ。

 

僕: ということは、最悪の状況を想定したら、その場所で「我慢する」という話じゃなくて、「避難する」という形になるよね?

 

ヤマジロウ: 洪水ハザードマップには、元町から中町や新町に避難するように書いてある。とにかく「生きる」ことが最優先だ。困った時はお互い様だから、抵抗感はない。ただし、浦安市内の人口分布を見てみると、かなりの数の市民が元町で生活している。このハザードマップに書かれているように当代島地区や北栄地区、猫実地区の人たちが一斉に新浦安に避難してきたらどうなるか。小学校や中学校、体育館、公民館は元町の人たちで一杯になるだろうな。当然だが、我々が今まで通り生活することは困難になることだろう。そもそも、市内の一部が大きなダメージを受けた時、その他の場所のライフラインが正常範囲で維持できるかどうかも分からない。

 

僕: だから、全市的な話になるわけね。でもさ、どうなんだろう。僕たちが浦安市の液状化で苦しんでいた時を思い出すよ。ガスが使えなくて冷たいものしか食べられなくて辛かった時とか、お風呂どころかトイレさえ使えなくて苦しんでいたり、子供の飲料水さえ苦労していた。洗濯することもできずに我慢してた。そういった時、元町の人たちって、新浦安にいる僕たちを助けてくれたのかな? 「ああ、こっちは液状化しなくて安心しましたよ」って言っている元町の人がいて、悲しい気持ちになったよ。

 

ヤマジロウ: 液状化で苦しむ我々を助けてくださった元町の人たちもいたし、我関せずで助けてくれなかった元町の人たちもいた。助けてくださった元町の人たちには心から感謝申し上げる。しかし、新浦安が困っているのに助けてくれなかった元町の人たちを新町で受け入れて助ける必要はあるのかということか?

 

僕: いや、そうじゃないけどさ。

 

ヤマジロウ: 自分たちが苦しんでいた時に助けてくれなかったのに、どうして助ける必要があるのかなんて、そういった心を持っていたら浦安はいつまで経っても一つになれない。それは分かる。一方、人が生きていくのは大変であり、他者を助けている余裕がない時はある。それも分かる。人は誰だって自分が大切だからな。人の気持ちというのは他者がとやかく言って変えられるものでもない。様々な感情が残っている可能性を否定できずにいる。

 

僕: うーん、難しいね。でも、そういった地域住民の気持ちも無視できないよね。

 

ヤマジロウ: しかし、自分が懸念しているのは、それ以前の話だ。中町や新町に避難所を用意したとして、元町の人たちを収容するだけのキャパシティが本当にあるかどうか。洪水が起きて元町の人たちが避難してくる状況というのは、堤防が決壊するようなタイミングだろ? ある程度のタイミングが分かるかもしれないが、たくさんの人たちがずぶ濡れで歩いて避難してくることが予想できる。小学校とか中学校とか公民館とか、とにかく公的な施設を避難所に指定するのは分かるが、それらの施設の電気や水道が無事だという保証があるのかどうか。非常電源や備蓄した飲料水だけで十分なのだろうか。

 

僕: 本当にそうかな? 住んでいる場所が水没するかもしれないって話が広まったら、自動車にできる限りの物を詰め込んで、車で新浦安にやってくるんじゃないかな?

 

ヤマジロウ: ありうる話だ。そのような状況になった場合、とにかく我先にと元町の人たちがマイカーに乗って新浦安に押し寄せるかもしれない。すると、シンボルロードが大渋滞になって前に進まない可能性も考えられる。やなぎ通りまで詰まってしまったら、緊急車両さえ走行できなくなってしまうかもしれない。とはいえ、北の方角から洪水がやってきている状況で浦安橋を経由して都内に自動車で逃げることができるかどうか。運よく浦安橋を越えて向かう先は葛西方面。葛西エリアのハザードマップを見て進む人がいるかどうか分からないが、逃げ込める先ではないような印象がある。また、浦安に洪水がやってきた時には、市川方面に逃げようとしても、すでに浸水してしまっていることだろう。最近の車はコンピューター制御が多くて水に弱い。すると、やはり新浦安方面に向かって逃げるということか。

 

僕: あのさ、浦安市がハザードマップを公開して、「市民の皆さん、気を付けましょう!」と呼びかけるのは大切なのだけれど、どこまで事態をシミュレートしているのだろう。

 

ヤマジロウ: 多くの人たちが避難して新浦安にやってきたとして、そこでタオルを配るだけでも大変だ。何千枚というタオルで足りるかどうか分からないし、それらをどこに備蓄しておくのかも分からない。それに加えて、温かい食事と着替え。時期によっては毛布。それらを用意することができるかどうか。どう考えても浦安市役所の中の人たちではサポートが足りないし、浦安市にストックもないことだろう。いくら財政力が高くても、行政が対応できるボリュームというのは限られている。過度に期待しない方がいい。さらに、小さな子供を連れた親子や、高齢者を助けて連れてくる必要があるかもしれない。誰が助けるんだ? 浦安市の消防士か? それとも消防団か? 元町にどれくらいの住民が住んでいるか分かるか? あれだけ細かく分かれた路地を縫うように探して助けるのか?

 

僕: じ、自衛隊が!

 

ヤマジロウ: 国内でも非常に強力な自衛隊千葉地方協力本部。通称、千葉地本が近くにあって助かったな。

 

僕: そうだよ! きっとすぐにやってきて助けてくれるさ!

 

ヤマジロウ: ...ということで安堵できるかどうかだな。煽っているわけではなくて、浦安市の周辺の自治体が公開している洪水ハザードマップを見比べてみれば分かる。浦安市よりも甚大なダメージを受けることが予測されている地域はたくさんある。自衛隊がすぐに駆け付けてくれるかどうか、自分には確たる根拠がない。

 

僕: 中町とか新町のお父さんたちが、ボランティアで元町の人たちを助けに行くんだよ!

 

ヤマジロウ: 助けに行くも何も、元町が水没しかけている状況だったら、水辺の付近で待っているのが限界だと思う。本気で助けに行くならボートが要るだろう。ボートなんて、浦安にどれくらいの数あるというのか。ジェットスキーを持っている市民がいれば、コツコツと救助できるかもしれないが、何かのトラブルで動けなくなったらどうなる?せっかく助けに行ったのに要救助者になるかもしれない。それでも自己責任か?

 

僕: でもさ、同じ街なんだから、助け合わないと!

 

ヤマジロウ: 浦安はそこまで一つになれているか? このような街の状態で、エリアを越えて人と人とが助け合うという関係が生まれると思うか?大人だけではなくて子供たちでさえ、元町と新町の交流は限られている。元町、中町、新町のパーティションは街の多様性や面白さに繋がっているが、いざ助け合わなくてはならない状況では逆に障壁になる気がする。

 

僕: そんなこと言ったって、埋め立てで街が広がったんだから、仕方ないじゃないか!

 

ヤマジロウ: まあそうだな。しかし現実は現実だ。浦安に洪水がやってきて、元町の人たちが新浦安に避難してきたと想定する。新浦安のライフラインと物流が残っていれば、地域住民が避難してきた人たちのために炊き出しを手伝ったり、洗濯を手伝ったり、そういったことは支援できるかもしれない。だがしかし、新浦安のライフラインまでが止まり、店舗で商品さえ買えなくなった場合には、他者まで助けている余裕はあるのだろうか。自分たちの生活を維持するしかないかもしれない。冷酷な意見ではなくて、液状化でライフラインが止まった状況で生活したからこそ分かる。極限の状況下では、人は自らを守るために行動することが多い。

 

僕: 何だか考えることが辛くなってきたよ。そうだ、考えることをやめればいいんだ。そうすれば楽になれるよ。

 

ヤマジロウ: 本当にそれでいいのか?

 

僕: じゃあ、どうすればいいのさ?

 

ヤマジロウ: それが分かれば苦労はしない。意見を出し合って、共有して、対応策を考えるしかないだろう。自分なりに考えれば、洪水のリスクについては堤防の維持が絶対防衛線だと思う。洪水ハザードマップというのは一つのシミュレーションでしかない。本来ならばたくさんのパラメーターがあるはずで、この予測が最悪の状況なのか、もしくは最もありうる状況を考えて計算したのかも分からない。

 

僕: 堤防が少しだけ壊れて、少しずつ水が入ってくるという状況もあるかもしれないってこと?

 

ヤマジロウ: 自分は堤防の専門家ではないので分からない。少しだけ壊れて持ちこたえるという状況があるのだろうか。しかも、江戸川方面、つまり市川市を経由して浦安市に洪水がやってくるのか、旧江戸川方面から浦安に向かって直接的に洪水がやってくるのかも分からない。しかし、どちらのケースを考えたとしても、堤防のメンテナンスは重要だと思う。老朽化した部分は補修して、足りない部分は補強して。ただ、河川の管理というのは、浦安市ではなくて千葉県が担当している。それがネックだろうか。

 

僕: 千葉県が堤防を守ってくれるんだったら、良いことじゃないか。

 

ヤマジロウ: そう、そこで千葉県民としての立場が出てくる。千葉県の財政を考えた時、浦安市や市川市から要請があって、「分かりました。すぐに取り掛かりますね」という対応が可能なのだろうか。かなりの協議を進めないと、その実現は難しいことだろう。

 

僕: 千葉県って、あんまりお金がないってこと?

 

ヤマジロウ: お金がないというか、これだけ広い面積の県をこれだけの予算規模で維持するのは、とても大変なことだと思う。県の多くが海に接していて、それだけでも金がかかる。北西部の街から房総半島の市町村まで、県全体に分布する自治体をそれぞれケアして。千葉県には限られた予算の中で県全体を考える必要がある。これだけ張り巡らされた水道管、それと信号機。今後、そういった設備が老朽化してくるだろうし、あまり目立たないかもしれないが、県が担当する範囲は想像以上に広い。警察だって、千葉県警と言ったりするだろ? 県が担当しているのだよ。

 

僕: うーん、じゃあさ、「浦安市が予算を用意しますから、堤防を直していいですか?」って、言えないのかな。浦安市って、財政力が高いんでしょ? 

 

ヤマジロウ: 財政力が高いといっても、市を運営するために必須の予算を割り振っていくと、あまり余裕がないのだよ。また、千葉県の仕事について浦安市が介入するのは難しいと思う。しかし、諦めるわけにもいかないので、根気よく千葉県に対して実情と要望を伝えるしかないかもしれない。市民が浦安市を応援することも重要だな。それと、あまりに危険な堤防の裏に、浦安市がもう一つ堤防を作ってしまうという発想が可能なのかどうか。

 

僕: だったら、洪水が起きてしまった時のことも考えておく必要があるよね。

 

ヤマジロウ: 自分としては、その点も大切だと思う。行政としては洪水を起こさせないというベクトルで水害対策を展開することは大切だ。同時に、絶対防衛線を突破された時には、どうやって市民の安全を守るのか。それについてもあらかじめ想定しておくことが重要だと思う。市民の側からすると、浦安市の行政に任せきりにせずに、自分だったらどうするか。何を用意して避難するのか。いつまで避難するのか。生活が厳しい場合にはどこで仮住まいするのか。色々な準備と心構えが大切だと思う。

 

僕: あのさ、液状化で被災した経験って、あの時は辛かったけれど、良い経験になったと感じるよ。すごくリアルだったから、「えっと、ああして、こうして」っていう流れがスラスラと頭に浮かんでくるね。

 

ヤマジロウ: 確かに良い経験だったが、あまり慣れたくはないことだな。それと、水害対策というのは、浦安市の行政として華があるかというとそうでもない。分かりやすいお祭りイベントや、分かりやすいハコモノの方が市民ウケが良いかもしれない。しかし、現状の設備をきちんと修繕して、水害のことも考えて取り組むという姿勢は、とても大切だと思う。

 

僕: あのさ、他に何か思いつかない?

 

ヤマジロウ: 避難という内容で思いつくことがある。すでに浦安市はそのアクションを始めているが、いつ来るか分からない洪水だからこそ、ずっと来なくても意味がある事業に予算を使うというのも有用だと思う。

 

僕: どういうことさ?

 

ヤマジロウ: 最近の浦安市は、公立学校の大規模改修工事を地道に続けているだろう? 元町の学校もぜひ修繕してほしいが、中町や新町の学校も修繕しておいて損はない。新町の場合には、順番で考えると日の出小学校のリフォームも計画してほしいところだ。

 

僕: ああそうか、避難所としてコンバートすることを考えると、小中学校の修繕って意味があるよね。もしも災害が来なくても、学校のメンテナンスという意味があるんだから。

 

ヤマジロウ: 少しくらい贅沢になっても構わないので、シャワールームを増やしておくとか。避難所として使うことを想定して、早い段階で小中学校をリフォームしておくことは有益だと思う。それと、液状化の時にその有り難さを実感したが、ごみの焼却施設も頑丈にしておいた方がいいな。壊れたらダメージが大きい。それと、考えたくないことだが、洪水などの大型災害が起きてしまったら、大なり小なり浦安市の財政は傾くことだろう。地域住民の生活に欠かせない施設を、今のうちにオーバーホールしておいたとしても文句が出るどころか、むしろ市民からの信頼を高めると思う。

 

僕: 広報うらやすの記事だけでも、この街についてたくさんのことを考えたり、たくさんのことが大切なんだなと実感するね。洪水の次って、えっと、内水だったよね。

 

ヤマジロウ: 機会があれば話そう。

 

  後編につづく