思春期と思秋期の違いを感じながら、父親とは何かを哲学する

 

※注:この物語はヒノデダッズムによく出てくる「僕」と「フジヤマジロウ」というお父さんたちが、延々と漫談を続ける小説の体で書いています。登場する人物等はあくまで架空のものです。

 

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僕: さて、あのお父さん、最近、何か考え込んでいたみたいだけど、大丈夫なんだろうか? 仕事も忙しそうだったし、倒れてるんじゃないか?

 

ヤマジロウ: ・・・・

 

僕: おーい!

 

ヤマジロウ: ・・・・

 

僕: おーい!

 

ヤマジロウ: ・・・・

 

僕: ああ、やっぱりへこんでいるみたいだね。おい! 元気出せよ!

 

ヤマジロウ: 始まったか....

 

僕: お、おい! 何が始まったんだよ! 

 

ヤマジロウ: 自分にもトランスフォームの時期がやってきたようだ....

 

僕: おい! 大丈夫なのかい!

 

ヤマジロウ: 手遅れだ。もう元には戻れない....

 

僕: 無茶しやがって!

 

ヤマジロウ: 自分には戦うべき相手がいる。先に行け....

 

僕: おい! 君は、一体、どこにいるんだよ!? 

 

ヤマジロウ: ・・・・

 

僕: あのね、何やってんのさ?

 

ヤマジロウ: お前....俺のスタンドが見えるのか?

 

僕: せっかく心配してやってたのに、何やってんのさ?

 

ヤマジロウ: 心配? 自分はメンタルを痛めているわけではないし、怪我もしていない。休職もしていないし、普通に働いているぞ?

 

僕: 「ブログが遺書みたい」って言われるでしょ?

 

ヤマジロウ: 「生き急いでいる」とも言われる。最近、ヒノデダッズムのブログは、シリアスなエントリーが多いので、たまにはお父さんたちが見てリラックスできる少年誌みたいな体で行こうと思ったわけだ。

 

僕: 奥さんと喧嘩が続いてるって言ってたじゃないか。

 

ヤマジロウ: ああ、それか。共働きの子育て世帯なら普通の話だ。そして、まさに、窮鼠猫を噛む勢いの自分は、このように妻に説明したわけだ。「夫と共に歩むというよりも、大きな猫を飼っていると思ってくれ」と。

 

僕: いや、その説明、何かおかしいでしょ。

 

ヤマジロウ: 凄いと思わないか? 猫が定期的にお金をくわえて帰ってきて、洗濯物を干したり、子どもたちの歯磨きをやったら。

 

僕: いや、話の流れが最初からおかしい気がする。

 

ヤマジロウ: 原子炉を搭載した猫型ロボットが、人類との接触を介してAIにゴーストを宿し、自己判断で時空の狭間にダイブしながら未来を変えるよりも安全だと思わないか? 

 

僕: 比較になってないでしょ。ていうか、ドラえもんを攻殻機動隊みたいな感じで表現するのは、やめてくれないかな?

 

ヤマジロウ: あのアニメは、考え方によってはサイバーパンク系だと思わないか?

 

僕: そんなはずないでしょ。それはともかく、君が大きな猫だと説得して、奥さんが納得してくれたのかい!?

 

ヤマジロウ: どうやら分かってくれたようだ。

 

僕: え!?

 

ヤマジロウ: うちの妻は、動物が好きだからな。

 

僕: いや、たぶん、違うところで納得したんだと....それにしても、厄年を越えた父親が人形遊びって、普通やるかな? 

 

ヤマジロウ: 人形ではない。

 

僕: 何それ。

 

ヤマジロウ: 人型のUSBハブ。

 

僕: ああ、パソコンのUSBポートが足りない時に、USBメモリをくっつけて使うやつだよね。

 

ヤマジロウ: その通り。あまりに奇抜なデザインだったので、脊髄反射的にAmazonでポチってしまったわけだ。なんと、これ1個で、合計4つのUSBメモリを接続できるという代物なのだよ。寅さんだったら新浦安駅前で1000個くらい叩き売ってしまう勢いだ。

 

僕: 頭の部分ってさ、何かの機能があるのかい?

 

ヤマジロウ: 何もない。むしろ首の部分のケーブルに断裂のリスクを生じている。

 

僕: データの転送速度は?

 

ヤマジロウ: USB3.0には対応できていないので、遅い。

 

僕: 使ってるの?

 

ヤマジロウ: USBハブとしては、使っていない。

 

僕: じゃあ、何に使っているのさ。

 

ヤマジロウ: 手にとってデザインの面白さを楽しんでいる。

 

僕:やっぱり、人形遊びじゃないか。

 

ヤマジロウ: 文章だけのエントリーは楽だが、挿絵がないと読む方が疲れる。それと、自分のスタンドがUSBハブだったら面白いと思わないかね。

 

僕: あのさ、「トランスフォーム」とか、「始まった...」って言っていたから、ARMSとかGANTZのノリだと思ったのに、ジョジョかよ。何ができるスタンドなのさ?

 

ヤマジロウ: データ転送。

 

僕: すごく地味だね。それと、さっき言ってたけど、君、何にトランスフォームするのさ?

 

ヤマジロウ: 重要なのはソコだ。子どもが産まれたばかりの男は「パパ」だな。そこから、男は「中間体」にトランスフォームする。それを体感している真っ最中なのだよ。

 

僕: 中間体?

 

ヤマジロウ: そう、「パパ」から「オヤジ」に変化する。

 

僕: あのさ、途中に「お父さん」があるんじゃないの?

 

ヤマジロウ: 自分のように晩婚で子どもが産まれた場合、先に父親の変化が訪れる。お父さんのステージをすっ飛ばして、いきなりパパからオヤジだ。すごいじゃないか。まるで、通勤快速・蘇我行だ。東京から浦安に帰ろうとして間違って新木場駅で降り忘れたらノンスタァーップ! 舞浜駅や新浦安駅で降りることは許されず、東京都内から千葉市の蘇我まで転送されてしまう。思わず入ってしまいそうなくらいに風情の漂う蘇我駅前のラーメン店を眺めつつ、「ここは...どこだ?」的な不可思議な感覚が、まるでGANTZのようだ。

 

僕: JR京葉線のユーザーしか分からない例え話はやめてよ。ていうか、「蘇我行き」じゃなくて、「君津行き」じゃないの?

 

ヤマジロウ: 君津だったか? 子どもが産まれるまでずっと東京にいたので、千葉県の地理が分からない。そして、新浦安駅を通り過ぎて千葉市の蘇我駅まで転送される途中で下痢がやってきた時の絶望感は半端ない。

 

僕: いや、下痢は関係なくて、終点は「蘇我」じゃなくて、「君津」なんじゃないの?

 

ヤマジロウ: 千葉県民にとっては蘇我と君津の違いが分かるのだろうけれど、自分にとっては船橋から向こうはワンダーランドだ。君津が内房なのか外房なのかも分からない!

 

僕: あのさ、いい加減に、千葉県民になったことを認めなよ!!

 

ヤマジロウ: 千葉県はバランスが良くて素晴らしいと思うが、とにかく千葉県の地理が分からないのだよ!!記憶力が落ちてきた四十路になって、鎌ヶ谷市と松戸市と野田市と柏市の地理関係を理解せよと言われても説明が難しい。とにかく、自分はチーバくんのベロに住んでいることは分かる!!!

 

僕: 君は、それでも千葉県民なのかい!?

 

ヤマジロウ: 自分に足りないのは、千葉県民としての帰属意識だな!!

 

僕: 正論だね!! それはともかく、男としてのトランスフォームの最終形態は何なのさ!?

 

ヤマジロウ: お互いに熱くならずに漫談を続けよう。オヤジの次は、ジジ....いやマイルドに行こう。「ジイジ」だな。

 

僕: そのまんまじゃないか。

 

ヤマジロウ: この形態は、自分の子どもたちの都合によるものだから、何ら気兼ねがない。まあ、最近では、妻に家庭を任せて仕事に没頭してきて、子育てのやり方を知らない団塊世代のジイジが、孫育てで悩んでいることが多いようだ。だがしかし、自分たちのような共働きの父親にとっては、保育園の送迎や預かり、その他のことは、大した苦労でもない。

 

僕: 何だよ、その上から目線。トランスフォームと呼べる君の感性がすごいと思うよ。どうやって気付いたのさ?

 

ヤマジロウ: 最近、自分には変化が訪れた。最初に妻が気付いた。

 

僕: な、なんだって!? 

 

ヤマジロウ: 自分には見えず、感じ取ることもできないフィールド。それが自分の周りに展開され始めた。

 

僕: ATフィールドなのかい!? エヴァンゲリオンみたいじゃないか!

 

ヤマジロウ: 「Absolute Terror FIELD」、すなわち、「絶対恐怖領域」か? ATフィールドは、共働き子育て中の妻と夫の間には、常に展開されているであろう心の壁だな。ああ、それと、初号機や零号機によくあるアレも・・・

 

僕: はい、ストップ。結婚したい男性が減っちゃいそうだから、それ以上はやめてね。

 

ヤマジロウ: 妻が気付いたのは、ATフィールドではない。「KSフィールド」だ。

 

僕: KSフィールド!?

 

ヤマジロウ: そう、父親である自分にとって、見ることも感じることもできない心の壁。「Karei-Syu FIELD」、すなわち、「絶対加齢臭領域」というやつだ。

 

僕: 「絶対」は必要ないだろ。ていうか、心の壁じゃないだろ。

 

ヤマジロウ: いや、心の壁だな。最近、うちの洗濯では、さりげなくデオドラントビーズが使用され始めた。自分の洗濯物が臭うからだろうと妻に尋ねても、決してそうではないと言い張る。しかし、デオドラントビーズの容器には、デカデカと「男の臭いもパワー消臭!」などと書かれているわけだ!

 

僕: おお、君、怒っているね。

 

ヤマジロウ: 全くだ! 妻と子どもたちのために一生懸命に頭を下げ、汗を拭き、夜遅くまで働いて帰ってきて、服やタオルが臭いだと!? 父親が懸命に働いた証拠ではないか!! 日本は、いつから、父親という存在をリスペクトしない国になったのだ!!

 

僕: うわ、勘違いに加えて昭和的な感じだね。で、そのデオドラントビーズを使った感想は?

 

ヤマジロウ: すごく便利で、素晴らしい製品だ! イノベーションと表現しても差し支えがない! 部屋干しをしても臭わないし、汗だくになるロードバイクウェアには必需品だぞ!!

 

僕: !! 

  

ヤマジロウ: 20代の若者だった頃、40代の男性の姿を眺めていて、社会全体のレベルで不思議に感じていたことがあった。

 

僕: 何が不思議だったのさ?

 

ヤマジロウ: どうしてそうなったというイレギュラーな行動が多いと思わないかね。そうそう、今日の漫談のテーマは、男性の更年期とかミドルエイジ・クライシスだったりする。

 

僕: 例えば?

 

ヤマジロウ: 奥さんや子どもがいるのに、コツコツと勤め上げてきた会社を退社して、経済的に苦しんだり。

 

僕: 「およげ!たいやきくん」みたいな話は、たくさん耳にするよね。他には?

 

ヤマジロウ: あまり露骨に表現すると問題があるので伏せるが、セクシャルなトラブルが多いのも40代だと思わないか。40代の男性に限らないけれど、奥さんがいるのに、他のパートナーを見つけて家庭が崩壊してしまったり。電車で女性を触ってしまって捕まる男性にも40代が多いだろ? その昔、「ポケベルが鳴らなくて」というドラマがあったな。主人公はもう少し年上だったか。中年からすると、うらやまけしからん話なのかもしれないが、ドラマはあくまでフィクションだ。それがリアルで起こりうる。怖いぞ。

 

僕: まあ、今の若い人たちは「ポケベルってなんだそれ?」だろうけどね。そういえば、セクシャルなトラブルじゃないけど、メンタルが疲れて、うつで休職してしまうお父さんの中にも40代が多いような気がするよね。逆に、40代になってジムに通って身体を鍛えてマッチョになるお父さんもいたりして、極端だと思うんだよ。

 

ヤマジロウ: そう、女性の厄年はあまり気にしないが、男性の42歳という厄年は、数字のイメージもあるけれど、非常に強い何かを暗示しているんじゃないかと思う。そして、自分にもその変化がやってきたのかと、最初は戸惑い、苦しみ、その後、何だか面白くなった。

 

僕: 面白いだって?

 

ヤマジロウ: 確実に死に向かって時間が流れていることを知り、それによって自分が生きていることを実感する。社会全体において個々に生じうる心身の変化が、実際に自分にやってきて、自分がそれを体感している。面白いと思わないかね。

 

僕: おーい! それって、男性の更年期ってやつなのかい? 男性ホルモンが減るっていう。

 

ヤマジロウ: 「ミッドライフ・クライシス (Midlife crisis)」 とか、「ミドルエイジ・クライシス (Middle age crisis)」、もしくは「中年の危機」と呼ばれるものと同義のようだな。

  

僕: 「はらたいら」さんが苦しんだって、話があるよね。

 

ヤマジロウ: 小学館文庫の「はらたいらのジタバタ男の更年期」は、まさに名著だな。自分の場合には、それほど厳しい症状ではないと思うわけだが、やはり何かが違う。ここ数年、過労死ラインを超えて働いていたので、そうか過労死するのかと思って、アクセルを緩めて普通に残業することにした。後になって考えると、この判断は正しかったようだ。しかし、何かが変だ。食欲もあるし、きちんと眠ることができる。

 

僕: どんな感じ?

 

ヤマジロウ: サイクリスト風に例えると、自分の体調やロードバイクにはトラブルがないはずなのに、今まで通りの速度で巡航しようとすると、ケイデンスが上がり過ぎて心拍が上がる。何だこれはと思ってペダルを踏み込もうとすると、今まで踏み込めていたはずのギアが踏めない。まるで、荒川サイクリングロードの向かい風の中で走っているような感覚。それが、仕事や家庭、全てにおいて起こっている状態。

  

僕: マジで? 苦しいでしょ?

 

ヤマジロウ: 最初は戸惑った。それと、セクシャルな感覚にも変化がやってきた気がする。オスとしての自分が終わっていくような。

 

僕: 例えば?

 

ヤマジロウ: 若い男性だと、魅力的な女性を見かけたら、「おおっ!」と思って、大なり小なりセクシャルな思考がやってくるだろ? 頭から腰に伝わるようなシグナル。それはヒトという種を残すために、男たちの脳にプログラムされたものだと思う。それがなかったら、今の自分はこの世に存在しない。だがしかし、そのプログラムが頭から消えていく感じとでも表現しようか。綺麗な女性を見かけると、単に「美しい」と感じるだけ。美しい絵画を眺めるかのようだ。人にもよるだろうけど。

 

僕: ムラムラしないって、ことなのかい?

  

ヤマジロウ: ここに個人差があるようだ。同世代の父親を眺めてみると、逆にそういったプログラムが暴走している感じの人もいるだろう? 不倫や風俗に突っ走るミドルエイジの父親の場合、セクシャルな衝動が高まっていると感じられる。逆に、そういった衝動が減ってしまう父親もいる。専門家でもないので分からないが、要は不安定な状態なのだろう。

 

僕: うーん。でもさ、不能になったわけじゃないんでしょ?

 

ヤマジロウ: 浦安にたくさんいる父親たちや近所のママさんたちがヒノデダッズムを見ている可能性があるので、自身のプライドのためにも言っておくが、そういった機能が失われたわけではない。しかし、子作りというステージが終わった後の悟りの境地というか、まるで賢者や聖人にでもなったのかと。

 

僕: あはは! 奥さんとイチャイチャして男性ホルモンを増やしたら?

 

ヤマジロウ: 笑い話ではない。多くの核家族の共働き世帯でも同様だと思うが、イチャイチャどころか夫婦の会話すらノンビリできないだろ。これで男性ホルモンが減らない方がおかしい。焼肉屋に行ってホルモンを食べようかと本気で思うくらいだ。

 

僕: うはは!

 

ヤマジロウ: 男性ホルモンはともかく、「仕事とは何だ?」とか「家庭とは何だ?」とか「父親とは何だ?」と熟考するようになり、「自分がどこから来て、どこに向かうのか?」、さらには「自分とは何だ?」といった・・・・そう、哲学的な思考が多くなった。

 

僕: 哲学?

  

ヤマジロウ: そう、哲学だ。そして、心身が年齢によって老いて行くことを実感しながら、「中年とは何か?」を哲学的に考えるようにもなった。人生全体を達観するような不思議な感覚もあり、苦しいけれど何かを悟ったようにこだわりが減った気がする。なるほど、これは興味深い。

 

僕: あはは!!

 

ヤマジロウ: だから、笑い話ではない。一体、自分の身体に何があったのか? おそらく、日本全国の同世代の父親たちにも、大なり小なり同様の事象が生じていると思われるわけだ。

 

僕: そういえば、ほら、マトリックスで有名な「キアヌリーブス」さんがミッドライフクライシスになったって話は有名だよね。

  

ヤマジロウ: そう、彼の言葉はネットでも有名だな。

 

https://www.excite.co.jp/News/world_ent/20120709/Cyzowoman_201207_post_6232.html

 

僕: 「自分が何をしているのかも分からなくなる」って、辛かっただろうね。

 

ヤマジロウ: そのフィーリングもよく分かる。ただ、彼の場合は、世間から注目される上に、フィクションとリアルの世界を行き来する職業でもあるから、精神的な負荷も半端なかったことだろう。それと、「第二の思春期みたいで面白かった」という感覚は、よく分かる。

 

僕: 身体の変化って、他にもあるの?

 

ヤマジロウ: ロードバイクに乗っていると、たまに減量をやって体重をコントロールしたりもするのだが、以前だったら簡単に痩せられたのに、同じことをやっても体重が落ちなかったりする。それと、無性にラーメンが食べたくなる。

 

僕: ラーメン? あはは、それが原因じゃないの?

 

ヤマジロウ: 笑い話ではない。キアヌリーブス氏も日本のラーメンにハマっていたし、多くの中年男性がそうだろう? それと、暁の激情がほとんどなくなる。

 

僕: 何、その文学的な表現。

  

ヤマジロウ:自分なりには、そのような変化の背景も分かった。自分の心身の変化だけではなくて、外的な要因の影響もあるはずだ。

 

僕: 外的な要因?

 

ヤマジロウ: 要は、疲れとストレスだ。

 

僕:まあ、ストレスに弱くなる時期なのかもしれないね。

 

ヤマジロウ: それまでに積み上げてきた職業人生、これまでの家庭生活や価値観、そういった外的な要素が頭の中に蓄積するのが40代なわけだ。もちろん、その中には様々なストレスも含まれる。

 

僕: 「俺の人生、このままでいいのだろうか」とか「こんなはずじゃなかった」とか、そういった気持ち?

 

ヤマジロウ: そうなる人もいるだろうし、人生が一段落して、終末が見えてきたことの焦燥感であるとか、そういったこともあるかもしれない。特に、今の晩婚化の世の中では、子育てと親の介護が同時にやってきたりもするからな。

 

僕: 子育て中のお父さんとしては、お爺ちゃんやお婆ちゃんに子育てを助けてほしいのに、逆に介護で助けなきゃってなると、辛いよね。

 

ヤマジロウ: 自分の場合には長時間の通勤と共働き子育てのストレスが大きいが、首都圏ならそれが普通なのだろう。当然だが夫婦の間にもテンションが張る。それ以外にも夫婦間には色々なATフィールドが展開され、職場でも責任やストレスが積み重なる。少しずつ自分が属する組織の課題や不条理さえも分かるようになり、この先の将来まで見えてくる。とはいえ、この歳になると簡単に方向転換するわけにもいかない。自身の変化だけでも辛いのに、そこに様々なストレスがやってくるわけだ。

 

僕: 40代とかで、メンタルがガクッて崩れて倒れてしまうお父さんたちと何か関係があるのかな?

 

ヤマジロウ: 分からない。ただ、そういったメンタルの淵というか、キルゾーンというか、そういった危険なラインが見える。自身の変化に気付かずに無理をして、そのエリアまで踏み込んでしまって、飲み込まれたような感じなのだろうか。自分は言いたい。40代の父親たちは、もっと自分のことを大切にしよう。仕事での立場だとか、プライドだとか、それらも大切かもしれないが、壊れるまで働くことに大きな意味はない。

 

僕: でもさ、その変化って、奥さんたちが気付かないよね?

 

ヤマジロウ: 気付くかどうかは夫婦仲にもよるだろうけれど、多くの場合、気付かないことだろう。ただ、そういった心身の変化に伴う苦しみと同時に、何か懐かしくもあった。

 

僕: 懐かしい?

 

ヤマジロウ: キアヌリーブス氏もおっしゃっていたようだが、まさに第二の思春期だな。ただ、動画を逆再生するような不思議な感覚もある。「そうか、だから思秋期と呼ぶのか」と納得した。

 

僕: 男として成熟に向かうような思春期と、男として衰えていると感じるような思秋期ってこと?

 

ヤマジロウ: しかし、その時点で悩んでいることというのは、対象は違っても絶妙に重複していて、この辺りのフワフワした悩みや葛藤が実に懐かしい。

 

僕: あはは! 君、奥さんや友達からも中二病じゃないかって笑われるくらいだからね。永遠の思春期じゃないの?

 

ヤマジロウ: 全くもってけしからん話だ。それと、最近の中高生は、中二的なことを嫌う傾向にあると耳にしたこともあるぞ。

 

僕: へぇ。

 

ヤマジロウ: 自分が中二病? 何かの間違いだ。

 

僕: でもさ、今でも使っていないヒノデダッズムのロゴマークって、あるよね?

 

ヤマジロウ: これのことか?

 

僕: このマークをホームページのロゴにしたかったんでしょ?

 

ヤマジロウ: そうだ。ガッチャマンの火の鳥をリスペクトした上で、疲れた父親が「不死鳥」のように蘇るイメージと、日の出地区の「日の出」をモチーフにした。

 

僕: カッコイイと思うけど、インパクトが強すぎだよね。

 

ヤマジロウ: その通り、インパクトが強すぎて未だに使えずにいる。

  

僕: あはは!

 

ヤマジロウ: そもそも、中二病というのは、「いらすとや」のイラストをお借りすれば、こういうイメージだろ? 

 

僕: あ・・・

 

ヤマジロウ: こ、これは、かなり、こじらせているな。

 

僕: 真っ最中だね。

 

ヤマジロウ: 自分には、このような傾向は全く認められない。

 

僕: 手に紋章はないよね。

 

ヤマジロウ: 全くだ。

 

僕: そういえば、君、ロードバイクのライドで車道を走る時、足にシールを貼ったりするよね。

 

ヤマジロウ: まあ、車道をロードバイクで走っている時は、命がけだからな。

 

僕: でもさ、危ない時があるよね。

 

ヤマジロウ: 道路交通法上は車道を走ることになっているから自転車で走っているだけなのに、窓ガラスにスモークを貼ったワゴン車とか、トラックとか、荒い運転をするタクシーが煽ってきたり、クラクションを鳴らしてきたりする。

 

僕: 「オラオラ!」って感じの人たちって、どうしてロードバイク乗りにプレッシャーをかけてくるんだろう?

 

ヤマジロウ: 休日に河川敷で野球をやっていて、わざと自転車の通行を妨げてくる父親たちの中によく似た人がいる気がする。野球中年とロードバイク中年はどうして相容れないのか、不思議でならない。彼らは心を開けば楽しい人たちなのだが、そこまでが大変だな。こちらとしても気合いが入っていることを示しておこうかなと。

  

僕: でもさ、これ・・・

 

ヤマジロウ: Amazonで安かったので、たくさん買っておいた。なるほど、これは便利だ。

 

僕: ま、まあ、気合いが入っていることは分かるよね。何か場所がずれてる気がするけど。

 

ヤマジロウ: ただのシールだ。休日にサイクリングロードを走っていると、なぜか他のロードバイクから追い越しがなかったりする。どうしてだろう。

 

僕: 「うわー、こじらせているよ!」って思われてるんじゃないの?

 

ヤマジロウ: いや、どう見てもシールだろ?

 

僕: まったく、40代になって何やってんだか。奥さんからも笑われたでしょ?

 

ヤマジロウ: まあ、うちの妻の場合、夫について興味がないので、シールを貼っていても気付かない。面白いので妻に紹介したら、「中二だね」と苦笑いされてお終いだった。

 

僕: あはは! レスポンスが薄すぎる! 他のお父さんやお母さんが見ても、「バカじゃないの?」って思うんじゃないの?

  

ヤマジロウ: 今、何と言った? 

 

僕: 「バカじゃないの?」だよ。

  

ヤマジロウ: ほう、言ってくれるじゃないか。

 

僕: 何、偉そうに構えてるのさ?

 

ヤマジロウ: ほうほう、自分がバカだと。

 

僕: だって、そうじゃないか?

 

ヤマジロウ: そうだな、バカで結構。おや、なんだこれは?

 

僕: 何だよ?

  

ヤマジロウ: 足元から何かの紋章が浮かび上がってきたぞ。

 

僕: あ!!

 

ヤマジロウ: やれやれだぜ。

 

僕: 東京大学の銀杏の紋章!?

 

ヤマジロウ: やれやれだぜ。自分は、たぶん思秋期であろう葛藤の中で、たくさんのことを達観した。子どもたちの学校や将来についてもだ。

 

僕: 言ってることは分かるけど、画像がシュールすぎる。

  

ヤマジロウ: やれやれだぜ。例えば、うちの子どもたちが、どこかの進学校に入学して、東大に合格したとする。世間一般にはエリートコースだな。

 

僕: ま、まあね...

  

ヤマジロウ: やれやれだぜ。それが人生の幸せだと言えるか? 何をもって幸せだと言えるのか? そのような考えを生み出しているのは、自分と周りを比較して、少しでも上ならば優越感と安心を、下ならば劣等感と嫉妬を覚える日本人の価値観、そのものじゃないか?

 

僕: それは言い過ぎだよ!

 

ヤマジロウ: まだ大人になるかならないかの時期の話で、若者にレッテルを貼るのは間違っている。社会人になって、どれだけ頑張ったかという観点を無視して、なんだそれは? 人は工業製品ではない。

  

僕: でもさ、その場所にたどり着かないと見えないことだって、あるでしょ?

  

ヤマジロウ: 世の中には勘違いしている人が多いけれど、銀杏の紋章を授けられても、全てにおいてバラ色の人生が待っているわけではないのだよ。就職は簡単かもしれないし、場所によっては出世が早いかもしれないし、親戚が増えるかもしれない。しかし、自身が生きる上での悩みというのは、他の人たちと何ら変わらない。

 

僕: へぇ。

 

ヤマジロウ: だがしかし、こんな紙切れ一枚に大きな意味はないが、この大学の凄いところは、普通なら見えない遙か遠くの世界を見ることができる。まさに知の宝庫だ。

 

僕: どうやって見るのさ?

 

ヤマジロウ: 色々な素晴らしさがあるが、最も大きな魅力は「人と人の繋がり」だな。このネットワークが半端ないし、たくさんのことを学ぶことができる。普通に生活していたら見えない世界が広がっていて、実に楽しかった。

 

僕: へぇ。

 

ヤマジロウ: ただし、偏差値が高いことが、優れた人の指標だという考えは間違いだ。そんな子育てをやっていたら、間違った方向に子どもが成長してしまうと自分は考えている。偏差値の高い中学校や高校を受験して、そこから名門大学に進み、誰もが知る大企業や官公庁に勤めて、たくさんの部下を率いて偉くなることが人生の勝ち組だという考えは、もはや高度成長期の日本の社会が作り上げてきた幻想だったのではないかと感じることさえある。

 

僕: 医学部は?

 

ヤマジロウ: 「頭が良いから医学部に行く」のではなくて、「医師になりたいから医学部に行く」という考えを大切にしたい。人を助けるつもりがないのに、勉強ができるからといって医学部に行って、結果、医師としては劣等生になってしまう人は珍しくない。

 

僕: よく聞く話だよね。

 

ヤマジロウ: まあ、楽をして稼ぐことができる施設もあるかもしれないが、それだって相応の責任があることだろう。年収は高くても、まさに心身を削って頑張っている人が多い。弁護士だって、公認会計士だって、相応の苦労があるのだよ。新町には大企業の社員がたくさんお住まいだが、夜遅くまで、どれだけ身を削って働いていることか。あれだけ働いて大丈夫なのかと心配になる時がある。

 

僕: うわー、君、すっごく考え込んでいたんだね。

  

ヤマジロウ: しかし、最近の若い人たちは、そういった価値観に対して違和感を覚えるようになってきたのではないか。

  

僕: 紋章が増えているじゃないか!

 

ヤマジロウ: 浦安のマスコットキャラクターのハマグリ小僧の完成度は、かなりのものだな。

 

僕: 「あっさり君」だよ! それと、浦安のマスコットキャラクターじゃなくて、郷土博物館のキャラクター!

 

ヤマジロウ: ミッキーじゃ、ダメなのか?

 

僕: それは、大人の都合で....

 

ヤマジロウ: 誰かがやってきたようだ。伏せろ。

  

僕: おいおい、何を持っているのさ?

 

ヤマジロウ: USBメモリ。まあとにかく、色々あるのだよ。

 

僕: 何のデータ?

 

ヤマジロウ: 浦安のデータ。

 

僕: 何それ、ビッグデータなの?

 

ヤマジロウ: ビッグデータはUSBに入りきらない。リアルな世界で収集した情報。

 

僕: 話が思いっきり脱線しているけど、面白いじゃない。ブログで紹介したら?

  

ヤマジロウ: 当たり障りがあるので公開しない。よく知られたことではあるが、浦安の中でも、日の出地区というのは強力なブロガーやツイッターユーザーがたくさんおられる。「ソリッドステートには近づくな」という体だな。

  

僕: あはは、何かあったら、日の出から浦安全体に向かってネットに発信されるよね。強力なブロガーって、自治会の人とか?

 

ヤマジロウ: 彼のように大所高所から街全体を眺めることができる人物は非常に少ない。自分がリスペクトする父親だな。

 

僕: 浦安何とかは?

 

ヤマジロウ: 彼は同門の年下で、どこかで会ったことがあると思うのだが、非常に優秀な人物だな。しかし、彼はブログでプライバシーを伏せていて、湿気が嫌いで乾燥機が好きというくらいしか紹介していない。自分のなりすましを狙ったわけではなくて、奥さんが恥ずかしがるという理由なのだそうだ。それも人の自由だ。

 

僕: へぇ。

 

ヤマジロウ: しかし、自分が、何とかファンの中の人だと勘違いされたことがあって、正直なところ困っている。彼は浦安の政治的マターにも言及するので、ヒノデダッズムが勘違いされて何かに巻き込まれるのではないかと危惧している。この街の未来を考えているだけで、やれ「市議会議員に立候補したいのか?」とか、本意ではない邪推を受けたり、色々とマークされて大変だったりする。地域住民が自分が生活する街のことを考えて何が悪い? まあとにかく、ヒノデダッズムは不偏不党且つ公平中正をモットーにしている。

 

僕: ほんとだよね。

 

ヤマジロウ: 浦安には、急激な街の発展において生じた独特のアレがある。新町のロジックが通用しないゾーンがあるので気をつけたい。

 

僕: なんだよ、その曖昧な表現。

 

ヤマジロウ: それだけで伝わることだろう。まあ、自分の場合には、日の出地区が安全で過ごしやすい町であり続けることを願う。繰り返しになるが、強力な情報発信力を有する日の出地区を刺激しないことが賢明だな。

 

僕: 意味が分からないけど、日の出地区がすごいところだってことは分かった。でもさ、最初の話って、どうなったのさ?

 

ヤマジロウ: ミッドライフ・クライシスの話だな。真面目に話すか。

 

僕: だったら、酒、飲むなよ。

 

ヤマジロウ: 第二の思春期とも呼ばれる悩み多き時期だが、大切なことは慌てないことだと思う。

 

僕: 慌てないこと?

 

ヤマジロウ: 向かい風の中でロードバイクに乗っているような苦しさがあるが、そこで無理をするとさらに消耗して、ガクッと崩れたり、カタストロフィーに向かって突き進むリスクすら感じた。その対応は人それぞれだが、自分の場合にはロードバイクのライドと同じ感じで乗り越えようとしている。

 

僕: 細かすぎて伝わらない。

 

ヤマジロウ: ロードバイクに乗っていて、強烈な向かい風がやってきた時にどうするか? ゴールはまだまだ先だ。そんな時、クランクの回転数を一定に保って、決して無理をしない。

 

僕: うんうん。

 

ヤマジロウ: 上ハンドルを握って強引にペダルを踏み込んだら、足の筋肉がダメになる。ブラケットを握って、頻繁にシフトチェンジを行い、疲れないように走る。

 

僕: ああ、それは分かるね。

 

ヤマジロウ: そして、限界がやってきたら、それ以上は無理をせずに、路肩で休むことだ。風向きはいつか変わる。

 

僕: それも分かる。

 

ヤマジロウ: 中年になって、身体が変化しているだけの話だ。別に自分が怠けていたという話ではない。身体の変化が落ち着けば、新しい自分が始まるというくらいの気持ちで行こう。

 

僕: それとさ、向かい風の中では、仲間の存在も大切だよね。

 

ヤマジロウ: その通り。職場の仲間というよりも、仕事を離れた場所での繋がりは大きい。もちろん、家族の支えも大切だと思う。

 

僕: で、君はどうなったの?

 

ヤマジロウ: 完全には変化していないけれど、とりあえず山は越えたようだ。まあ、歳なので無理は禁物だということなのだろう。それと、なぜか以前よりも性格が丸くなった気がする。

 

僕: ああ、そういえば、何だか変わったよね。あまり怒らなくなったというか。

 

ヤマジロウ: それと、「6分の人付き合い」という意味が四十路になってやっと分かった気がする。

 

僕: 腹6分って話?

 

ヤマジロウ: 生きている上でのストレスの多くが人間関係だからな。相手に対して自分の全てを理解してもらい、自分が相手の全てを理解しようとすると疲れる。6分くらいでちょうどいいという話だな。

 

僕: まあ、「人生なんて、終わる頃には夢みたいなもんだ」って聞くわけだし、あまり考え込まない方がいいかもしれないね。

 

ヤマジロウ: 自分が父親として生きて行く中で、最も大切なこと。それは、子どもを育てることだ。

 

僕: 仕事だって、そのためなんだよね。

 

ヤマジロウ: そう。仕事も大切だが、それは人生の全てではなく、退職すれば終わる。仕事をリタイアした親の世代が、何か人生の目標を失って真っ白になっていると感じるのは自分だけだろうか。

 

僕: ほんとだね。大企業に勤めていても、自営業でも、リタイアしたら同じ感じなんだよね。背中が何か寂しい感じ。

 

ヤマジロウ: 仕事だけではないかもしれない。自分自身の人生の記憶だって、年老いれば忘れ、一睡の夢のように感じることだろう。しかし、子どもというのはリアルだ。立派に育って、次の世代に命のバトンを渡してもらえば、自分が生きたことの証にもなる。

 

僕: お孫さんが産まれた時の男性って、急に丸くなってジイジモードになるけれど、それが父親としての次のトランスフォームなのかな?

 

ヤマジロウ: あの変化は非常に分かりやすい。

 

僕: 最終的に、人生が夢のようだったと感じるって、どんな感じなんだろうね。

 

ヤマジロウ: 真面目に生きていれば、いつの日か体感することだろう。変化を楽しもうじゃないか。