夫婦の会話④: うちの嫁いわく、母親が働くことの意味は、お金だけじゃないそうだ。そりゃそうだ。

妻:じゃあ、出張、行ってくるわね♪

 

夫:はいはい。早朝の便ね。でも、仕事とはいえ、この時期の北海道に出張って、大丈夫なのか?

 

妻:防寒用品は揃えてあるよ。

 

夫:それにしては、荷物が少ないよね。ビジネスマンってすごいよ。モバイル片手にスーツ姿で飛び回るって。

 

妻:まぁ、必要なら現地調達♪


夫:日の出保育園のママさんで、日帰りの弾丸で北海道に行って帰ってくる人っているんだろうか?

 

妻:どうだろ? じゃあ、これ。あなたが必要としていた今日の子どもの世話のマニュアル♪

 

夫:うう、いつもすまないねぇ。。

 

妻:行ってきまーす!!

 

夫:はいはい。頑張ってね。

 

子:うーん。おはよう。。。あ! ママがいない!

 

夫:うん。今日はママがいないんだ。とりあえず、朝ごはんを食べたまえ。

 

子:えええ!? ママー!!

 

夫:だから、ママがいないからって、そういう、生死にかかわるような悲壮感を漂わせるのはやめなさい。

 

子:いやだー! ママー!! どこなの!? ママー!!

 

夫:余程、頼りにされていないことだけは分かった。たぶん、ママは今頃、飛行機に乗って空の上を飛んでいるはずだ。

 

子:ドキンちゃんを見てるかな?

 

夫:うーん。彼女のことだから居眠りをして、夢の中で見ているだろう。だ、か、ら、早く食べたまえ。

 

 

----- 夕方 -----

 

夫: えっと、日の出保育園に迎えに行く時のマニュアルは。。。いつもながら的確だ。これ、日の出保育園に貼っておいてほしいくらいだ。あれ、何か着信したぞ。

 

妻のメール:追加です。無理せずに子どもだけ連れてきてもらって構いません♪

 

夫:読まれたか。

 

子:お腹すいたー! ママがいないよー! 晩ご飯がないよー!

 

夫:いや、大丈夫だ。。ま、任せろ。。。僕の理論なら、多分、こうしてこうすれば。。。ほい、できたどー!

 

子:ご飯にシチューがのっかってるだけだよね? おかずは?

 

夫:一応、肉と野菜は入っている。うまいどー!

 

子:パクッ、、、ママー! ママー! 早く帰ってきてー!

 

夫:ったく。小料理屋のように1回で何品も作ってるから、こういうことになるんだ。さて、こんな時は、ママのマニュアルを見てだな。

 

妻のメール:もずくや豆腐などは冷蔵庫にあります。子どもたちが何か欲しいようだったら、あげて下さい。

 

夫:、、、さすがだ。君たち、とりあえず食べたまえ。これでも全力なんだ。

 

子:はぁ~い。

 

夫: そして、デザートにアイスを投入。ほら、パパだけの時はサービスで多めにしてやるわい。

 

子ども:わ~い。

 

夫:憐みの目で父親を見るのは止めてくれ。

 

 

----- 夜 -----

 

妻:ただいまー!

 

夫と子:おかえりー!

 

夫:北海道出張、どうだった?

 

妻:「寒い」

 

夫:シンプルだねぇ。

 

妻:はい。お土産。

 

夫:おおぉー! 君って、独身の頃から出張に行くと、たくさんお土産を買ってくるよね。重くないの?

 

妻:なんで? 飛行機とかバスが運ぶんだから。手に持っている時間なんて大したことないでしょ?

 

夫:ま、、それはそうなんだが。じゃあ、お疲れ様も兼ねて、二人で地ビールを飲もうか♪

 

妻:いいえ、あなたが全部飲んでいいわよ。ほら、色々種類があるでしょ?

 

代表:え?

 

妻:わたしは空港で飲んできたから♪

 

夫:えええ!? ビールをひっかけて空を飛んで来たのか?

 

妻: ほら、「据え膳食わぬは恥」って言うじゃない。目の前にビールを出されたら、ありがたく頂くわよー♪

 

夫:そりゃ、武士だ。まわるだろ? 一杯ひっかけて「ウィー、ただいまー♪」って、昭和の団塊かよ。

 

妻: サザエさんだと、ヒモがついた小箱をぶら下げていたわよね。

 

夫: ああ、寿司折ね。


妻:それにしても、あなた、わたしが仕事を続けることに寛大よね。

 

夫:ああ、僕が地方の田舎の出身だからさ。僕が子どもの頃は、どのママさんたちも仕事があって、働いていたし、それが普通だと思っていたんだよ。祖父母のサポートもあったし。

 

妻:専業主婦というのは、確かに、高度成長期の都市部の流れなのかもね。

 

夫:うん。あと、核家族化。お爺ちゃんお婆ちゃんがいたし。田舎だと、近くに幼稚園もなかったし、全て保育園。待機児童なんかもないし、保育園からそのまま小学校に進むわけ。それが普通だと思っていたから、都会に来てびっくりしたよ。保活ってなんなんだよと。

 

妻:でも、浦安はまだ恵まれている方よ。できれば、育休明けに合せて、保育施設をあらかじめ予約できれば助かるんだけどね。

 

夫:ブログに書いておくよ。市役所の人も見てるだろうし。っで、僕は結婚する前から、君に保護してもらったようなもんで、自分のことさえまともにできないわけだ。掃除くらいだろ。


妻:あはは、知ってる♪

 

夫:笑うな。そして、自慢じゃないが、「自分が父親になった時、妻に何をしてあげ られるか?」と悩んで、君が仕事を続けるための動線を考えたわけだ。可能な限り、君の職場に近くて、出張のアクセスが良くて、何より、君の実家が近い。そ うすると浦安だったんだよ。日の出からバス一本で羽田空港に行けるし。妊娠しても飛行機で飛び回っていてゾッとしたぞ。

 

妻:それ、100回くらい聞いた。

 

(つづく)

 

(つづき)

 

夫:死ぬまでに1000回は言うだろう。マスオさんに近い状況というのは、男にとってプレッシャーだ。僕の通勤時間は凄まじい。一生でどれくらいの時間、電車に乗っているのか考えると気が遠くなりそうだ。

 

妻:それ、都内だと普通だよ。

 

夫:田舎者の僕にとっては普通じゃない。ほら、「イクメン」という言葉が流行って、積極的な育児参加が推奨されているよね。

 

妻:あれ?まだ、イクメンを目指していたわけ?

 

夫:いや、最近、無理な気がしてきた。料理が出来ないイクメンって、聞いたことある?

 

妻:あはは。

 

夫:でもね、妻である君が仕事を続ける中で気づいたことがあるんだよ。


妻:あれ? それは初耳ね。

 

夫:共働きというのは、収入の面で助かるよね。もし、僕が死んじゃっても、何とかして子どもを養えるという安心感もあるし。

 

妻:あなた、その割に体を鍛えているわよね?

 

夫:うん。生命保険もタップリかけてある。何も心配ないぞ。生活のためというのもあるんだが、母親が働くことには、もっと大きな意味があると思うんだ。

 

妻:へぇ、深いわね。

 

夫:君の職場は、育児に関してすごく配慮してくれていると思う。でも、男女なんて関係ない職場なわけで、同僚たちも一流大学を出た人たちがワンサカいるよね。そういうところで妻であり、母親である君が、同僚と肩を並べて働いていることに、プロ意識を感じるわけだ。

 

妻:あはは、ありがとね。

 

夫:うん。それは素直に認める。君は立派だよ。夫である僕が、君の仕事に最大限の配慮をして、君の実家が近くて仕事を続けやすい浦安に引っ越して、たまに思い出したように大掃除をやるというメリットを抜きにしてもだ。

 

妻:そして、仕事や趣味に没頭して、育児も中途半端で、わたしが助けてあげなければ死んでいたかもしれないという旦那のデメリットを抜きにしてもだ♪

 

夫:君、酔っぱらうと容赦ないね。

 

妻:ふふふ。

 

夫:で、知りたいんだが、収入以外に、母親が働くことの意味っていうか、何かがあるのかい?

 

妻:そうねぇ。。。

 

夫:父親が育児参加する時、母親が働いていることが多いだろ? もちろん、色々な職種があるし、家庭によって事情が違うから、同じじゃないと思うんだ。でも、その部分を父親が理解する必要があるよね。君は何のために働いているんだい?

 

妻:「社会との繋がり」かなぁ。

 

夫:なるほど、社会との繋がりか。。。男と張り合いたいとか、そういうのじゃなくて? だって、大学までは男女で同じように学んできたでしょ?


妻:うん。専業主婦には専業主婦の社会の繋がりがあるんだけど、そういうのじゃなくて、今まで通り働きたい。そう、働くこと自体に意味があるのよ。お給料の高さとか、出世とかは、関係なくて。あまりにキツい仕事は無理だけどね。

 

夫:そうか。。。夫から見た仕事という存在と、ちょっち違うんだな。

 

妻:うん。男性と張り合いたいとか、男性に養ってほしくないとか、そういう女性もいるかもしれないけど、もっと自然なことなんだと思うよ。

 

夫:なるほどね。繋がりか。確かに田舎の母親たちは、職場が社会そのものだったからね。

 

妻:うん。

 

夫:そういえば、僕の上司たちは、育児に寛容な人が多くて、いわゆる「イクボス」なんだけれど、いつも、僕にアドバイスをくれるんだ。

 

妻:え? どんな?

 

夫:「自分が育児に積極的だと実感しても、それは違うよ。夫婦の人生がどこまで続いても、夫にはまだ甘えがあるんだ。でも、奥さんはギリギリのところで毎日を送っているんだよ。夫が仕事を続けられるのは奥さんのおかげだって感謝して、尊敬して、できるだけ頑張った方がいい。当たり前だと思っちゃいけない」って。

 

妻:へぇ、立派よね。

 

夫:まあ、シングルのパパはそんなこと言ってられないし、夫婦の形はその家庭で違うけど。「俺はイクメンだって調子に乗るなよ」ってことだろうね。

 

妻:夫にどれくらい育児や家事をやってほしいかは、奥さんによって違うと思うのよねぇ。旦那さんがちょっとだけ育児に参加しただけで満足する奥さんもいれば、出産と授乳以外は男女に違いはないっていう奥さんもいるだろうし。

 

夫:あと、もう一つ。「共働きでも家賃とかローンとか生活費は、全部、旦那の口座で支払いなよ。奥さんの口座のことは全て忘れるんだ。男が金を持つとロクな使い方をしないからな」

 

妻:ふふふ。それ、あなたのことでしょ?

 

夫:いや、お酒好きのイクボスの格言。

 

妻:ふふふ。

 

夫:でも、僕が君に仕事を続けてほしい理由というのは、そういうのじゃないわけだ。ほら、君のような人物は、社会に送り出さずに家庭に入れておくと、ロクなことがないと思ったんだ。フラストレーションがたまって爆発するんじゃないかってね。

 

妻:え、何、それ!? 失礼ねー! わたしだって専業主婦をちゃんとやれるわよ。

 

夫:いや、そうじゃなくて、完璧に主婦をこなそうとするんじゃないかって。。。

 

妻:そりゃそうよ。わたし、主婦業に向いていると思うわよー♪ 幼稚園のPTAだって、ママ友のランチ会だって頑張っちゃうから。お稽古ごととかも。

 

夫:いや、そういうのじゃなくて。

 

妻:料理だって、洗濯だって、掃除だって、今だって全部やれるでしょ。あとは、家計簿だってバリバリと細かくつけちゃうから、、、ハッ!

 

夫:そう、それ。僕が趣味で何を買ったか、明細を全部チェックされるだろ?

 

妻:もちろんよ。お給料は全てわたしが召し上げて、お小遣いも厳しく管理するわ。「はい、これ、今月分!」って。

 

夫:お願いします。お仕事、どうか、お続けになってくださいませ。お代官様、どうか、どうか、この通りでごぜぇます。

 

妻:あはは。酔ってきたわね。北海道、寒かったから、お風呂に入ってくる。

 

夫:ひらに~ひらに~。って、おい、返事は! ったく、子どもの寝かしつけでもしようかね。。。